厚生労働省は2024年2月から介護職員1人あたり月6千円の賃上げを実施する方針を固めました。
介護を担うことができる看護補助者も対象に補助金が支給されます。
来春以降は介護サービスの公定価格である介護報酬のプラス改定をして対応する考えです。
賃金の低さから介護人材の流出が続いており、処遇改善を急ぐ必要があります。
詳しく解説していきます。
2024年2月から介護職員の賃上げ 月額6000円の増加
11月2日に閣議決定した政府の総合経済対策に介護職の賃上げを盛り込んでおり、関連経費を2023年度補正予算に計上します。
補助金の支給は、介護の各事業所が都道府県を通じて賃上げ計画を提出することで受けられます。
実績報告が求められ、要件を満たさない場合は返還する必要があります。
賃上げは2024年2月から当面は補助金で対応し、来春以降は介護報酬の改定で実施する方針です。
報酬の引き上げ率は年末にかけての予算編成過程で決まります。
金額としては月6千円の賃上げ維持もしくは拡大を目指しており、政府・与党内で調整が進んでいます。
厚労省によると、2022年の介護職員の平均月収は29.3万円で、全産業平均と比べて7万円ほど低いです。
処遇改善が進んだ結果、10年前より縮みましたが、依然として賃金差は大きいです。
2021年には月9000円を引き上げた
政府は2021年度に賃上げを実施した際は、介護職員の給与を月額3%程度、金額にして月9000円を引き上げるため2022年2月から同年9月まで補助金の支給で対応しました。
並行して介護報酬の改定によって引き上げ額に相当する新たな加算制度を創設し、2022年10月以降も賃上げ効果が続くようにしました。
今回の賃上げでも同様の仕組みを取り入れるかは現時点で明らかになっていません。
一方で、厚労省や介護関連団体は賃上げや物価高に対応するため、介護報酬を全体でプラスに改定することで収益の改善につなげたい考えです。
2023年の全産業平均の賃上げ率は3.58% 介護職は1.42%
2023年度の賃上げを巡っては、春闘の全産業平均の賃上げ率は3.58%でした。
しかし、全国老人福祉施設協議会などの調査では介護職の平均は1.42%にとどまり、開きがあります。
介護人材政策研究会は物価や賃金の上昇幅、事業所の経営状況をふまえ、特別養護老人ホームの場合は少なくとも4%のプラス改定が必要だとの試算を示しています。
介護報酬は3年に1度改定しており、前回2021年度の改定の際は全体で0.7%上げました。
財務省は今回の改定で報酬全体の引き上げには慎重な立場
財務省は今回の改定で報酬全体の引き上げには慎重な立場です。
介護費用は高齢化で膨らんでおり、公費と保険料による給付費は2023年度に13.5兆円と2000年度の4倍に達する見通しです。
団塊の世代が全員85歳を過ぎる「2035年問題」を見すえ、必要なサービスは提供しつつも報酬の適正化を進めるべきだとしています。
介護人材の流出は深刻
介護人材の流出は深刻で、厚労省の調査で2022年は初めて介護分野の就労者が純減に転じました。
全国老人福祉施設協議会などによると、10年以上の経験があるベテランの介護人材の離職率が50%近くに上っているといい、人材確保が喫緊の課題となっています。
まとめ
厚生労働省は2024年2月から介護職員1人あたり月6千円の賃上げを実施する方針を固めました。
介護を担うことができる看護補助者も対象に補助金が支給されます。
補助金の支給は、介護の各事業所が都道府県を通じて賃上げ計画を提出することで受けられます。
実績報告が求められ、要件を満たさない場合は返還する必要があります。
2023年度の賃上げを巡っては、春闘の全産業平均の賃上げ率は3.58%でした。
しかし、全国老人福祉施設協議会などの調査では介護職の平均は1.42%にとどまり、開きがあります。
介護人材の流出は深刻で、厚労省の調査で2022年は初めて介護分野の就労者が純減に転じました。