【書評】相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全【要約・目次・感想】

【書評】相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全【要約・目次・感想】

5人に1人が認知症になる時代、親のお金は「あるかどうか」よりも「動かせるかどうか」で、家族の安心が大きく変わります。

もし認知症と判断されたら、銀行口座が凍結されてしまうかもしれない。

そんな場面が現実になったとき、親が長年かけて貯めた資産が、必要な医療費や介護費にすら使えない――その“詰み”を避けるために、今のうちに知っておきたいことがあります。

ガイドさん
ガイドさん

相続・遺言・保険・介護・葬儀。老いた親のお金事情は、気になることだらけなのに、いざ話そうとすると「縁起でもない」「まだ早い」と先延ばしになりがちです。

けれど、これらの対策は親がしっかりしているうちにしかできません。

つまり、備えの本番は“困ってから”ではなく、“困らないうち”に始まっています。


『相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全』は、金融機関や保険のプロ、法律の専門家、医療介護の実践家が、家族の生活を止めないための「お金の流動性」を軸に解説する指南書です。

そっと親の隣りに置いておくだけで、切り出しにくい話題の入口になり、相続問題の解決への糸口が見えてきます。

読者さん
読者さん



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書籍『相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全』の書評

書籍『相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全』の書評

高齢の親のお金まわりは、「まだ元気だから大丈夫」と思っているうちに、ある日いきなり“手が出せない状態”になりがちです。本書は、その落とし穴を“現場の視点”でほどきながら、家族が動ける形に整えてくれる一冊です。

この書評では、以下の4つの観点から本書の価値や本質を解説していきます。

  • 著者:福村雄一のプロフィール
  • 本書の要約
  • 本書の目的
  • 人気の理由と魅力


この順で追うと、序盤の金融機関のエピソード(「困った」ではなく「困っている」)が、相続・医療・介護・制度の話へ自然に接続し、「じゃあ、うちは何から?」が見えてきます。


著者:福村雄一のプロフィール

福村雄一さんは、相続・遺言・財産管理といった「人生の後半に必ず直面する手続き」を中心領域にする司法書士です。司法書士というと、不動産の名義変更や会社設立の登記を行う“書類の専門家”という印象を持たれがちですが、福村さんの活動の軸はそこから一歩踏み込み、認知症や病気、介護といった出来事によって生活が揺らいだときに「お金と意思決定が止まらないように整える」実務へと広がっています。

特徴的なのは、法律の話を法律の中だけで完結させず、医療・介護の現場で起こる課題と接続して語るスタイルです。たとえば、本人の判断能力が低下していく過程では、銀行や役所などの手続きの場面で困りごとが表面化しやすくなります。しかし、その困りごとの本質は「この人が今どんな暮らしの困難を抱えているのか」「どんな支援が必要なのか」という生活課題であることが多い。福村さんは、こうした生活課題に対して、成年後見・任意後見・家族信託・死後事務委任といった制度を“単体の知識”として説明するのではなく、本人と家族の状況に合わせて「どう組み合わせれば、本人の希望と家族の負担の両方を守れるか」という設計図の発想で提示するタイプの専門家です。

また、終活の世界では「身寄り」や「頼れる家族がいない」ことが大きなリスクになります。福村さんは、いわゆる“おひとりさま”の課題にも強い関心を示しており、家族がいることを前提にしない支援の組み立てを語れる点も、読者にとって実用性が高いところです。終活の問題は、家族関係が良好で連携できるケースだけでなく、疎遠、複雑な家族構成、単身など、むしろ難しい状況でこそ表面化します。そのときに必要なのは「気持ちを整える言葉」だけではなく、「手続きが止まらない仕組み」と「意思が置き去りにならないルール」です。福村さんのプロフィールを押さえる意味は、まさに本書がその両方を扱う姿勢で書かれている、という信頼の根拠になります。

ガイドさん
ガイドさん
司法書士は“書類を作る人”ではなく、“生活が詰まないように権限と意思決定の導線を整える人”だと理解すると、本書の読みどころが一気にクリアになります。



本書の要約

『相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全』は、相続対策のハウツー本でも、老後資金の計算書でもありません。本書が一貫して扱っているテーマは、「お金があるのに使えない状態」をどう防ぐか、という一点に集約されます。認知症と判断された途端に銀行口座からお金が引き出せなくなる可能性がある、という問題提起から始まり、そこから派生する医療、介護、葬儀、不動産、保険、遺言といった論点を、章ごとに丁寧にひもといていきます。

特徴的なのは、抽象的な制度説明ではなく、実際に起こりうる場面を想定して話が進む点です。たとえば、金融機関の窓口で認知症を疑われた場合に何が起こるのか、突然救急搬送されたときに家族はどんな判断を迫られるのか、退院後の居場所が決まっていなければどんな問題が生じるのか、といった具体的なシーンが随所に盛り込まれています。これにより、読者は「いつかの話」ではなく「自分の家庭でも起こり得る話」として理解しやすくなっています。

