この記事では、日本の「障害者福祉」制度について解説していきます。
障害者福祉の基本的な情報を網羅していますので、コレだけ読めば自身や家族の保障状況を理解できます。
障害者福祉とは、社会福祉の1つです。
社会福祉には下記の4つがあります。
- 児童福祉
- 母子及び父子並びに寡婦福祉
- 高齢者福祉
- 障害者福祉
社会福祉は日本の社会保障制度の一部です。
基本的人権(特に生存権)の保障の観点から生活困窮者の生活保障や心身に障害等があり支援や介助を必要とする人への援助を行う公的サービスです。
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障害者福祉とは
障害者福祉とは、身体、知的発達、精神に障害を持つ人々に対して、自立を支援する社会的サービスのことです。
福祉とは
福祉とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味します。すべての国民が最低限の幸福を得られるように、社会的援助を提供するという理念を持ちます。
以前は、障害の種類ごとに身体障害者福祉法・知的障害者福祉法・精神保健福祉法などによって個別に規定されていました。
しかし、少子高齢化社会に向け、従来の通院医療費公費負担制度・支援費制度に代わり、受益者負担の原則を導入し、障害者にサービス費用の原則1割負担を求め、障害者の福祉サービスが一元化されました。
障害者福祉のサービスは、「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」の3つに区分されます。
「介護給付」は、住宅介護や生活介護などで、介護の支援を受けるものです。
「訓練等給付」は、自立訓練や就労移行支援などで、訓練等の支援を受けるものです。
「地域生活支援事業」は、移動支援など利用者の状況に応じて実施するものです。
身体障害とは
身体障害者福祉法の対象となる身体障害は、下記の5種類に大別されます。
- 視覚障害
- 聴覚障害
- 音声・言語障害(咀嚼障害を含む)
- 肢体不自由
- 心臓・腎臓・呼吸器・膀胱・大腸・小腸・免疫等の内部障害
知的障害とは
知的障害とは、下記の3点で定義されます。
- 知的機能に制約があること
- 適応行動に制約を伴う状態であること
- 発達期に生じる障害であること
精神障害とは
精神障害とは、精神や行動における特定の症状を呈することによって、機能的な障害を伴っている状態のことです。
障害福祉で受けられるサービス
障害者福祉のサービスは、現金による給付ではなく、サービスそのものが提供される「現物給付」が原則です。
訪 問 系 |
介 護 給 付 |
居宅介護 | 自宅で、入浴、排せつ、食事の介護等をする |
重度訪問介護 | 重度の肢体不自由者で常に介護を必要とする人に、自宅で、入浴、排せつ、食事の介護、外出時における移動支援等を総合的にする | ||
同行援護 | 視覚障害により、移動に著しい困難を有する人が外出する時、必要な支援、外出支援をする | ||
行動援護 | 自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援、外出支援をする | ||
重度障害者等包括支援 | 介護の必要性がとても高い人に、居宅介護等複数のサービスを包括的にする | ||
日 中 活 動 系 |
短期入所(ショートステイ) | 自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、夜間も含め施設で、入浴、排せつ、食事の介護等をする | |
療養介護 | 医療と常時介護を必要とする人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護及び日常生活の世話をする | ||
生活介護 | 常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動又は生産活動の機会を提供する | ||
施設入所支援 | 施設に入所する人に、夜間や休日、入浴、排せつ、食事の介護などをする | ||
住 居 支 援 系 |
訓 練 等 給 付 |
自立生活援助 | 一人ぐらいに必要な理解力・生活力などを補うため、定期的な居宅訪問や随時の対応により日常生活における課題を把握し、必要な支援をする |
共同生活援助(グループホーム) | 夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談、入浴、排せつ、食事の介護、日用生活上の援助をする | ||
訓 練 系 ・ 就 労 系 |
自立訓練(機能訓練) | 自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、身体機能の維持、向上のために必要な訓練をする | |
自立訓練(生活訓練) | 自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、生活能力の維持、向上のために必要な訓練をする | ||
就労移行支援 | 一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練をする | ||
就労継続支援A型(雇用型) | 一般企業等での就労が困難な人に、雇用して就労の機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練をする | ||
