社会保障

3歳児健康診査とは?制度の内容や診察項目をわかりやすく解説

【3歳児健康診査とは】制度の内容や診察項目をわかりやすく解説

この記事では「3歳児健康診査」について解説していきま。


我が子は順調に成長しているのだろうか…親ならば誰しもが心配になると思います。

日本の社会保障では3歳~4歳までの全ての幼児を診査し、必要に応じて医療機関への受診をすすめています。


この記事を読めば、「3歳児健康診査の目的」「診察内容」などを知ることができます。


 

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3歳児健康診査とは

3歳児健康診査とは

3歳児健康診査は母子保健法第 12 条に定められていて、「満三歳を超え満四歳に達しない幼児」を対象として、市町村が実施者として行っています。


3歳児健康診査は、省略して3歳児健診(さんさいじけんしん)とも呼ばれます。


集団健康診査においては、一人当たりの診察時間が短いため、要領よくポイントを抑えて診察する必要があります。


時期が来ると市区町村から診査の通知が届きます。診査にかかる費用は無料です。

健康診査の結果、異常が疑われた場合は、必要の応じて精密健康診査が行われます。


3歳児健康診査の目的

幼児期において幼児の健康・発達の個人差異が比較的明らかになり、保険、医療による対応の有無が、その後の成長に影響をおよぼす3歳児のすべてに対して健康診査を行い、視覚、聴覚、運動、発達等の心身障害、その他疾病および異常を早期に発見し、適切な指導を行います。


また、心身障害の進行を未然に防止するとともに、う蝕の予防、発育、栄養、生活習慣、その他育児に関する指導を行い、もって幼児の健康の保持および増進を図ることを目的とします。


3歳児健康診査の種類

健康診査の種類は、一般健康診査、歯科健康診査および精密健康診査です。


3歳児健康診査の対象者

一般健康診査および歯科健康診査の対象者は、満3歳を超え、満4歳に達しない幼児です。


精密健康診査の対象者は、一般健康診査の結果、心身の発達以上、疾病等の疑いがあり、より精密に健康診査を行う必要があると認められる者であって、下記のいずれかに該当するものとされます。

  • 身体面については、それぞれの診療科を標ぼうしている医師に委託すると妥当なもの。
  • 精神発達面については、医療機関または児童相談所に依頼することが適切なもの。


3歳児健康診査の受診率

3歳児健康診査の受診率

厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」(平成25年度)によると、受診人数は 1,009,368人であり、受診率は92.9%でした。


ちなみに、同年1歳6か月児健診の受診者数と受診率は、1,001,397人(94.9%)でした。


3歳児健康診査の診察項目

3歳児健康診査の診察項目
  1. 身体発育状況
  2. 栄養状態
  3. 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無
  4. 皮膚の疾病の有無
  5. 眼の疾病及び異常の有無
  6. 耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無
  7. 四肢運動障害の有無
  8. . 精神発達の状況
  9. 言語障害の有無
  10. 予防接種の実施状況
  11. その他の疾病及び異常の有無
  12. 育児上問題となる事項(生活習慣の自立、社会性の発達、しつけ、食事、事故
    等)先天異常
  13. その他の疾病及び異常の有無


3歳児健康診査の診察所見

3歳児健康診査の診察所見
  1. 身体的発育異常
  2. 精神的発達障害・・精神発達遅滞、言語発達遅滞
  3. 熱性けいれん
  4. 運動機能異常
  5. 神経系・感覚器の異常・・視覚、聴覚、てんかん性疾患、その他
  6. 血液疾患・・貧血、その他
  7. 皮膚疾患・・アトピー性皮膚炎、その他
  8. 循環器系疾患・・心雑音、その他
  9. 呼吸器系疾患・・ぜんそく性疾患、その他
  10. 消化器系疾患・・腹部膨満・腹部腫瘤、そけいヘルニア、臍ヘルニア、便秘、その
  11. 泌尿生殖器系疾患・・停留睾丸、外性器異常、その他
  12. 先天異常
  13. 生活習慣上の問題・・小食、偏食、その他
  14. 情緒行動上の問題・・指しゃぶり、吃音、多動、不安・恐れ、その他
  15. その他の異常(児童虐待など)


3歳児健康診査の診察内容

3歳児健康診査の診察内容


身体的発育異常

所見の取り方

満3歳を超え満4歳に達しない幼児の体格は、おおむね身長 90cm、体重 15kg が目安である。性別の成長曲線上(資料参照)で3パーセンタイル以上 97 パーセンタイル未満を正常範囲とするが、過去の成長の状況を参考にして、急激な変化にも留意する必要があります。


健康診査において身体計測は、診察前に保健師ないしは看護師が担当することが推奨されます。

身長は臥位または立位で 0.1cm 単位まで測定します。体重は 100g単位まで測定します。頭囲は眉間の中点と外後頭隆起をつなぐ線にて 0.1cm 単位まで計測します。ポイントとしては、計測した値を成長曲線のグラフに記入してもらうことです。