また、本書では相続を「亡くなった後の問題」として切り離して考えません。むしろ、判断力が低下し始めた時点から、亡くなった後までを一続きの流れとして捉え、その中でお金がどう動き、どこで止まりやすいのかを示しています。そのため、終活という言葉にありがちな「縁起でもない準備」という印象よりも、「生活を続けるための現実的な備え」という感覚で読み進めることができます。

ガイドさん
ガイドさん
資産の問題は金額ではなく、必要なときに生活費へ変換できるかどうかが最大のポイントです。



本書の目的

本書の目的は、終活を「心の準備」だけで終わらせず、実際の生活で起こる詰まりを減らすことにあります。親の資産が“あるかないか”よりも、“動くか動かないか”で、介護・医療・住まいの選択肢は大きく変わります。だからこそ、本書は認知症と口座凍結の不安を入口にして、早めに手を打つべき理由を読者の腹に落とし、具体的に何を整えるべきかを道筋として示します。

ここでの「早め」は、焦らせるための言葉ではありません。本人の意思が確認できるうちに、家族が納得できる形で、支援者も巻き込みながら、手続きの権限を整えるための現実的な条件を指しています。判断能力が低下してからでは、任意後見や信託など“本人が自分で決める系の仕組み”は組み立てにくくなります。病気や事故で突然意思確認ができなくなることもあります。つまり、時間が味方をしてくれるのは元気なうちだけで、そのタイミングを逃すと選択肢が減る。これが本書が繰り返し伝えたい核心です。

また、本書が面白いのは、終活を「死後の準備」よりも「今後の暮らしの安定」に寄せている点です。プロローグの金融機関の現場の話が象徴的で、本人の混乱や家族の疲弊は、道徳の問題ではなく支援設計の問題として扱われます。誰かを責める方向に読者を導くのではなく、困りごとの背景にある生活課題を見つけ、地域包括支援センターや専門職につなぐ視点を持てるようにする。これにより、子世代は「親が頑固で話が進まない」という行き詰まりから抜け出しやすくなり、親世代は「迷惑をかけたくない」という不安を“準備”に変えやすくなります。

さらに、相続・遺言・保険・介護・葬儀といった分野は、本来それぞれ別の専門領域です。分野ごとにバラバラに学ぶと、知識は増えても判断は難しくなります。本書の目的は、そこを“お金の流れ”という共通軸で束ね、読者が体系的に理解できる状態をつくることにもあります。いわば、点在する知識を線にして、家族の行動計画に落とし込むための本です。

ガイドさん
ガイドさん
終活の本質は「書類を作ること」ではなく「意思決定が止まらないように、権限と情報の導線を整えること」です。



人気の理由と魅力

本書が支持されやすい理由のひとつは、読者が最初につまずく“現場のシーン”から始まっている点です。終活の話題は、切り出すこと自体が難しい。そこで、金融機関の窓口という身近な舞台から「困った人」ではなく「困っている人」という見方を提示し、親の変化を責めずに捉える視点を読者に渡します。この時点で、単なるハウツー本ではなく、家族の会話を成立させるための“空気の作り方”まで含めて設計されていることが分かります。

次に、分野横断の構成が魅力です。終活の悩みは、単発で起こるのではなく連鎖します。認知機能の低下が財産管理の問題を生み、医療や介護の選択が住まいの選択につながり、費用の支払いと契約の権限が絡み、最後に相続や葬儀・不動産の問題へ移っていく。本書はこの連鎖を、章立て自体で表現しています。読者は章を追うだけで「何が先に起きやすいのか」「どこで詰まりやすいのか」を時間軸で理解でき、知識が断片になりにくい。

そして、専門性の出し方が“押し付け”になっていない点も強みです。成年後見、任意後見、家族信託、ACP、DNAR、相続の揉めポイント、保険の見直しなど、用語は専門的ですが、テーマが常に生活の具体場面にひも付いているため、初心者でも「これはうちの話だ」と置き換えやすい。専門家が書く本にありがちな“制度の説明で終わる”構成ではなく、「だから、家族はどう動けばいいのか」に着地しやすいのが実務書としての価値です。

もうひとつの魅力は、読者の心理的な抵抗を織り込んでいることです。遺言を縁起が悪いと感じる人、親の前で介護や死後の話をしたくない人、兄弟姉妹と温度差がある人。こうした“感情の壁”がある前提で、会話の入口を複数用意しているのが本書の実用性につながります。お墓や葬儀の話題のように比較的切り出しやすいところから入ってもよいし、金融機関での困りごとをきっかけに生活課題として相談につなげてもよい。どこから入っても、最終的に「お金の流動性を保つ」という背骨に戻ってこれるのが、この本の設計のうまさです。

最後に、巻末付録のQ&A的な“回収力”も見逃せません。知識を読んで理解したつもりでも、手続きは細部で止まりやすいものです。そこで、素朴な疑問を拾うパートがあると、読者は「まずはここまでやればいい」を掴みやすくなります。結果として、読み終えた直後に行動へ移りやすい。この“行動につながる読後感”が、終活本としての人気を支えているといえます。