就労継続支援B型(非雇用型) | 一般企業等での就労が困難な人に、就労する機会を提供するとともに、能力などの向上のために必要な訓練をする | ||
就労定着支援 | 一般就労に移行した人に、就労に伴う生活面の課題に対応する支援をする | ||
地 域 生 活 支 援 |
移動支援 | 円滑に外出できるよう、移動を支援する | |
地域活動支援センター | 創作活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流等を行う施設 | ||
福祉ホーム | 住居を必要としている人に、低額な料金で、居室等を提供するとともに、日常生活に必要な支援をする |
福祉サービスの利用手続き
福祉サービスは「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」の3つに区分されています。
窓口で必要なサービスを伝えましょう。
介護給付の場合
ここでは、「介護給付」の場合の流れを解説していきますが、基本的な流れは「訓練等給付」「地域生活支援事業」も同じです。
step
1相談・申し込み(市町村)
step
2一次判定
step
3二次判定
step
4勘案事項調査
step
5利用意向の聴取・等利用計画案の提出
step
6支給決定
福祉サービスの利用者負担
福祉サービスの利用者負担は、「障害者」と「障害児」によって異なります。
障害者の範囲
「障害者」とは、身体障害者福祉法第4条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第5条に規定する精神障害者(知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち18歳以上である者。
障害児の範囲
「障害児」とは、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児及び精神障害者のうち18歳未満である者。
障害者の負担の上限額
月ごとの利用者負担には上限額があります。
所得に応じて次の4区分の負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(■1) | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円(■2)未満) ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(■3) |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
(■1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
(■2)収入が概ね600万円以下の世帯が対象になります。
(■3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。
所得を判断する世帯の範囲
所得を判断する世帯は下記のとおりです。
種別 | 世帯の範囲 |
18歳以上の障害者 (施設に入所する18、19歳を除く) |
障害のある方とその配偶者 |
障害児 (施設に入所する18,19歳を含む) |
保護者の属する住民基本台帳での世帯 |
療養介護を利用する場合、医療費と食費の減免
療養介護を利用する方は、従前の福祉部分自己負担相当額と医療費、食事療養費を合算して、上限額を設定します。
【20歳以上の入所者の場合】
低所得の方は、少なくとも25,000円が手元に残るように、利用者負担額が減免されます。
たとえば、療養介護利用者(平均事業費:福祉22.9万円、医療41.4万円)、障害基礎年金1級受給者(年金月額81,529円)の場合
その他の生活費(28,000円)は、障害基礎年金1級受給者、60歳~64歳の方、65歳以上で療養介護が該当します。
上記以外の場合は、25,000円になります。
世帯での合算額が基準額を上回る場合は、高額障害福祉サービス等給付費が支給される
障害者の場合は、障害者と配偶者の世帯で、障害福祉サービスの負担額(介護保険も併せて利用している場合は、介護保険の負担額も含む。)の合算額が基準額を超える場合は、高額障害福祉サービス等給付費が支給されます。
障害児が障害者総合支援法に基づくサービス、児童福祉法に基づく障害児通所支援、障害児入所支援のうちいずれか2以上のサービスを利用している場合は、利用者負担額の合算が、それぞれのいずれか高い額を超えた部分について、高額障害福祉サービス費等が支給されます。
※世帯に障害児が複数いる場合でも、合算した負担額が一人分の負担額と同様になるように軽減します。
食費等実費負担についての減免措置
【20歳以上の入所者の場合】
入所施設の食費・光熱水費の実費負担については、53,500円を限度として施設ごとに額が設定されることになりますが、低所得者に対する給付については、費用の基準額を53,500円として設定し、食費・光熱水費の実費負担をしても、少なくとも手元に25,000円が残るように補足給付が行われます。
なお、就労等により得た収入については、24,000円までは収入として認定しません。また、24,000円を超える額については、超える額の30%は収入として認定しません。
