
「親なき後、うちの子は本当に大丈夫なのだろうか?」
障がいのある子どもを持つ親にとって、避けて通れないこの不安。社会制度に頼るだけでは不十分な現実を前に、どう備え、どう行動すべきかを真正面から問いかけるのが本書『改訂新版 障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本』です。

著者・鹿内幸四朗氏の体験に基づいた提案は、決して机上の理論ではなく、家族を守るためのリアルで実践的な知恵。
監修の司法書士・杉谷範子氏の法的視点も加わり、「想い」と「制度」をつなぐ、心強いガイドブックとなっています。
これから子どもの将来を真剣に考えたい親、支援職、そして法制度に携わる人々にとっても、本書は“読むべき一冊”です。
今、この瞬間からできる備えが、未来の安心をつくります。

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書籍『改訂新版 障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本』の書評

将来、自分たちがいなくなった後に、障がいのある子どもがどのように生活していくのか。この不安は多くの親に共通するものです。本書は、その"親なき後"に備えた実践的な手段を解説する書籍として、多くの家庭や専門家から支持されています。
以下の5つの視点から、その魅力と価値を解説します。
- 著者:鹿内幸四朗のプロフィール
- 監修:杉谷範子のプロフィール
- 本書の要約
- 本書の目的
- 人気の理由と魅力
それぞれ詳しく見ていきましょう。
著者:鹿内幸四朗のプロフィール
鹿内幸四朗(しかない こうしろう)氏は、一般社団法人日本相続知財センターの専務理事として全国の相続支援活動を行う専門家であり、「相続知財鑑定士」として知られています。彼の活動の核にあるのは、「親なき後も障がいのある子どもが安心して暮らせる社会を作りたい」という強い信念です。この志の背景には、彼自身がダウン症の娘を持つ父親であるという当事者としての視点があります。
これまでに全国3万人以上の親たちに向けて「相続・親なき後セミナー」を開催し、具体的な対策の立て方や法的手続きの流れを伝えてきました。講演では、難しい専門用語を使わず、親の目線に立って分かりやすく話すスタイルが高く評価されています。加えて、障がい児支援団体などに自費で『親心の記録』を配布するなど、社会貢献活動にも尽力しています。
また、法制度の限界を踏まえたうえで、独自に考案した「親心後見」という仕組みは、従来の成年後見制度ではカバーできなかった領域に一石を投じる発想であり、実際の法運用現場でも注目を集めています。

監修:杉谷範子のプロフィール
監修を務めた杉谷範子氏は、司法書士法人ソレイユの代表であり、長年にわたり後見制度、財産管理、相続関連の業務に携わってきた法律のプロフェッショナルです。彼女は数多くの高齢者や障がい者家庭と関わり、実務の現場で起きているリアルな課題を見てきました。
多くの制度が「理想」として描かれる一方で、実際には利用のハードルが高かったり、制度を使いこなせる人が限られていたりする中、杉谷氏は常に「使える制度」にするための実践支援を行ってきました。その視点は、抽象的な理論ではなく、「この制度は現場でどう役立つか」「家族にとって負担にならないか」といった実用性を重視したアプローチに表れています。
彼女は本書の中で、親心後見の法的な妥当性や、親が担える範囲、必要な書類の整備の仕方までをわかりやすく監修しています。これにより、本書は制度の机上の空論にとどまらず、実際に活用可能な実務書としての価値を確立しています。

本書の要約
『改訂新版 障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本』は、障がいのある子どもを持つ親が抱える最大の不安、「自分が死んだ後、子はどう生きていけるのか?」という切実な問いに対して、具体的で実践可能な解決策を提示する一冊です。
中心に据えられているのは「親心後見(おやごころこうけん)」という独自の仕組みです。これは、親が子どもとの間で任意後見契約を結び、将来的に親自身が子の後見人になることで、子どもの生活と財産を守る体制を構築するというもの。従来の成年後見制度が抱える、「親が後見人になれない」「報酬コストが高い」「子どもの意思が反映されにくい」といった課題に対する新しい提案でもあります。
加えて、2022年4月に施行された「18歳成人制度」により、親権が18歳で終了することのリスクも明確に解説されています。特に、18歳までに準備しておくべき対策として、マイナンバーカードの取得や通帳の名義管理、公正証書の作成など、手順レベルまで丁寧に記述されています。
本書は制度の説明にとどまらず、著者自身が行った実践内容(たすき掛け任意後見、公証人とのやりとり、遺言の工夫、尊厳死宣言など)を公開することで、「机上の理論」ではなく「等身大の行動モデル」として提示されている点が大きな特徴です。