ガイドさん
ガイドさん

終活本の価値は「知識が増えること」より「家族の最初の一歩が出ること」にあります。

本書はその一歩が出やすいように、心理と実務の両面から導線を作っています。




本の内容(目次)

本の内容(目次)

本書の中核は、人生の後半で起こりやすい出来事を「点」ではなく「流れ」として捉え直す点にあります。認知症の兆しから医療・介護の選択、老後資金の管理、葬儀や不動産、遺言、保険、そして80歳以降の生き方までを一冊の中で連結させ、家族が迷いやすい局面ごとに考える順序を示しています。

全体像を把握するために、章の並びを確認しておきましょう。

  • 第1章 認知症になったらあなたの資産は凍ってしまうかもしれない
  • 第2章 病院は最期まで面倒を見てくれない
  • 第3章 80歳以降にかかるお金、ほんとはいくら?
  • 第4章 葬儀とお墓と不動産は金融MAPの一丁目
  • 第5章 おカネを生かす遺言書
  • 第6章 必須!保険の見直し
  • 第7章 80歳からお金に困らずどのように生きていくか


以下では、それぞれの章がどんな役割を持ち、どのような気づきを与えてくれるのかを、初心者にも分かるように順番に解説していきます。

各章を個別に読むのではなく、前後のつながりを意識すると、本書の意図がよりはっきり見えてきます。


第1章 認知症になったらあなたの資産は凍ってしまうかもしれない

この章では、「認知症=介護の問題」ではなく、「認知症=お金が動かなくなる問題」であるという現実が、具体的な場面を通して説明されています。銀行の窓口で認知症を疑われた場合、本人名義の口座であっても、引き出しや解約といった重要な取引が止まる可能性があることが示されます。これは法律で一律に凍結されるという話ではなく、金融機関が本人の意思確認を慎重に行うために起こる、実務上の問題です。

さらに、ATM操作ができなくなった場合や、金銭管理がうまくいかず周囲を困らせてしまう状況についても触れられます。ここで重要なのは、「判断能力」という考え方です。判断能力とは、行為の意味や結果を理解し、自分で決められる力のことで、この力が低下すると、法律上も一人で契約や財産管理を行うことが難しくなります。

その対策として、成年後見制度、任意後見、家族信託といった仕組みが紹介されますが、いずれも共通しているのは「誰が、いつ、どの範囲までお金を管理できるのかを決めておく」という点です。本人の意思を反映できるのは、元気なうちであることが強調され、認知症当事者の財産と意思をどう守るかが、この章の中心テーマになっています。

ガイドさん
ガイドさん
認知症対策で最も重要なのは、資産を守ることではなく、生活に必要なお金を止めないことです。


第1章 の小見出し

  • 銀行の窓口で認知症を疑われると、お金が引き出せなくなる?
  • できる?できない? 法律上の能力のあれこれ
  • ATMを操作して金銭管理ができなくなったらどうするか
  • お金の管理で周りを困らせないための成年後見制度
  • 自分で決める! 任意後見と家族信託
  • COLUMN 認知症当事者の財産(お金) と本人の意思を反映する方法



第2章 病院は最期まで面倒を見てくれない

第2章では、医療と生活の現実のギャップが丁寧に説明されます。多くの人が、入院すれば最期まで病院が見てくれると考えがちですが、現代医療では治療が一段落すると退院が前提になります。そのため、突然の救急搬送後、短期間で「これからどこで、誰が、どのように支えるのか」を決めなければならない状況が生まれます。

この章では、延命治療やDNARといった言葉も登場しますが、難しい医療技術の話ではなく、「家族が代わりに判断を迫られる可能性がある」という点に焦点が当てられています。本人の意思が分からないまま決断を迫られると、家族は大きな精神的負担を抱えることになります。

そこで紹介されるのが、人生会議(ACP)という考え方です。元気なうちに、どのような医療やケアを望むのかを話し合い、共有しておくことで、いざというときの判断が支えられます。また、地域包括ケアシステムの存在にも触れ、医療・介護・生活支援が地域でつながっていることが説明されます。

ガイドさん
ガイドさん
医療の選択は感情だけでなく、生活とお金の現実を含めて考える必要があります。


第2章 の小見出し

  • 死装束の用意がないと裸で見送られることになるかもしれない
  • 突然、救急搬送されたら
  • COLUMN 延命治療の手法とDNAR
  • 退院後の居場所は確保できているか ―在宅医療の現実―
  • 人生会議(ACP)のABCとは
  • 地域包括ケアシステムの現状とこれから



第3章 80歳以降にかかるお金、ほんとはいくら?

