待機児童問題の解消のために保育所の開設ラッシュが起こりましたが、少子化によって保育所の供給過多時代がやってきます。
保育所運営会社の倒産や質の低下(虐待など)の対策に厚生労働省が議論を始めました。
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2025年以降、保育所が余る
出典:日本経済新聞社
待機児童問題を受けて保育所の開設が相次ぎましたが、過剰時代が待ち構えています。
厚生労働省は2021年5月26日、2025年に保育所の利用児童がピークに達するとの初の試算を公表しました。
想定以上に早い少子化で、地方だけでなく都市部でも定員割れが予想されます。
経営が悪化する事業者が増えることも予想され、同省は既存施設の利活用策の検討を始めました。
予想外の女性就業率&少子化の速度
厚労省は26日に検討会初会合を開き、女性就業率の上昇を上回る速度で少子化が進むため、利用児童数は25年の約300万人をピークに緩やかに減少に転じると明らかにしました。
「待機児童数は着実に減少」と説明し、「保育の提供のあり方を検討することが必要」と議論を求めました。
保育所新設が追いつかないペースで希望者が増加
利用児童数は20年時点で約270万人おり、15年から30万人以上増えました。
保育所新設が追いつかないペースで希望者が増えた背景には、25~44歳の女性の就業率の上昇があります。
15年の71.6%から20年には77.4%と5.8ポイント上昇し、数年のうちに8割を超える見込みです。
保育所は5年で3割増加
1~2歳児の保育所利用率は20年に50.4%と5割を超えました。
施設数は20年に3万7652施設と15年から3割増えたが、希望しても入れない待機児童は20年に1万2439人います。
都市部を中心に待機児童解消はなお課題です。
しかし、足元で少子化は急加速しています。
新型コロナによって少子化が加速
人口動態統計によると、新型コロナウイルス禍で結婚、妊娠を控える動きが広がり、20年度の出生数は前年度比4.7%減りました。
20年の自治体への妊娠届も前年比4.8%減でした。
21年の出生数は、現行の統計をさかのぼれる1899年以降で初めて80万人を割る可能性が高いです。
これは国立社会保障・人口問題研究所の推計よりおよそ10年早いペースです。
もともと人口減少が進む地方では、すでに利用者減による運営難に直面する保育所が出ています。
余った保育所をどうするかが課題
保育所が過剰となった地域では、既存施設をどう整理・縮小し、機能を転換していくかが課題です。
同省は保育所を地域の子育て支援に活用することなどを検討します。
6月に議論の方向性を整理し、年末までに結論をまとめる予定です。
必要に応じ、保育所の目的や設置基準などを定めた児童福祉法の改正も視野に入れます。
保育所の供給過多に対応できずに倒産
待機児童問題が重要な政策課題に浮上し、国や自治体は新規開設を後押ししました。
しかし、事業を急拡大した民間事業者の経営環境が悪化する可能性があります。
実際に運営難で倒産する事例も出てきています。
帝国データバンクによると、20年度までの5年間で28の保育事業者が倒産しました。
21年度もすでに1事業者が倒産しています。
不足すれば批判、余れば倒産。バランスが難しい
都市部も無関係ではありません。
東京23区内の自治体の担当者は「コロナ禍の影響もあるが、0歳児枠や4~5歳児枠に空きが出ている。待機児童はまだ残るが、一部地域の1歳児の問題になりつつある」と警鐘を鳴らします。
保育所をどんどん増やす局面ではないが、不足すれば批判を受けかねない。整備計画が難しい問題です。
児童減少を見越して閉園する会社も
保育所運営大手のJPホールディングスは20年度末に東京都内の保育所4施設を閉園しました。
2021年5月に示した24年3月期までの新中期経営計画では、児童減少を見越して学習支援などを拡大する方針を示しています。
質を落とさずに、需要と供給を整える必要が
保育所数の拡大に伴って暴力的なしつけ指導や不慣れな保育士による虐待ともとれる保育の相談が相次いでいるといいます。
保育所が過剰となる未来を見据え、質を備えた施設の維持へと政策の転換も検討すべきかもしれません。
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