本書の目的
この本の目的は明確で、「障がいのある子どもの将来に備えて、親ができる備えを具体的に行動へとつなげること」です。多くの親が不安に感じながらも、何をすべきか分からずにいる現実に対し、本書はその不安を“理解”と“行動”へと導く地図の役割を果たします。
ポイントは、“感情”と“制度”を同時に扱っているところにあります。例えば、「財産を残した方がよいのか」「遺言で何を記せばよいのか」といったテーマに対して、制度の正確な知識を与えるだけでなく、「親の気持ちとして、どう考えるべきか」という倫理的・心理的な側面にも言及します。
また、法制度は時に冷たいルールとして受け止められがちですが、本書では、制度を使って“親の思い”をきちんと形にできる方法が、専門家の助言を交えて紹介されています。だからこそ、読者は“制度を味方にする感覚”を得ることができるのです。
さらに、「18歳までに対策を」と時間軸を意識させる構成は、読者の危機感を適切に喚起しながらも、「今からでも間に合う」「一歩ずつで大丈夫」とやさしく背中を押してくれます。

人気の理由と魅力
本書が多くの読者に支持されている最大の理由は、「知識」「実例」「親心」が三位一体となって構成されている点にあります。
まず、「知識」。成年後見制度、任意後見契約、公正証書遺言、尊厳死宣言、死後事務委任契約、遺言寄付など、多くの人が名前すら聞いたことのない法的手続きを、やさしい言葉で丁寧に解説しています。しかも、制度が「どんな意図で作られたか」「実際にどう機能しているか」まで踏み込んでいるため、単なる用語集では終わりません。
次に、「実例」。著者である鹿内氏自身が、娘のために実際に行った手続きや失敗談、家族との話し合いの様子が具体的に語られます。このリアルな語りがあることで、「これは制度の話ではなく、“わが家の話”かもしれない」と読者自身の問題として引き寄せられるのです。
そして最後に、「親心」。本書全体を貫くのは、「障がいがあっても、わが子には幸せに生きてほしい」という揺るぎない親の願いです。その願いを“制度で支える”という発想が、本書の最大の魅力であり、他の法律書や福祉書にはない人間味を与えています。
読み終わった読者の多くが「今すぐ動こう」「できることから始めよう」と思えるのは、この“親心”のメッセージが本の中心にあるからこそです。難しい制度を学んだという満足感以上に、親としての行動を促す温かい後押しがあるからこそ、読者の評価が高いのです。

本の内容(目次)

本書は、障がいのある子どもを育てる親が、自分たちの死後に起こりうる現実と、それにどう備えるべきかを段階的に理解できるよう、5つの章で構成されています。
以下のテーマごとに、制度の仕組みや手続きの流れだけでなく、心の準備や実際の取り組み方も深掘りされています。
- 第1章 30年後、私たちが死んだらうちの子はどうなる?
- 第2章 成人前にやっておきたい夫婦で子の未来を作る「新しい財産管理のしくみ」
- 第3章 民法改正直前に起きたことから改めて考える障がいのある子を本当に幸せにする制度
- 第4章 夫なきあと妻と子の生活を守る「遺言の作り方」
- 第5章 妻が元気なうちに準備したい家族への最後の贈りもの
それぞれの章では、読者が何を「知るべきか」だけでなく、「どう行動すべきか」が明確になるように構成されています。
第1章 30年後、私たちが死んだらうちの子はどうなる?
この章では、著者・鹿内幸四朗氏の個人的な経験からスタートします。ダウン症のある娘の将来に対し、「自分たち親がいなくなったあと、この子はどうなるのか?」という切実な問いを原点に、現実の問題として浮かび上がるのが「親なき後問題」です。
特に、成人を迎えた障がい者の子どもは、親の親権がなくなることで、法的・制度的な支援を自力で受けることが難しくなります。本人の判断能力が不十分な場合、成年後見制度を利用する必要が出てきますが、制度の柔軟性が乏しく、家族が後見人になれる割合はわずか2割以下というのが現実です。
さらに本章では、「350問題(親の死後、障がいのある子どもが生涯に必要とされる生活資金約3,500万円)」にも触れ、経済的備えの必要性を強調しています。「通帳」「マイナンバーカード」「印鑑登録証明書」という“3種の神器”を、未成年のうちに親の権限で整備しておくことの重要性が説かれています。