医師はグラフを見て、身長、体重、頭囲の3つについて、3パーセンタイルの線を下回っていないこと及び 97 パーセンタイルの線を上回っていないことを視認します。

身長と体重がそれぞれ正常範囲であっても、体格のバランスに留意する必要があります。


肥満度は-15%から+15%が正常範囲です。3歳児では、視診にて肋骨や鎖骨が見えるくらいの状態が標準体重前後であり、肋骨や鎖骨が見えないくらいの体格では、おおよそ 20%くらいの肥満度となります。


判定と対応

低身長は身長が3パーセンタイル未満、高身長は身長が 97 パーセンタイル以上の時に疑います。

3歳児健康診査をきっかけに成長ホルモン分泌不全性低身長が発見されることも珍しくありません。

健康診査の時点で3パーセンタイル以上であっても、それ以前の身長と比較して伸びが停滞している場合には、経過観察が必要です。痩せは肥満度-15%未満が続く場合に、肥満は肥満度+15%以上が続く場合に疑います。


いずれも追跡観察となります。また、身長、体重が正常範囲内であっても、急激な変動がある場合にも追跡観察とするとよいです。


頭囲では 97 パーセンタイル以上を大頭(あるいは巨頭)、3パーセンタイル未満を小頭となります。

家族性の大頭や小頭のこともあるが、背景に様々な疾患が疑われることが少なくありません。増悪の傾向が認められる場合には経過観察あるいは精密検査となります。


精神的発達障害

所見の取り方

3歳における精神的発達の診察は、大きく認知能力の発達と言語能力の発達の2つに分けることができます。


認知能力では、比較級が理解できるようになって、大小や長短の区別ができるし、色の弁別や呼称が可能となります。

言語能力では多語文(形容詞+名詞+動作語など;赤いくつをはくなど)を話し、疑問形に応答するなど会話ができるようになる。基本的なオリエンテーションが身について、自分の姓名や年齢が言える。

認知発達の診察
  1. 大小のりんごの絵を見せて、その大小を尋ね指差しさせる。
  2. 電車の絵を見せて、その長短を尋ね指差しさせる。
  3. 積み木を2個と4個を別々に積んで、その高低を尋ね指差しさせる。
  4. 色つきの自動車(赤、青、黄、緑)の4色を見せて、色を尋ね指差しさせる。
精神的発達障害


言語発達の診察
  1. 子どもに名前と年齢を尋ねて答えさせる。
  2. 今日は誰と一緒に来たのかを尋ねて答えさせる。
  3. 家庭での様子(遊びや食事で好きなものなど)あるいは保育所での様子を尋ね
    て答えさせる。
  4. 6つの絵(ねこ、りんごなど身近なもの)を見せて、その名前を答えさせる。


判定と対応

認知発達の判定と対応

3歳で大小と長短が理解できない場合には、明らかに理解力の遅れが疑われるので医療機関を紹介されます。

高低が理解できなかったり、4色のうちいくつか答えられない場合には経過観察となります。

3歳6か月以降では、高低が理解できない場合や4色のすべてが答えられない場合には理解力の遅れが疑われるので医療機関を紹介されます。

言語発達遅滞の判定と対応

3歳で自分の名前と年齢が答えられない場合や二語文が話せないときは、言葉の遅れとして医療機関や療育機関を紹介されます。

絵の呼称の正答数が3つ以下だったり、誰と来たのかが答えられない、あるいは家庭や保育所での様子が答えられない場合には経過観察となります。

3歳6か月の場合には絵の呼称の正答数が3つ以下だったり、誰と来たのかが答えられない場合には医療機関や療育機関を紹介されます。

話すことはできるが、尋ねたことに答えることができず会話が成立しにくい場合には自閉症を疑う必要があるので留意となります。


熱性けいれん

所見の取り方

熱性けいれんは問診上で情報を収集します。


熱性けいれんとは「主に生後6か月から 60 か月までの乳幼児期に起こる、通常は 38℃以上の発熱に伴う発作性疾患(けいれん性、非けいれん性を含む)で、髄膜炎などの中枢神経感染症、代謝異常症、その他の明らかな発作の原因が診られないもので、てんかんの既往があるものは除外する(日本小児神経学会のガイドラインより)」となっている。本邦での頻度は約2%です。

判定と対応

問診にての段階で下記のポイントを聞き取り、医療機関を受診しているかを確認します。

医師は単純型以外であると判断したときに、医療機関を紹介します。


運動機能異常

所見の取り方

運動機能は、身体の移動等の粗大運動と手指の動きを見る微細運動に分けて所見をとります。


3歳児は成人と同様に手と足を交互に振って歩くことができます。また走行や跳躍が可能になり、足を交互にして階段を上がることができるようになります。


微細運動も器用になり、鉛筆で○を書くことや、大きなボタンであればかけることができます。


視覚の異常

斜視や高度の屈折異常(遠視や乱視)があると、中枢へのシナプス形成が阻害され、眼鏡やコンタクトレンズでは矯正できない片眼または両眼の視力不良(弱視)となります。


弱視は予防・治療が可能であるが、感受性期間(6~8歳)を過ぎると不可逆的な視力不良となります。

弱視の有病率は約2%で、小児や若年者の視力不良の原因として頻度が高いです。大部分の弱視は3歳児健康診査で早期に検出されれば予後良好で、矯正眼鏡の常用と健眼遮閉治療・弱視訓練によって就学までに治癒することができます。