この章では、「老後資金はいくら必要か」という単純な問いではなく、「80歳以降、どんなお金が、どんな形で必要になるのか」という視点で話が進みます。突然の病気や介護によって、予想外の支出が発生する可能性があることが示され、老後のお金は計画どおりにいかないことが前提になります。

NISAやiDeCoといった制度にも触れられますが、ここでの目的は投資を勧めることではありません。人生100年時代において、資産形成と同時に「使う段階」をどう設計するかが重要であることが伝えられます。金融リテラシーとは、単に商品を知ることではなく、自分の生活に合ったお金との付き合い方を理解することだと説明されます。

また、生活資金をどう確保し、誰が管理するのか、介護サービスを利用するための第一歩、施設入居や在宅療養の考え方などが取り上げられます。お金の話が、暮らし方の選択と密接に結びついていることを実感できる章です。

ガイドさん
ガイドさん
老後のお金は、総額よりも『いつ』『誰が』『どう使えるか』を考えることが重要です。


第3章 の小見出し

  • NISAとiDeCo 人生100年時代を生きる資産形成の一歩一
  • 突然の病気・介護、どのくらいかかる?
  • 金融リテラシーを使ったお金とのつき合い方
  • 生活資金をどう確保し、管理するか
  • 介護サービスの活用のための第一歩
  • ライフプランを考えて選ぶ施設入居
  • 在宅療養は一時の損得でなく信頼できる相手に相談する



第4章 葬儀とお墓と不動産は金融MAPの一丁目

この章では、人生の終盤に必ず直面する「葬儀・お墓・不動産」というテーマが、お金の流れという視点から説明されます。多くの人にとってこれらは感情的になりやすく、後回しにされがちですが、実際には家族の負担や手続きに直結する非常に現実的な問題です。特に葬儀については、コロナ禍をきっかけに小規模化が進み、家族葬や簡素な形式が一般的になってきた背景が示されます。準備がないまま亡くなると、短時間で形式や費用を決めなければならず、家族が大きな混乱に陥る可能性があります。

お墓の問題については、比較的家族間で話題にしやすい一方で、価値観の違いが表面化しやすいテーマとして扱われます。本書では、誰が守るのか、将来どうするのかといった点を曖昧にしたままにすると、結果として家族の負担になることが示されています。お墓は気持ちの問題であると同時に、管理や費用が発生する「現実の問題」であり、元気なうちに方向性を共有しておくことの重要性が語られます。

さらに、不動産については名義変更の重要性が強調されます。不動産は価値が高い資産である一方、名義が整理されていないと売却も活用もできず、結果として「動かせない資産」になってしまいます。相続後に名義変更を怠ると、手続きが複雑化し、後の世代に大きな負担を残すことになります。この章では、葬儀・お墓・不動産を、お金の流れを考える最初の地点として捉え直す視点が示されています。

ガイドさん
ガイドさん
不動産は形がある分、問題を先送りにしがちですが、放置するとお金の流れを止める原因になります。


第4章 の小見出し

  • 小さな葬儀、家族葬 -コロナ禍で変わった葬式事情 -
  • お墓の問題は家族が切り出しやすい
  • 不動産の名義変更を怠るとペナルティ??



第5章 おカネを生かす遺言書

この章では、遺言書が持つ本来の役割について、誤解を解きながら丁寧に説明されます。遺言という言葉に対して「縁起が悪い」「まだ早い」と感じる人は少なくありませんが、本書では遺言を「亡くなる準備」ではなく、「お金を生かすための道具」として位置づけています。遺言がない場合、法律に基づいて相続が進みますが、それが必ずしも本人や家族の望む形になるとは限りません。

遺言書の基礎知識として、形式を守らなければ無効になる可能性があることや、専門家が特に注意しているポイントが紹介されます。また、「遺言書の間違い探し」という切り口を通じて、よくある失敗例が示され、善意で書いた遺言がかえって混乱を招くケースがあることも説明されます。相続人が2人以上いれば、本人に争う意思がなくても、結果として揉めてしまう可能性があるという現実的な指摘もなされています。

さらに、この章では「それでも遺言を書きたくない人へ」という視点が用意されており、無理に書かせるのではなく、考えること自体に意味があるという姿勢が貫かれています。おひとりさまのお金問題にも触れられ、遺言は家族がいる人だけの制度ではないことが示されます。遺言書は、財産の分配を決めるためだけでなく、本人の意思を形として残す手段であることが、この章の中心的なメッセージです。

ガイドさん
ガイドさん
遺言はトラブル防止の書類であると同時に、家族への最後の説明書でもあります。


第5章 の小見出し

  • 遺言は縁起が悪い? 遺言書の基礎知識
  • 遺言書、専門家はこんなところを注意しています
  • 遺言書「間違い探し」
  • 2人以上の相続人がいれば相続は揉めるものと思っておこう
  • それでも遺言を書きたくない人へ
  • COLUMN おひとりさまのお金問題



第6章 必須!保険の見直し

この章では、保険を「安心のために入るもの」から、「人生の変化に合わせて整理するもの」として捉え直します。多くの人は若い頃に加入した保険をそのまま続けがちですが、年齢を重ねるにつれて必要な保障内容は変わっていきます。本書では、「見直したほうがいいかも」と感じたときこそが、実際の見直しのタイミングであると示されています。

高齢になってから加入できる医療保険やがん保険、死亡保険についても触れられ、年齢制限や保障内容の現実が説明されます。ここで強調されるのは、すべてのリスクを保険でカバーすることはできないという点です。保険は不安を完全に消すものではなく、あくまで備えの一部であり、他の資産や制度と組み合わせて考える必要があります。