第2章 成人前にやっておきたい夫婦で子の未来を作る「新しい財産管理のしくみ」
18歳成人制度が施行されたことで、障がいのある子どもが成人に達すると、法的には“自己決定”を求められることになります。しかし、実際には判断能力が伴わないケースも多く、結果として第三者の成年後見人に財産や契約の管理を委ねざるを得なくなる可能性があります。
そこで本章で紹介されるのが、親が主体となって構築できる「親心後見」という新たな制度です。夫婦でたすき掛けに任意後見契約を締結し、親自身が子どもの将来の支援者として法的に指定されることで、行政ではなく家族の意思で将来設計が可能になります。
また、法的トラブルを避けるために公正証書を活用し、家庭の方針や希望を明文化する手順も紹介されています。専門家の関与によって制度の不備や曖昧な部分もカバーされ、家族が中心になって子の将来をデザインする実例が語られています。

第3章 民法改正直前に起きたことから改めて考える障がいのある子を本当に幸せにする制度
この章では、2022年の民法改正と18歳成人施行がもたらした影響を、実際の事例を交えて掘り下げています。登記が成立していた契約が「無効」と判断される危険性や、障がいのある本人の“意思確認”の壁、制度の不備を補うための「追認作業」の苦労など、法と現場のギャップが赤裸々に描かれています。
とくに印象的なのは、親たちが立ち上がり、記者会見や嘆願書の提出などを通じて、制度変更に対する声を上げていく様子。国に任せきりにせず、自分たちで制度を活用し、時には制度そのものを改善に導こうとする当事者意識が光ります。

第4章 夫なきあと妻と子の生活を守る「遺言の作り方」
家族の構成が変わると、財産の残し方や守り方も変える必要があります。この章では「夫が先に亡くなった場合、残された妻と障がいのある子の生活をどう守るか」を中心に、公正証書遺言の活用方法が紹介されます。
遺言というと「死後の財産配分」だけを考える人が多いですが、本章では「今、安心して老後を生きるための設計書」として遺言を位置づけています。たとえば、妻に生活費を残しながらも、障がいのある子の支援を確実に継続するように設計された「親心遺言」は、愛情と法務の融合といえます。
また、法的な盲点となる「遺留分(法律で保障される最低限の相続割合)」についても触れ、それが逆に家族の幸せを妨げる場合の対策、さらには将来的な認知症リスクに備える文書の整備についても解説されています。

第5章 妻が元気なうちに準備したい家族への最後の贈りもの
最終章では、親なき後、さらに妻なき後まで見据えた終末期の対策に焦点があてられます。具体的には、「財産管理等委任契約」や「任意後見契約」、「尊厳死宣言」、「死後事務委任契約」などの文書作成を通じて、人生の最終段階における選択を明確にする方法が紹介されます。
たとえば、尊厳死宣言では、延命治療を受けるかどうかを事前に文書化することで、子どもが判断を迫られるストレスから解放されます。また、死後の葬儀や納骨、永代供養に関する意向を「死後事務委任契約」で残すことにより、残された家族に無用な混乱を与えずに済みます。
さらに、子どもなきあとも「遺言寄付」を通じて財産を社会に役立てるという選択肢も紹介され、人生の終わりを社会とつながる「ギフト」として再定義しています。

対象読者

本書は、ただの制度解説書ではありません。現実的な悩みや不安に対し、「今できることは何か?」という視点から具体策を提案してくれる一冊です。
次のような立場の方々に、特に強くおすすめできます。
- 障がいのある子どもを育てる親
- 成年後見制度に不安や疑問を感じている方
- 特別支援教育に関わる先生・支援員
- 福祉・法律の専門家(司法書士・行政書士など)
- 相続・遺言・財産管理について具体的に知りたい人
以下で、それぞれの読者像ごとにどのような価値を見出せるかを詳しく解説します。
障がいのある子どもを育てる親
本書の中心的な読者層は、まさに障がいのある子どもを育てている親です。親自身が元気なうちは問題なく日常を支えることができますが、「もし自分がいなくなったら」という将来への不安は常につきまといます。そのような不安に対し、本書は「親なき後」に向けた準備の方法を段階的に提示してくれます。
特に、未成年のうちにできる対策や、任意後見契約、遺言作成、公正証書の利用など、親自身の経験と制度的根拠に基づいた実践的なアドバイスは説得力があります。また、家族構成や経済状況に応じた柔軟な対策が紹介されており、読者それぞれの家庭に即した判断が可能です。