3歳児視覚検査ではアンケートと視力検査が必須項目です。

一次検査はアンケートと家庭での視力検査、二次検査はアンケート記入項目の確認と二次問診、家庭での視力検査結果の確認と視力の再検査、医師の診察である。二次検査に屈折検査や両眼視機能検査(立体視検査)を加えると弱視や斜視の検出に効果的です。

視覚の異常


判定と対応

家庭での視力検査で左右眼いずれかでも視力 0.5 が確認できなかった児、検査のできなかった児は二次検査にて視力の再検査を行います。


月齢や発達状況によって検査ができないことがあり、3歳6か月頃になると検査可能率が向上します。


二次検査で視力の再検査を実施した結果、左右眼のいずれかでも視力 0.5 が確認できなかった児、検査のできなかった児は眼科での精密検査を勧告し、受診結果について保護者に確認をする必要があります。


聴覚の異常

所見の取り方

健康診査を受診する前に問診票が配布され、ささやき声検査などが家庭で実施されているので、その結果を確認します。


なお、自治体によっては、ティンパノメトリーや指こすりテスト、信号音による聞き取りテスト、耳鼻咽喉科医や言語聴覚士による診察を加えて聴覚検診の精度を上げる試みがされています。

聴覚の異常


判定と対応

問診票の第1項目はあまり重要視されません。


問診票の第2、第3項目は滲出性中耳炎を念頭においたものである。滲出性中耳炎によっても軽度から中等度の難聴を発症することがあるので、耳鼻咽喉科医に精査を依頼します。


問診票の第4、第5項目は直接難聴の有無を問う問診であり、いずれかにチェックが入っていた場合にはリファーとしてよいです。


問診票の第6、第7項目のいずれかにチェックが入った場合、ささやき声検査の結果を参照する必要があります。ささやき声検査でも難聴が疑われた場合には難聴疑いとしてリファーとします。


てんかん性疾患

てんかんとは「種々の病因によってもたらされる慢性の脳疾患であり、大脳神経細胞の過剰な放電から由来する反復性の発作(てんかん発作)を唯一の症状あるいは主徴とし、これに種々の臨床症状および検査所見を伴う状態(WHO)」と定義されています。


健康診査では問診では、以下のポイントを参考に情報を収集するとよい。いわゆる「ひきつけ」や「けいれん」とは重なる部分はあるものの同一ではないことに留意します。


血液疾患

所見の取り方

貧血の主症状である顔面、口唇、口腔粘膜、眼瞼結膜、爪床の蒼白化は、ヘモグロビン濃度が8g/dl 以下になると認められるようになります。


5g/dl 以下では聴診にて心雑音を聴取するようになる。偏食の有無も貧血の発症に関連するので重要です。


判定と対応

顔面蒼白や眼瞼結膜の蒼白化がある場合や心尖部および心基部の収縮期雑音、頚静脈部のコマ音が聴取される場合には、精密検査のため医療機関を紹介されます。


皮膚疾患

所見の取り方

皮膚色(黄疸の有無)、皮膚の緊満度(turgor)、皮膚の乾燥度(脱水のときやアトピー性皮膚炎のときは乾燥肌になる)、色素沈着、発疹や出血、皮膚の感染症などをチェックします。


所見が認められるのに医療管理が行われていない場合には、医療機関に紹介をします。

自然消退するものや悪性化の可能性がないものでも、美容的な観点で医療機関への紹介が必要になることがあります。


判定と対応

  1. 程度の強い湿疹、例えば湿潤や出血があったり、掻爬痕があり強いかゆみを訴える湿疹などでは医療機関の受診をすすめる。

  2. アトピー性皮膚炎では、かゆみを伴うもの、顔面を超えて体幹、四肢に広がっているもの、2か月以上持続しているもの、家族歴や合併アレルギー疾患がある場合では、医療機関受診をすすめる。

  3. 白斑(木の葉状)が3個以上の場合には結節硬化症を疑って精密検査とする。カフェ・オ・レ斑では、5mm サイズ以上のものが6個以上認められる場合には神経線維腫症を疑って精密検査とする。

  4. 血管腫では、サーモンパッチ、イチゴ状血管腫、単純性血管腫、海綿状血管腫などがある。これらが認められた場合、緊急性はないが、保護者の心配があれば、医療機関を紹介する。

  5. その他の母斑、例えば扁平母斑、色素性母斑、大田母斑、異所性蒙古斑、脂腺母斑などは緊急性はないが、美容的な観点から保護者の心配があれば、医療機関を紹介する

  6. 皮膚感染症として膿化疹や皮膚真菌症がある。膿化疹は小水疱やそれが破れてびらんとなっていたり、痂皮化していたりする。治療が必要なので未治療であれば医療機関を紹介する。皮膚真菌症では、カンジダ症や頭皮白癬、爪白癬などがある。いずれも無治療であれば医療機関を紹介する。



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