また、保険の活用方法として、給付金を受け取ることだけでなく、治療や介護の選択肢を広げる役割があることも示されます。加入している保険の内容を把握していなかったり、請求方法が分からなかったりすると、いざというときに使えません。この章では、保険を「入っているかどうか」ではなく、「使える状態にしているかどうか」で考える重要性が伝えられます。

ガイドさん
ガイドさん
保険は契約した瞬間よりも、請求できる体制が整っているかが価値を決めます。


第6章 の小見出し

  • 保険の見直しは「見直したほうがいいかも」と思ったときがタイミング
  • 年齢によって削っていく保障項目は変わる
  • 何歳まで入れる? 高齢になってからの医療保険、がん保険、死亡保険
  • 知っておきたい保険の活用方法3選



第7章 80歳からお金に困らずどのように生きていくか

最終章では、本書全体を通して扱ってきたテーマを踏まえ、「老後をどう生きるか」という視点に立ち返ります。ここで語られるのは、老後を我慢の時間として捉えるのではなく、不安を減らす備えによって選択肢を残す生き方です。お金の準備は目的ではなく、安心して暮らし続けるための手段であるという考え方が示されます。

この章では、「縁起でもない話」を笑ってできるうちにしておくことの大切さが語られます。重たい話題ほど、元気なうちに共有しておくことで、家族の心理的負担は大きく軽減されます。また、お金の「鮮度」を保つという表現を使い、エンディングノートによって情報や意思を更新し続ける重要性が説明されます。エンディングノートは一度書いて終わりではなく、状況に応じて見直すものだという位置づけです。

そして、「80歳からの終活では遅すぎる」という言葉を通じて、準備は早ければ早いほど選択肢が多いことが強調されます。終活は人生の終わりを意識する行為ではなく、最後まで自分らしく生きるための設計図であるというメッセージで、本書は締めくくられています。

ガイドさん
ガイドさん
終活とは、人生を終わらせる準備ではなく、安心して生き続けるための環境づくりです。


第7章 の小見出し

  • 老後を諦めないで過ごすための「備え」
  • 「縁起でもない話」を笑えるうちにしておこう
  • お金の「鮮度」を保つエンディングノート
  • 80歳からの終活では遅すぎる




対象読者

対象読者

本書は「終活」という言葉に漠然とした不安や抵抗を感じている人にこそ手に取ってほしい内容で構成されています。相続や介護、老後資金といったテーマは、問題が起きてから考えようとしても選択肢が限られてしまいます。本書では、判断力や体力に余裕があるうちに知っておくべき視点を、現実の事例を交えながら整理しています。

特に次のような立場や悩みを持つ人にとって、状況を俯瞰し、自分事として考えるきっかけを与えてくれる一冊です。

  • 高齢の親を持ち、将来に漠然とした不安がある人
  • 親の認知症やお金の管理に不安を感じている人
  • 相続・遺言・介護について何から始めればいいかわからない人
  • おひとりさま・身寄りに不安がある人
  • 終活を前向きに、現実的に進めたい人


以下では、それぞれの対象読者がどのような悩みを抱え、本書がどのように役立つのかを具体的に説明していきます。


高齢の親を持ち、将来に漠然とした不安がある人

高齢の親を持つと、日常は問題なく過ぎていても、「この先、何が起きるのだろう」という漠然とした不安を感じることがあります。本書がこのような人にふさわしい理由は、不安の正体を「認知症」「お金の管理」「医療や介護の選択」といった具体的なテーマに分解し、どこから考え始めればよいのかを示してくれる点にあります。漠然とした不安は、情報が整理されていないことから生まれることが多く、本書はその整理役として機能します。

また、金融機関の窓口や医療・介護の現場で実際に起きている事例を通じて、「元気な今」と「何か起きた後」との違いを明確に描いている点も特徴です。将来への備えを、遠い話ではなく現実の延長線上として捉えられるため、不安を行動に変えるきっかけを得やすくなります。

ガイドさん
ガイドさん
漠然とした不安は、具体的な知識に置き換えることで初めて対策が見えてきます。



親の認知症やお金の管理に不安を感じている人

親の物忘れが増えたり、お金の管理が不安定になったりすると、多くの人は「まだ大丈夫だろう」と様子を見がちです。本書がこの層に適しているのは、認知症を介護の問題だけでなく、「資産が動かなくなるリスク」として捉えている点にあります。判断能力の低下が、銀行取引や契約行為にどのような影響を与えるのかが具体的に説明されており、問題の深刻さを現実的に理解できます。

さらに、成年後見制度や任意後見、家族信託といった選択肢についても、制度名の説明にとどまらず、「どの段階で、なぜ必要になるのか」という視点で整理されています。すでに不安を感じ始めている人にとって、本書は「今、考えるべき理由」を明確にしてくれる存在です。

ガイドさん
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判断能力が低下してからでは選べない対策があることを知ることが重要です。