成年後見制度に不安や疑問を感じている方
成年後見制度という言葉は知っていても、その実態を正確に理解している人は意外と少ないのが現状です。「後見人が必要って聞いたけど、誰がなるの?」「家族が後見人になれないって本当?」「報酬ってどのくらい?」——こうした不安や疑問に対して、本書は実務と法的視点の両面から丁寧に答えてくれます。
とくに、障がいのある子が18歳を迎えたときに直面する課題は深刻です。親は法的に親権を失い、わが子の財産や契約行為に関われなくなる可能性があります。その場合、家庭裁判所が選任した後見人が、子の人生を法的に管理することになり、親としての思いや方針が反映されない事態も珍しくありません。
このような制度の“盲点”を回避するために提案されているのが、「親心後見」という柔軟な新制度です。成年後見制度の法的な枠組みに、親としての責任感と倫理観を組み込むことで、制度に振り回されるのではなく、自ら設計していくという考え方です。制度を“知る”だけでは不十分。“活かす”知識と行動が求められます。

特別支援教育に関わる先生・支援員
障がいのある子どもと接する先生や支援員にとっても、本書の内容は非常に意義深いものです。学校現場では学習支援に力を入れる一方で、その子どもが社会に出たあとの生活や法的課題については情報が乏しいことがあります。本書を通して「親なき後」の課題や対策を理解することは、家庭との連携をより強固にし、信頼関係を築くうえでも有益です。
さらに、保護者からの相談を受ける機会がある先生方にとっては、制度や仕組みの基礎的知識を持っておくことで、適切なアドバイスができるようになります。支援教育の現場での専門性が、より高められることでしょう。

福祉・法律の専門家(司法書士・行政書士など)
実務の現場で後見制度や信託、遺言に関わっている法律・福祉の専門家にとっても、この書籍は大いに参考になります。2022年の法改正により、成年年齢が18歳に引き下げられたことを受けて、親の対策タイミングが前倒しになったという現実に直面している今、最新の制度情報に基づいた支援が求められています。
また、著者が提案する「親心後見」という新たな視点は、実務家がクライアントに提供できるアドバイスの質を格段に引き上げます。家庭の感情や実情に寄り添う実務ができるかどうかは、専門家としての価値に直結します。

相続・遺言・財産管理について具体的に知りたい人
相続や遺言と聞くと、「うちは財産が少ないから関係ない」と感じる人も多いかもしれません。しかし本書は、財産の多寡に関係なく、すべての家庭にとって“遺すこと”と“託すこと”の重要性を教えてくれます。特に、障がいのある子どもを持つ家庭では、「どのようにお金を残すか」だけでなく、「誰がどう使うのか」「どう管理するか」といった視点が不可欠です。
そのための手段として、公正証書遺言、任意後見契約、財産管理等委任契約、死後事務委任契約といった複数の制度が紹介され、それぞれの役割と違い、使い方のタイミングがわかりやすく解説されています。どの制度を、どの時期に、どのような目的で活用するべきかが明確になる構成は、他の法律書ではなかなか得られない“実務的価値”があります。
「家族に迷惑をかけたくない」「自分の意思を形にして残したい」——そうした思いを現実に変えるための手段を、具体的に学べる一冊です。