たとえば、入所施設利用者(障害基礎年金1級受給者(年金月額81,925円)の場合)
28,000は、障害基礎年金1級の者はその他生活費(25,000円)に3,000円加算して計算
7,629円は、(81,925円-66,667円)×50%
【通所施設の場合】
通所施設では、低所得、一般1(グループホーム利用者(所得割16万円未満)を含む。)の場合、食材料費のみの負担となるため、実際にかかる額のおおよそ3分の1の負担となります(月22日利用の場合、約5,100円程度)。
なお、食材料費は、施設ごとに額が設定されます。
グループホームの利用者に家賃助成
グループホーム(重度障害者等包括支援の一環として提供される場合を含む。)の利用者(生活保護又は低所得の世帯)が負担する家賃を対象として、利用者1人当たり月額1万円を上限に補足給付が行われます。
生活保護への移行防止策
こうした負担軽減策を講じても、自己負担や食費等実費を負担することにより、生活保護の対象となる場合には、生活保護の対象とならない額まで自己負担の負担上限月額や食費等実費負担額を引き下げます。
障害児の負担の上限額
児童福祉法に基づく障害児を対象とするサービスは、契約方式を採用しています。
障害児の保護者は、障害児通所支援の場合は市町村に、障害児入所支援の場合は都道府県に支給申請を行い、支給決定を受けた後、利用する施設と契約を結びます。
なお、18歳以上の障害児施設入所者又は放課後等デイサービスの利用者については障害者総合支援法に基づくサービスが提供されますが、引き続き、入所支援又は放課後等デイサービスを受けなければその福祉を損なうおそれがあると認めるときは、満20歳に達するまで利用することができます。
月ごとの利用者負担には上限額があります。
所得に応じて次の4区分の負担上限月額が設定され、ひと月に利用したサービス量にかかわらず、それ以上の負担は生じません。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 | |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 | |
一般1 | 市町村民税課税世帯 (所得割28万円(注)未満) |
通所施設、ホームヘルプ利用の場合 | 4,600円 |
入所施設利用の場合 | 9,300円 | ||
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
所得を判断する世帯の範囲
所得を判断する世帯は下記のとおりです。
種別 | 世帯の範囲 |
18歳以上の障害者 (施設に入所する18、19歳を除く) |
障害のある方とその配偶者 |
障害児 (施設に入所する18,19歳を含む) |
保護者の属する住民基本台帳での世帯 |
医療型入所施設や療養介護を利用する場合、医療費と食費の減免
医療型施設に入所する方や療養介護を利用する方は、従前の福祉部分自己負担相当額と医療費、食事療養費を合算して、上限額を設定します。
【20歳未満の入所者の場合】
地域で子供を養育する世帯と同程度の負担となるよう、負担限度額を設定し、限度額を上回る額について減免を行います。
たとえば、医療型障害児入所施設利用者(平均事業費:福祉22.9万円、医療41.4万円)、一般1の場合
(■1) 低所得世帯、一般1は5万円、一般2は7.9万円。
その他生活費、18歳以上は25,000円、18歳未満は34,000円。
福祉部分の自己負担相当額、計算上は、事業費の1割とし、15,000円を超える場合は15,000円として計算します。
福祉型入所施設を利用する場合、食費の減免
20歳未満の入所者の場合、地域で子供を養育する費用(低所得世帯、一般1は5万円、一般2は7.9万円)と同様の負担となるように補足給付が行われます。
たとえば、福祉型障害児施設利用者(平均事業費:18.6万円)、一般1の場合。
(■1)低所得世帯、一般1は5万円 一般2は7.9万円
その他生活費は、18歳以上は25,000円、18歳未満は34,000円
福祉部分自己負担相当額、計算上は、事業費の1割とし、15,000円を超える場合は15,000円として計算します。
通所施設を利用する場合、食費の減免
障害児の通所施設については、低所得世帯と一般1は食費の負担が軽減されます。具体的には下記のとおりです。
所得階層 | 食費 |
低所得 | 2,860円 |
一般1 | 5,060円 |
一般2 | 11,660円※軽減なし |
※月に22日の利用を想定。実際の食材費は施設によって異なります。
まとめ
障害者福祉のサービスは、現金による給付ではなく、サービスそのものが提供される「現物給付」が原則です。
障害者福祉のサービスには「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」の3つがあります。
障害の度合いに合った適切な支援を受けられるので、必要な方は相談・申請をしましょう。
「寄付白書2017」によると、2016年の日本の個人寄付総額は7,756億円と、アメリカの約40分の1程度です。
他の先進国に比べ日本の寄付が少ないといわれていますが、日本の手厚い社会保障の財源は税金です。
「自分たちが納めている税金は社会的弱者の支えになっている」そんな実感をもっと持っていいのかな…と思います。