相続・遺言・介護について何から始めればいいかわからない人

相続や遺言、介護は専門的な印象が強く、「何から手をつければいいのか分からない」という状態に陥りやすい分野です。本書がこのような人に向いている理由は、制度を個別に説明するのではなく、人生の流れに沿って全体像を示している点にあります。順番が分かることで、今すぐ必要なことと、将来に向けて知っておけばよいことを区別できます。

また、認知症、医療、老後資金、葬儀、不動産、遺言、保険といったテーマがどのようにつながっているのかが一冊の中で理解できるため、断片的な知識に振り回されずに済みます。初めて終活を考える人にとって、本書は迷わず全体を見渡すための指針になります。

ガイドさん
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終活で迷う最大の原因は、知識不足ではなく全体像が見えていないことです。



おひとりさま・身寄りに不安がある人

家族や身寄りが少ない人にとって、老後や死後の問題はより切実な課題になります。本書がこの層にふさわしいのは、相続人がいない場合や、おひとりさま特有のお金の問題にも目を向けている点です。認知症になった場合の財産管理や、医療・介護の判断を誰が担うのかといった現実的な課題が、他人事ではなく自分の問題として考えられる構成になっています。

また、「誰かが何とかしてくれる」前提ではなく、「自分の意思をどう残すか」という視点が一貫している点も特徴です。身寄りがないから不安なのではなく、準備の有無が不安を左右するという考え方が、本書を通じて明確になります。

ガイドさん
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おひとりさまの場合、意思を残す準備そのものが最大の安心材料になります。



終活を前向きに、現実的に進めたい人

終活に対して前向きな気持ちはあるものの、「重たい話になりそう」「現実的に何をすればいいのか分からない」と感じる人も少なくありません。本書がこのような人に適しているのは、終活を人生の終わりの準備ではなく、「安心して生き続けるための整理」として位置づけている点です。縁起でもない話を避けるのではなく、元気なうちに共有する意義が、具体的に示されています。

エンディングノートやお金の整理についても、一度決めて終わりではなく、見直しながら続けていくものとして扱われています。現実を直視しつつも悲観に偏らず、行動に移しやすい形で示されているため、終活を実践的に進めたい人にとって心強い内容です。

ガイドさん
ガイドさん
終活を前向きに進める鍵は、早く始めて選択肢を残すことにあります。




本の感想・レビュー

本の感想・レビュー

認知症と資産凍結のリアル

この本を読んで、いちばん衝撃を受けたのは「認知症=お金が動かなくなる可能性がある」という事実でした。認知症という言葉は知っていても、それが銀行口座の利用や財産管理にどこまで影響するのかを、ここまで具体的に考えたことはありませんでした。金融機関の窓口で判断能力を疑われた瞬間から、本人であっても自由にお金を引き出せなくなる可能性があるという現実は、想像以上に重たいものです。

特に印象に残ったのは、「本人のお金であるにもかかわらず、本人の意思が通らなくなる」という点でした。悪意があるわけではなく、守るための仕組みであっても、その結果として生活資金が滞ったり、家族が身動きできなくなったりすることがある。その構造が、法律や制度の話とともに丁寧に説明されており、単なる注意喚起では終わっていません。

認知症は特別な人の話ではなく、誰の身にも起こり得ることだと、静かに突きつけられました。この章を読んだことで、「もしも」の話を後回しにする怖さを、現実として受け止めるようになりました。

親のお金が「使えなくなる」怖さ

親が長年かけて貯めてきたお金は、当然ながら老後や万一のためのものだと思っていました。しかし本書を読んで、そのお金が必要なときに使えない状況が起こり得ることを知り、背筋が冷たくなりました。お金があるかどうかではなく、「動かせるかどうか」が問題になるという視点は、これまで意識したことがありませんでした。

銀行口座が凍結されることで、介護費用や生活費の支払いに支障が出る可能性があるという話は、非常に現実的です。親のために使いたいのに使えない、助けたいのに手続きが追いつかない。その状況は、子ども世代にとって精神的な負担も大きいものだと感じました。

この本を読んで、親のお金の話は「相続の話」ではなく、「生活を守る話」なのだと認識が変わりました。先延ばしにしてはいけない理由が、感情ではなく構造として理解できたことが、大きな学びでした。

金融機関の現場視点が新鮮

本書の「はじめに」で描かれている金融機関の窓口の話は、とても印象に残っています。認知症を患った高齢者を前に、職員がどのように悩み、どのような判断をしているのか。その現場の視点が率直に描かれており、一方的に制度を説明する本とはまったく違う印象を受けました。

「困ったお客様」ではなく「困っているお客様」という言葉は、読み進めるほどに重みを増していきます。金融機関が単にお金を管理する場所ではなく、高齢者の生活の変化に最初に気づく場所でもあるという指摘は、とても現実的でした。

制度や手続きの話だけでは見えてこない、人と人との間で起きている葛藤や配慮が伝わってくることで、この本全体に信頼感が生まれていると感じました。現場を知る人の言葉は、やはり説得力が違います。

