出生率上昇に必要不可欠とされる男性の育児休業取得ですが、問題が明確になってきました。
厚生労働省の調査で8割の職場で代替要員の補充ができず、取得促進の足枷になっていることが明らかになりました。
恒常的な長時間残業も心理的な障害で、育休期間の短い人が多いです。
夫婦の「共働き・共育て」を無理なく実現できる社会には企業側の働き方改革の深掘りが欠かせません。
詳しく解説していきます。
男性の育休取得率が5%⇒17%に上昇
男性の育休取得は少しずつ増えています。
厚労省が2023年7月末に公表した雇用均等基本調査では、5年前は5%ほどだった取得率が2022年度に17.13%となりました。
ただ政府が掲げる「30年に85%」とする目標には遠く、休み方にも問題があります。
育休取得率を上げるには代替する要員の確保が重要
課題の一つが育休を取る社員を代替する要員の確保です。
厚労省の調査によると、育休取得者がいた場合の対応について「代替要員を補充せず、同じ部門の他の社員で対応した」との回答が、2021年度の数字で79.9%に達しました。
2019年度の52.3%を大きく上回っており、男性育休の増加に伴って上昇しています。
日本商工会議所などが中小企業を対象に実施した別の調査でも、男性育休の課題として「代替要員が社内にいない」との回答が半数を超えました。
企業規模が小さくなるほど取得率が低くなる
取得率は企業規模が小さいと低くなり、職種別でも差があります。
2022年度調査の産業別では就業者数の多い「卸売・小売」が8.4%と最も低いです。
多くの企業で代替要員の確保が進まず、同僚にしわ寄せがいっています。
このままでは子供がいない人に不満が生じかねません。
長時間労働や休日・深夜の仕事に対応できる人ほど昇進や賃金増を得やすい風土にも変えていく必要があります。
男性は育休の取得期間が短い
厚労省の育休の統計は1日休んだだけでも「育休をとった人」として取得率にカウントされます。
経団連の調査では、育休取得が進む大企業でも男女の取得日数に差が大きいことが明らかになっています。
加盟企業を対象にした2023年6月公表の調査では男性の育休取得率は47.5%に達しましたが、取得期間は平均43.7日で、367.1日の女性を大きく下回っています。
短期間の育休では企業の代替要員確保が進まず、その後の男性の育児参加もおろそかになる恐れもあります。
労働時間が長いほど長期の育休が取れなくなる
長時間労働の是正が育休期間の長期化につながる可能性があります。
長期の育休が取れない根底にあるのが、長時間労働の常態化です。
週の労働時間が49時間以上の男性は2021年時点で日本は21.7%でした。
フランスの11.7%、ドイツの8.3%より高いです。
日本より少子化が深刻な韓国は22.7%でした。
総務省の労働力調査によると2022年平均で月241時間以上働いた男性の雇用者(役員を除く)は183万人いました。
月80時間以上残業した計算です。
育休を取らない理由は「職場に迷惑をかけたくない」
男性に1カ月以上の育休を取らない理由を聞いた内閣府の2021年の調査では「職場に迷惑をかけたくない」が42.3%で最も多かったです。
「職場が男性の育休取得を認めない雰囲気」という回答も33.8%ありました。