文部科学省は、子どもにわいせつ行為をした教員の処分歴を閲覧できるデータベースの作成に2022年度から着手する方針を固めました。
都道府県教育委員会に氏名や処分理由の入力を義務付け、教員を採用する際に処分歴がないかどうか確認できるようになります。
処分を受けた教員が再就職して「再犯」に及ぶのを防ぐ狙いがあります。
わいせつ教員のデータを記録するようになる
2021年5月に議員立法で成立した新法に処分歴のデータベース化が明記され、文科省は22年度の概算要求に関連経費1・5億円を盛り込みました。
同年度中にデータベースのシステム構築を進め、23年6月までに各教委による情報の入力を始めます。
データベースに掲載する対象となるのは、児童生徒にわいせつな行為をして免許状の失効・取り上げ処分を受けた教職員です。
個人情報に配慮し、閲覧できるのは教委や学校法人の採用責任者に限定する方針です。
都道府県教委には新法施行後の行為について入力を義務付けます。
文科省担当者は「過去の処分もできるだけ入力をお願いする」としています。
教員免許は最短で3年後には再取得が可能
わいせつ行為やセクハラによる教員の処分数は、近年高止まり傾向にあります。
2019年度に懲戒免職や訓告などの処分を受けたのは公立校で273人に上り、うち児童生徒へのわいせつ行為が半数近い126人を占めました。
教員免許法の規定では、懲戒免職となったり禁錮以上の刑に処されたりすると教員免許は失効しますが、最短で3年後には再取得が可能となります。
処分歴を隠した教員が別の自治体で採用され、再びわいせつ行為に及んだ事案も発生しています。
懲戒免職による免許失効者の氏名などは官報に掲載されます。
文科省はこれまでも官報の情報を集約し、教委などが検索できるようにしていました。
しかし、官報には処分の理由がわいせつ行為かどうかの記載がなく、5年分しか遡れません。
同省は2021年2月から過去40年分を遡れるように作業を始めたほか、省令を改正して4月から官報に処分理由を明示させるようにしました。
免許状の再交付を拒否できる権限を都道府県教委に付与
文科省は、わいせつ行為で処分を受けた教員について免許の再取得を規制する法改正も検討しましたが、憲法で定める職業選択の自由の侵害につながるなどとして見送った過去があります。
5月に成立した新法では、特例として免許状の再交付を拒否できる権限を都道府県教委に付与することが明記されました。
奈良大の今井由樹子准教授(犯罪心理学)は「データベースを活用した対策の実効性を担保するには、被害の通報や加害教員への適切な処分が不可欠」と指摘。「通報義務の徹底や、児童生徒が被害を相談しやすい体制づくりが急務だ」と話します。
処分歴のない教員による行為を防ぐには他の対策も強化する必要があります。
文科省は、教委で実施している研修や啓発、わいせつ行為を早期発見するための定期調査の実効性を検証し、指導や助言にも取り組む方針です。
スクールカウンセラー拡充を進めるなど、包括的な対策を講じます。