終活の先延ばしが危険だと気づける

終活という言葉に対して、どこか「まだ早い」「そのうち考えればいい」という感覚を持っていました。しかし本書を通して、その考えがいかに危ういものかを思い知らされました。多くの対策は、判断能力がしっかりしているうちでなければ選べないという事実が、章をまたいで繰り返し示されています。

特に印象的だったのは、制度が整っていても、それを使える状態でなければ意味がないという点です。成年後見や任意後見、家族信託といった仕組みも、タイミングを逃せば選択肢から外れてしまう。その現実は、終活を「後回しにするリスク」として強く心に残りました。

この本を読んでから、「いつかやる」ではなく「いつまでに考えるか」という意識に変わりました。終活は余裕がある人のためのものではなく、余裕を失わないためのものなのだと感じています。

親子で読む価値がある

この本は、どちらか一方の立場だけで読むにはもったいないと感じました。親世代が読めば、自分の意思をどう残すかを考えるきっかけになりますし、子世代が読めば、親をどう支えるかを現実的に考える材料になります。立場は違っても、同じ内容を共有できる点がとても大きいと思います。

終活や相続の話は、どうしても感情が先に立ちがちですが、本書は制度や現実を軸に話が進むため、冷静に向き合いやすい構成になっています。そのため、親子で読んだあとに話をする場合でも、対立ではなく確認の場にしやすいと感じました。

「そっと親の隣りに置いておけば」という内容説明の言葉は、決して大げさではありませんでした。親子で同じページをめくること自体に、大きな意味がある本だと思います。

実例が多く想像しやすい

読み進めていて感じたのは、内容が頭ではなく生活の感覚として入ってくるということでした。それは、金融機関の窓口での出来事や、判断力が低下した高齢者と家族のやり取りなど、現実の場面を軸に話が展開されているからだと思います。制度や仕組みの説明が、机上の話に終わらず、日常の延長線として描かれている点が印象的でした。

文章の中に登場する状況は、決して特別な家庭の話ではありません。年金の入金をめぐる混乱や、家族との距離感、周囲がどう関わるべきか悩む様子など、どれも身近に起こり得るものです。そのため、自分や家族の姿を重ねながら読み進めることができました。

読み終えたとき、「知識を得た」というより「状況を理解した」という感覚が残りました。抽象論ではなく、現実を見せてくれる構成だからこそ、内容が深く心に残ったのだと思います。

専門家の知見を一冊で得られる

相続や介護、保険や医療といったテーマは、それぞれ専門分野が異なり、通常は別々に調べる必要があります。本書では、それらが一冊の中で整理され、同じ目線で語られている点に大きな価値を感じました。情報の粒度が揃っているため、読み手が混乱しにくい構成になっています。

法律や金融の話も、専門用語を並べるのではなく、なぜその知識が必要なのかという背景から説明されており、理解しやすさが際立っていました。医療や介護の現場についても、制度の理想だけでなく現実が示されているため、期待と現状の差を冷静に受け止めることができます。

複数の専門家の視点が入っているにもかかわらず、語り口に一貫性がある点も印象的でした。知識を詰め込むための本ではなく、判断するための土台を整えてくれる一冊だと感じています。

終活=準備ではなく設計だと理解できる

この本を読んで、終活という言葉の捉え方が大きく変わりました。これまでは、死後の手続きや片付けを指すものだと思っていましたが、本書では「これからの時間をどう生きるか」を考える行為として描かれています。その視点の転換が、とても新鮮でした。

お金の「鮮度」を保つという表現は、特に印象に残っています。財産を残すことよりも、必要なときに必要な形で使える状態にしておくことが大切だという考え方は、老後の不安を現実的に捉え直すきっかけになりました。

終活を、終わりの準備ではなく人生後半の設計と捉えることで、話題にしやすくなり、向き合いやすくなる。そのことを、押し付けがましくなく伝えてくれる点が、本書の大きな魅力だと思います。




まとめ

まとめ

この記事では、相続・遺言・介護・お金の問題を一冊で整理できる書籍として『相続・遺言・介護の悩み解決 終活大全』を紹介してきました。

最後に、この本を読み終えたときに何が得られ、どんな行動につながるのかを整理して締めくくります。

  • この本を読んで得られるメリット
  • 読後の次のステップ
  • 総括


これらを押さえることで、読後のイメージがより具体的になるはずです。


この本を読んで得られるメリット

ここでは、本書を手に取ることで得られる代表的な利点を整理してみましょう。

不安を「具体的な課題」として整理できる

相続や介護、老後のお金について不安を感じていても、多くの人はそれを言葉にできないまま抱え込んでいます。本書では、認知症による資産凍結や医療・介護の判断といった現実的な場面を通して、不安の原因がどこにあるのかを明確に示しています。そのため、漠然とした心配が「何について考えるべきか」という具体的な課題に変わり、思考が整理されていきます。

相続・介護・お金の問題を一つの流れで理解できる

終活に関する情報は、相続、遺言、保険、介護、葬儀と分野ごとに分断されがちです。本書の強みは、これらを別々の問題としてではなく、人生の後半に連続して起こる出来事として一冊の中でつなげている点にあります。個別の制度や手続きだけでなく、それらがどのタイミングで関係してくるのかを理解できるため、全体像を見失わずに済みます。

