厚生労働省の社会保障審議会の年金部会は12月26日、会社員らが加入する厚生年金保険料の上限の引き上げについて議論を始めました。
現在は月収65万円以上は保険料が一定で、全体の1割弱の高所得者は月収に占める保険料の比率が低くなっています。
この負担の不均等を是正するのが狙いです。
保険料上限の引き上げにより、保険料収入が増加して年金積立金の運用益が増すなど厚生年金財政の改善につながる可能性もあります。
詳しく解説していきます。
厚生年金、月収65万円以上の保険料引き上げ
保険料は労使折半で、会社員らは保険料の負担増の代わりに将来の年金額が増えますが、企業は負担だけ増えることになります。
標準報酬月額は厚生年金の保険料や給付の算出の基礎となります。
現行制度では月収を32段階に区切り保険料が決められています。
通常、4~6月の3カ月間平均で標準報酬月額を算出し、9月から1年間の保険料が決まります。
現行制度では月収65万円以上の32段階が天井
現行制度では月収を32段階に区切り保険料が決められています。
通常、4~6月の3カ月間平均で標準報酬月額を算出し、9月から1年間の保険料が決まります。
現在の月収65万円以上の32段階が天井で、高所得者の保険料の上限は65万円に18.3%の保険料率をかけた11万8950円(労使合計)です。
これ以上収入が多くても毎月の給与から天引きされる保険料は変わりません。
上限引き上げで厚生年金被保険者の6.3%が影響を受ける
厚労省は上限を引き上げた場合、厚生年金被保険者の6.3%にあたる264万人程度が影響を受ける可能性があると見込まれています。
厚生年金より等級が細かい健康保険で上限以上の収入がある人は被保険者の1%ほどで両者には隔たりがあります。
日本年金機構によると、標準報酬月額「65万円以上」の等級で40年間保険料を納めると、「62万円」の等級で納める場合と比べて年間8万円ほど受給額が増えます。
上限の引き上げで企業の賃上げ努力に水を差す
26日の審議会では経済界から「企業の賃上げ努力に水を差すものだ」と上限引き上げをけん制する声があがりました。
厚労省は上限到達者のうち4割が賞与0円だったとの調査結果も示しました。
賞与を月収につけかえて賞与からの保険料負担を免れている例があるとみられ、「健保と同じ水準で(月額の)上限を引き上げるべきだ」との意見も出ました。
上限引き上げは、短時間労働者への適用拡大などと合わせて2025年改正へ向けて議論を進めています。