政府は2028年度までにパートやアルバイトの人らへ雇用保険を拡大する方針です。
雇用保険の対象になれば失業時に保障が受けられたり、育児休業給付金や教育訓練などキャリア形成の面でも利点があります。
非正規の立場で働く人にも失業給付や育児休業給付を受け取れるようになるので、安心して出産や子育てができる環境になるでしょう。
しかし、企業側は人件費が増えることになるので、人員配置の見直しなどのコスト削減に迫られます。
詳しく解説していきます。
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パートやアルバイトの人らへ雇用保険が拡大する
政府は2024年度に始める少子化対策で雇用保険の対象者を広げると掲げました。
6月に政府が閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針」に開始時期とともに条件を決める見通しです。
現在、1週間の所定労働時間が20時間未満の短時間労働者は雇用保険の対象外で失業給付などを受けられません。
非正規雇用で十分なセーフティーネットがないことが少子化につながっているという意見があります。
こうした声に政府は対応します。
また高齢者や専業主婦だった人の就業も増えている実態もあります。
企業にとっては人件費の増加につながる
一方で、この制度改正には負の側面もあります。
保険拡大は企業にとって売り上げ・利益が変わらない中で人件費が増加することになります。
雇用保険は企業も負担しているからです。
場合によっては雇う人を減らし、業務の見直しなども必要になるでしょう。
人事管理システムの改修作業も生まれます。
適用開始が2028年度までと先であるのも企業側が十分に準備できるようにするためです。
国はまず雇用保険法を改正し、周知と準備の期間を設けたうえで施行します。
週の労働時間や年収要件、雇用期間などの細かい条件は、法改正を前に専門家らで構成する労働政策審議会でも議論されます。
制度の概要が固まるのは2024~2025年ごろになる見通しです。
そのため、企業は3年程度の猶予を持つことになります。
週の労働時間が20時間未満の人は沢山いる
雇用保険は現在、週の労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある人を対象にしています。
週の労働時間が20時間未満の人は2022年に約700万人います。
役員を除く全雇用者の13%と、2013年から3ポイント超上がりました。
週の労働時間15時間以上に対象を広げた場合、新たに約300万人が適用になります。
10時間以上の場合は約500万人となります。
中小企業の負担は大きい
現在の料率は企業側が賃金の0.95%、労働者側が0.6%です。
従業員数が少ない企業は週の労働時間20時間未満の人が占める割合が高い傾向で、中小企業の負担は大きくなります。
偏りは会社の大きさだけでなく、産業にもあります。
卸売りや小売り、宿泊や飲食、医療・福祉とサービス関連が多くを占めています。
保険料の負担を敬遠して労働時間を削減すれば、雇用される人は逆に家計が苦しくなるでしょう。
政府は雇用保険の拡大のほかにも少子化対策を打ち出すとしています。
企業が負担を嫌い、働く人が損をしない制度設計が求められます。