本の感想・レビュー

親自身の体験に基づいた実用書
子どもが生まれてすぐ、重度の障がいがあることが分かりました。それ以来、毎日が戦いで、今に必死で、先のことなんて考える余裕は正直なかった。でも、自分も妻も年齢を重ね、ある時ふと「このままではまずい」と思い始めました。そんなとき、この本をすすめられて読みました。
制度の話が出てくると構えてしまう自分がいたのですが、この本は違いました。なぜなら、制度の説明以上に、“親としての実体験”がたくさん語られているからです。娘さんのこと、学校での出来事、手続きの際に感じた戸惑いや壁——どれも生々しくて、だからこそ説得力がありました。
机上の知識ではなく、「やってみた人」の言葉は、読む側に勇気を与えてくれます。自分の家庭のことを想像しながら読めたことが、私にとって大きな意味がありました。実用書としてとても有益で、何より“現実感”がある。信頼できる本です。
不安を行動に変える力がある
私は今、中学生になる知的障がいのある息子を育てています。彼のことを考えると、「私たちがいなくなったらどうなるんだろう」という不安が、いつも心のどこかにありました。でも、誰に相談していいのかも分からない。制度は複雑そうだし、勉強する時間も取れない。そんな自分をどこか責めていたところがありました。
そんな時に出会ったのがこの本です。タイトルを見た瞬間、まるで自分に向けて書かれた本だと思いました。読んでいくうちに、漠然としていた不安が言葉になり、具体的な対策として整理されていく感覚がありました。著者自身が親として、実際に体験してきたことだからこそ、伝わってくる力がまるで違うんです。
何から始めればいいか分からなかった私が、この本を読み終えたあと、まず夫と将来のことを話し合いました。「動かなきゃ」と思えたのは、本書が“不安”を“行動”へと変える力を持っているからだと思います。
専門家も学べる新しい知見
私は普段、福祉サービス事業所で支援計画の作成やご家族の相談支援を行っています。利用者の多くは知的障がいのある成人の方々で、日々「親なき後」の課題に直面しています。専門職として支援をしている立場ではありますが、この本を読んで、自分の知識や視点の限界を痛感しました。
「親心後見」という考え方や、親が親権を持っている間にできる対策など、実務的に有効なアイデアがいくつも紹介されていて、非常に学びが深かったです。また、法改正や最新の運用状況も踏まえて記載されているため、現場での支援にもそのまま活用できます。
制度や手続きを“使える形”で理解したいという専門職の方にも、ぜひ読んでほしい内容です。実際、研修資料にこの本の内容を一部引用させていただいたこともあるほど、実務に直結する知見が詰まっています。
「親心後見」という言葉に救われた
この本に出てくる「親心後見」という言葉を読んだとき、胸が熱くなりました。私も長年、知的障がいのある娘と向き合ってきました。年齢的にも、自分が先にいなくなる未来が現実のものとして見え始めてきたところで、どうしても心の奥に“申し訳なさ”が残っていたのです。
でも、「親心後見」という言葉は、ただの法的な用語ではなく、親の思いそのものなんだと気づかされました。自分が生きている間にできることをやっておけば、たとえ制度の限界があっても、“思い”はつなげることができる。それがどれほどの安心感をもたらすか——それを教えてくれたのが、この本です。
長年、制度に翻弄されてきた一人の母親として、ようやく「言葉にしてもらえた」という気がしました。
文章が平易で読みやすい
将来、特別支援学校の教員を目指して勉強している大学生です。障がいのある子どもたちの支援について学ぶ中で、「親なき後」についてもきちんと理解したいと思い、この本を手に取りました。
専門書のように難しいのではと不安でしたが、実際に読み始めると、とても分かりやすい言葉で書かれていて驚きました。制度や法律用語には、初学者にとってハードルの高いものも多いですが、この本ではそれらが丁寧に解説されていて、法律に詳しくない私でもスムーズに理解できました。
また、実際の家庭で起きた出来事や親の気持ちが随所に描かれており、教科書では学べない“人の営み”に触れることができました。支援をする側としての視点だけでなく、家族の立場に立って考える視野を広げてくれた貴重な一冊です。
法改正後の最新情報が反映
私は普段、会社で契約書を扱う業務に就いており、ある程度、法律には慣れています。それでも「成年後見制度」や「任意後見契約」については、正直言って分かりづらい印象を持っていました。特に近年の法改正——成人年齢の引き下げ(2022年施行)については、我が子の進路と絡めてどう対応していいか分からず、不安を感じていました。
この本が素晴らしいのは、まさにその「2022年の法改正」を含む最新の実務的な課題をしっかり押さえていることです。成年年齢が18歳になったことで、何がどう変わるのか、従来の制度ではどこに不都合があるのか、その背景と影響を丁寧に説明してくれていて、安心して読み進めることができました。
表面的な制度紹介ではなく、現実に起こりうる事例や行政の見解、必要な手続きなどを踏まえて整理されているので、「今この瞬間、我が家に必要な知識」がしっかり得られました。法改正という動く前提に対し、親がどう行動すればいいのか明確に示してくれるこの本は、他にない存在だと感じます。
お金だけでなく「思い」も残す
この本を読みながら、何度も目頭が熱くなりました。財産管理や制度設計といった“堅い”テーマが中心でありながら、そこに込められた親の思いや願いが、どのページからも伝わってくるんです。単に「お金をどう残すか」という話ではなく、「どう生きてほしいか」を含めて子どもにバトンを渡すことの大切さを教えてくれる一冊でした。
とくに、公正証書や遺言書に“気持ち”を込めるという発想にはハッとさせられました。これまで私は、遺言や契約といったものを“法的なツール”としてしか見ていなかった。でも、著者の言う「親の声を文書に残すこと」は、子どもにとって最良の遺産になるかもしれない——そう思えたんです。
現実に起きている問題を冷静に見つめながらも、根底には「親の願いを制度に乗せる」という愛情が通っている。それが、この本を“ただの制度本”に終わらせない、深い感動を生んでいると思います。
親同士の共有読書におすすめ
私は現在、支援学校のPTAで役員をしています。保護者同士の情報共有や勉強会を企画する立場にあり、常に「みんなで学べる教材」を探しています。そんなとき、先生からこの本を紹介され、読み始めたのがきっかけでした。
内容がとにかく親目線で書かれているので、難しい言葉や制度がスッと入ってくるし、「うちも同じだ!」と共感する場面が本当に多いです。そして、何よりありがたいのは、この本が“読むこと”で終わらないように設計されていること。
私たちのPTAでも、この本をテキストにして小さな勉強会を開きました。皆が口を揃えて言ったのは、「誰かと一緒に読むと、さらに気づきが深まる」ということ。家族で読むのも良いし、親同士で感想を語り合うのも有意義だと思います。“個人で抱える不安”が、“共有できる知識”へと変わっていく——この本には、そんな力があります。
まとめ