「元気なうちにしかできないこと」が明確になる

本書を読むことで強く意識させられるのが、判断能力があるうちにしか選べない対策が存在するという事実です。成年後見や家族信託、遺言書といった制度は、知識として知っているだけでは意味がなく、使えるタイミングを逃さないことが重要だと繰り返し示されています。これにより、「まだ早い」「そのうち考える」という先延ばしの危うさに気づくことができます。

家族と話し合うための共通言語が手に入る

終活やお金の話題は、家族間でも切り出しにくいものです。本書は、実際の金融機関や医療・介護の現場で起きている事例をもとに構成されているため、「本にこう書いてあった」という形で話題にしやすい特徴があります。感情論ではなく、現実に起きていることを共有できるため、親子や家族間で冷静な話し合いを始める土台になります。

行動につながる判断軸が身につく

多くの終活本がチェックリスト的な情報提供に留まる中で、本書は「どう判断するか」という視点を重視しています。何を選ぶかよりも、どのように考えるかが示されているため、読者自身の状況に応じて応用しやすくなっています。その結果、読後には「まず何から始めるべきか」が自然と見えてきます。


ガイドさん
ガイドさん
知識を増やすことよりも、判断できる状態になることが、この本を読む最大のメリットです。



読後の次のステップ

本書を読み終えたとき、「勉強になった」で終わらせないことが何より重要です。終活や相続、介護の問題は、知識を得ただけでは現実は何も変わりません。読後にどんな一歩を踏み出すかによって、この本が単なる情報源になるか、将来の安心につながる実用書になるかが分かれます。

ここでは、本書を読んだあとに意識したい現実的な行動のステップを紹介します。


step
1
自分と家族の現状を静かに整理する

最初に取り組みたいのは、制度や手続きを調べることではなく、自分や親の現状を冷静に見つめ直すことです。年齢、健康状態、生活スタイル、財産の把握状況などを思い浮かべながら、本書で紹介されていた場面と照らし合わせてみることで、「自分たちの場合はどこが課題になりそうか」が見えてきます。この段階では、結論を出す必要はなく、気づきを得ること自体が大切な一歩になります。


step
2
家族と話題に出すきっかけをつくる

次のステップとして重要なのが、家族との共有です。終活やお金の話は切り出しにくいものですが、本書を読んだという事実そのものが、自然な話題の入り口になります。「こんなケースがあるらしい」「こうなると困るみたいだ」といった形で、本に書かれていた内容をきっかけにすると、感情的にならずに現実の話として伝えやすくなります。ここで大切なのは、結論を急がず、考えを共有することです。


step
3
情報を「書き出す」行動に移す

理解が進んできたら、頭の中にある情報を外に出す作業に進みます。通帳や保険、契約関係、希望する医療や介護の方向性などを、完璧でなくても構わないので書き出してみることで、現状が可視化されます。本書で触れられているエンディングノートの考え方は、この段階で特に役立ちます。書き出すことで、分かっているつもりだったことと、実際に把握できていなかったことの差にも気づけます。


step
4
必要に応じて専門家を視野に入れる

最後のステップとして、必要性を感じたテーマについて専門家を意識する段階に進みます。成年後見、遺言、保険の見直しなどは、すべてを自分だけで判断する必要はありません。本書で示されているように、専門家は「決めてもらう存在」ではなく、「選択肢を整理してくれる存在」です。基礎知識を持った状態で相談することで、納得感のある判断がしやすくなります。


ガイドさん
ガイドさん
読後に大切なのは、急ぐことではなく、考え続けられる状態をつくることです。



総括

本書は、相続や遺言、介護、老後資金といったテーマを、将来の「もしも」の話ではなく、今の生活と地続きの問題として捉え直させてくれる一冊です。認知症による資産凍結や医療・介護の判断といった現実的な場面が提示されることで、これまで先延ばしにしてきた不安が、誰にでも起こり得る身近な課題として実感できる構成になっています。

また、金融・法律・保険・医療介護といった複数分野の視点が一冊に集約されている点は、本書ならではの強みです。断片的な知識を個別に集めるのではなく、人生の後半に起こる出来事を一つの流れとして理解できるため、情報に振り回されず、自分なりの判断軸を持ちやすくなります。専門性が高い内容でありながら、生活者の目線で書かれている点も印象的です。

さらに本書は、終活を重苦しい準備や縁起の悪い話として扱っていません。むしろ、元気なうちに考えておくことで選択肢が広がり、家族との関係性やこれからの暮らしをより良いものにできるという前向きな視点が貫かれています。そのため、親世代だけでなく、子世代にとっても無理なく読み進められる内容になっています。

ガイドさん
ガイドさん

終活やお金の問題に正解はありませんが、考え始めるきっかけは必要です。

本書は、その最初の一歩を後押ししてくれる存在と言えるでしょう。

そっと手元に置いておき、必要なときに読み返しながら、自分や家族の状況に合わせて活用できる実用書として、長く付き合える一冊です。




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