厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会は2022年12月19日、雇用保険料率の引き上げを了承しました。
2023年4月から0.2%上げ、労使が負担する保険料率は賃金の1.35%から1.55%に上がります。
新型コロナウイルス禍の雇用下支え策は長期化し、財源の枯渇を招いています。
短期集中で対策を講じた欧米各国と異なり、出口を示せないまま支出が膨らみ続けています。
詳しく解説していきます。
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雇用保険料、2023年4月から0.2%上げ
労働者の料率は0.5%から0.6%に、事業主は0.85%から0.95%に、それぞれ0.1%ずつ上がります。
コロナ禍の雇用下支え策で莫大な資金を要したことが引き上げ理由です。
雇用保険制度は保険料を事業主と労働者が負担する「失業等給付」と「育児休業給付」、事業主のみが負担する「雇用保険二事業」(二事業)の大きく3つの区分があります。
改定は失業等給付向けの保険料のみで、育休給付と雇用保険二事業は据え置きです。
支給決定額が6兆2000億円を超えている
従業員の休業時などに支給する雇用調整助成金はコロナ禍で支給要件を大幅に緩和し、2022年12月9日までの支給決定額が6兆2000億円を超えました。
雇用調整助成金を担う雇用保険二事業の積み立てがなくなり、本来は別会計の失業等給付の積立金から借り入れる異例の対応を取りました。
もともと失業等給付の積立金は潤沢で、保険料率を法定の原則より下げていました。
今回の引き上げで0.8%になれば法定の料率に戻ることになります。
雇用保険二事業の料率は0.35%が既に法定水準のため据え置きになります。
雇用調整助成金は特例継続を繰り返している
財政逼迫の危険性はコロナ禍早期から指摘されていました。
政府も経済財政運営と改革の基本方針に雇用調整助成金を「段階的に縮減」すると明記してきました。
ただ、新たな感染の波などを理由に特例継続を繰り返しています。
政府はようやく来年1月での雇調金特例の原則終了を決めたものの、雇用保険二事業の積み立てだけでなく、失業等給付の積立金もコロナ禍前から3兆円以上減りました。
まとめ
厚生労働省の労働政策審議会の部会は、雇用保険料率の引き上げを了承しました。
2023年4月から0.2%上げ、労使が負担する保険料率は賃金の1.35%から1.55%に上がります。
労働者の料率は0.5%から0.6%に、事業主は0.85%から0.95%に、それぞれ0.1%ずつ上がります。
コロナ禍の雇用下支え策で莫大な資金を要したことが引き上げ理由です。
蓄えが底をついたままでは次の危機時に雇用保険がセーフティーネットとして機能しない恐れがあります。