本書『改訂新版 障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本』は、障がいのある子どもを持つ家族にとっての不安に真っ向から応える内容となっています。人生100年時代と言われる今、「親なき後」を見据えた備えは誰にとっても重要なテーマですが、特に判断能力の不安がある子を持つ親にとっては、切実かつ喫緊の課題です。
以下のようなポイントを通じて、本書の総括と活用の意義をまとめます。
- この本を読んで得られるメリット
- 読後の次のステップ
- 総括
上記の観点から、本書がどのような価値を持ち、読者の人生や家族の未来設計にどのように貢献できるかを見ていきましょう。
この本を読んで得られるメリット
ここでは、本書を読むことで得られる主要なメリットを4つの観点から解説します。
制度の全体像がわかる
成年後見制度、任意後見契約、遺言、公正証書、尊厳死宣言、死後事務委任契約など、多くの親が漠然と名前だけを知っている制度について、背景や意図、実際の活用法を含めてわかりやすく解説されています。特に「親心後見」という著者独自の視点による新しい提案は、これまでの制度解説書にはなかった具体性と温かみを持っています。法制度が「冷たい仕組み」ではなく、親の思いを叶えるツールになり得るという気づきが得られます。
将来の備えに必要な“今すぐできること”が見えてくる
抽象的な不安を、「具体的に何をすればいいか」という行動レベルに落とし込める点が、本書の大きな魅力です。印鑑登録やマイナンバーカードの管理、任意後見契約の締結、遺言書作成の流れなど、手順が明確に書かれており、今日から始められる実践的な内容が満載です。「気になっていたけど、よくわからなくて何もしていなかった」という方が、一歩を踏み出すための背中を押してくれます。
家族の対話が深まり、将来の共通認識が生まれる
本書を読むことで、夫婦や家族間で「将来、何をどうするか」という話し合いが自然と生まれます。財産管理や後見人の選定、介護や葬儀の希望までを事前に共有できることは、トラブルの回避に直結するだけでなく、家族の信頼関係を深める大きなチャンスにもなります。「親だけで抱え込まず、周囲と分かち合うこと」の重要性が、読者自身の気づきを誘発してくれるでしょう。
障がいのある子どもの未来に対する希望と覚悟を持てる
子どもが将来ひとりになったときに、本当に幸せに暮らしていけるのか。その不安に対して、本書は“できることがある”という希望を提示しながらも、制度上の壁や限界にも目を背けずに向き合います。このバランスの取れたリアリズムが、読む者にとって「親として逃げずに向き合う覚悟」を引き出してくれます。感情に寄り添いながら、論理的にも構成された内容だからこそ、読み終えた後に心が落ち着くという読者も多く見られます。

読後の次のステップ
本書を読み終えた時、多くの読者が抱くのは「なるほど、わかった」という安心感とともに、「じゃあ、私は何から始めれば良いのか?」という次なる疑問です。この本は、知識を与えるだけでなく、実際の行動へと読者を導いてくれる構成になっています。
以下では、読後に取り組むべきステップを順に紹介していきます。
step
1家族と将来について話し合う
最初のステップは、パートナーや家族と「うちの子の将来」について対話を始めることです。本書を読むことで得た知識や気づきを共有することで、家族内での危機意識や価値観のずれが浮き彫りになり、意思統一に向けた第一歩となります。とくに、親が元気なうちに意見をすり合わせておくことは、のちの混乱を防ぐ重要な要素となります。
step
2専門家への相談予約を取る
次に必要なのが、司法書士や行政書士、弁護士などの専門家に相談の予約を入れることです。本書は制度の概要をわかりやすく解説していますが、具体的な契約書の作成や公正証書の手続きは専門知識が必要です。相談する際には、書籍の該当ページに付箋を貼っておき、疑問点や確認したいことをまとめておくと、効率よくアドバイスを受けることができます。
step
3今すぐできる書類や証明の準備に取りかかる
専門家への相談と並行して、すぐに着手できる準備もたくさんあります。たとえば、印鑑登録証明書やマイナンバーカード、通帳など、名義や所在があいまいになりがちなものは今すぐ整理しておくべきです。本書では「三種の神器」として紹介されているように、これらの基本的な書類の整備が後々のトラブル回避に直結します。
step
4地域資源や支援団体の情報を集めておく
最後に、親なき後の生活を地域で支える支援体制の確認も重要です。自治体の障害福祉課や特別支援学校、親の会などから情報を集め、いざというときに頼れる存在を把握しておきましょう。本書を読んだことで生まれた意識を、継続的な情報収集へとつなげていくことが、安心につながる大きな力となります。

この本を読むことは「準備の終わり」ではなく「始まり」です。
知ることで終わらず、行動に移すことで初めて、子どもの未来を守る準備がスタートします。
読後のステップは、親としての覚悟を形にする実践の道しるべです。
総括
『改訂新版 障害のある子が「親なき後」も幸せに暮らせる本』は、親としての不安に真正面から向き合い、現実的な備えと制度活用の道筋を示す、極めて実用的かつ希望に満ちた一冊です。本書が扱うテーマは非常に切実でありながら、これまで十分に語られてこなかった「親なき後」の課題に対して、明確なアクションを提案している点が大きな特徴です。
読者にとって印象的なのは、単なる制度解説にとどまらず、親としての想いに寄り添う形で構成されているということです。障がいのある子どもを持つ家庭が抱える、「自分たちがいなくなった後、子どもはどうなるのか」という核心的な問いに対し、著者は当事者としての視点を通じて、深い共感と現実的な知恵を提供しています。
また、成年後見制度や遺言制度といった法制度に加え、親権を活かした「親心後見」などの革新的な提案も盛り込まれており、知識の枠を超えて読者の行動を促す構成になっています。とりわけ「18歳成人」の法改正を背景に、今この瞬間にこそ行動すべき理由が丁寧に説明されているため、読み終えた後には自然と「何かをしよう」という気持ちが芽生えることでしょう。

本書は、障がいのある子どもを持つすべての家庭にとって、未来の不安を減らし、今できることに光を当てる大切な指針です。
「何をすればよいかわからない」から「これなら始められる」へと、読者の心を確実に導いてくれる内容となっています。
読了後には、知識と覚悟、そして希望の3つを同時に手にしている自分に気づくはずです。

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