この記事では、日本の「母子及び父子並びに寡婦福祉」制度について解説していきます。
母子及び父子並びに寡婦福祉の基本的な情報を網羅していますので、コレだけ読めば自身や家族の保障状況を理解できます。
母子及び父子並びに寡婦福祉とは、社会福祉の1つです。
社会福祉には下記の4つがあります。
社会福祉は日本の社会保障制度の一部です。
基本的人権(特に生存権)の保障の観点から生活困窮者の生活保障や心身に障害等があり支援や介助を必要とする人への援助を行う公的サービスです。
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母子及び父子並びに寡婦福祉とは
母子及び父子並びに寡婦福祉とは、経済的・社会的に不安定な生活になりがちなひとり親世帯について援助を行い、経済的な自立と、扶養している児童の福祉を増進させるためのものです。
福祉とは
福祉とは、「しあわせ」や「ゆたかさ」を意味します。すべての国民が最低限の幸福を得られるように、社会的援助を提供するという理念を持ちます。
また、寡婦に対する福祉資金の貸付け・就業支援事業等の実施・自立支援給付金の給付などの支援も行います。
寡婦とは
寡婦(かふ)とは、夫と死別又は離別し、再婚していない女性、夫のない独身の女性のことです。
以前は「母子及び寡婦福祉法」という名称でしたが、2014年の法改正で現在の「母子及び父子並びに寡婦福祉法」に変わりました。
母子及び父子並びに寡婦福祉で受けられるサービス
母子及び父子並びに寡婦福祉法のサービスは主に下記の4つになります。
その①:児童扶養手当
その②:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
その③:母子生活支援施設等
その④:その他の母子福祉に関する対策
それぞれわかりやすく説明していきます。
その①:児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親家庭の生活の安定と自立を助け、児童の健全育成を図ることを目的とし、18歳に達する日以後最初の3月31日までの児童を監護している父子・母子家庭の父または母や、父母にかわってその児童を養育している方に支給されます。
他にも、18歳以上であっても、20歳未満で政令で定める程度の障害の状態にある児童を監護している父子・母子家庭の父または母や、父母にかわってその児童を養育している方にも支給されます。
手当の支給要件
手当の支給には下記の条件のいずれかに該当する必要があります。
- 父母が婚姻を解消した児童
- 父又は母が死亡した児童
- 父又は母が一定程度の障害の状態にある児童
- 父又は母が生死不明の児童
- 父又は母から1年以上遺棄されている児童
- 父又は母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童(平成24年8月から)
- 父又は母が1年以上拘禁されている児童
- 婚姻によらないで生まれた児童
- 遺児などで父母がいるかいないかが明らかでない児童
手当が支給されなくなる条件
下記の条件のいずれかに該当する場合は、上記の条件に該当していても手当は支給されません。
- 児童が請求者の配偶者(事実上の婚姻関係にある者も含む)に養育されている
- 児童が児童福祉施設などに入所している
- 児童が里親などに委託されている
- 手当を受けようとする人、対象となる児童が日本に住んでいない
手当の支給額
手当の支給額は、受給資格者が監護・養育する子どもの数や、受給資格者の所得額などにより決まります。
- 児童1人の場合(令和2年4月~)
全部支給:43,160円(一部支給:10,180~43,150円) - 児童2人以上の加算額
2人目 全額支給: 10,190円(一部支給:5,100円~10,180円)
3人目以降 全額支給: 6,110円(一部支給:3,060円~6,100円)
所得が制限を超える場合や、受給している公的年金が児童扶養手当より高額な場合などは、手当は支給されません。
受給している公的年金が児童扶養手当より低い場合は、その差額が支給されます。また、手当額は消費者物価指数の変動に応じて、毎年4月に改定されます。
手当を貰える期間
児童扶養手当は、受給開始から5年または支給要件を満たしてから7年を経過すると手当の一部を支給停止されます。
※就業している等の事由に該当された場合、必要な書類を提出することによって、以前と同様に児童扶養手当を受給することができます。
手当の支給日
奇数月の11日に支給されます。金融機関の休業日の場合は前営業日に支給されます。
その②:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
20歳未満の児童を扶養している配偶者のない女子または男子、寡婦等に貸し付けられます。
保証人を立てることで無金利で借りることができます。保証人がいない場合は年1.0%の金利が発生します。
各種、据置期間や償還期間が異なります。
資金の種類 | 内容 |
事業開始資金 | 事業(例えば洋裁、軽飲食、文具販売、菓子小売業等、母子・父子福祉団体については政令で定める事業)を開始するのに必要な設備、什器、機械等の購入資金 |
事業継続資金 | 現在営んでいる事業(母子・父子福祉団体については政令で定める事業)を継続するために必要な商品、材料等を購入する運転資金 |
修学資金 | 高等学校、大学、高等専門学校又は専修学校に就学させるための授業料、書籍代、交通費等に必要な資金 |
技能習得資金 | 自ら事業を開始し又は会社等に就職するために必要な知識技能を習得するために必要な資金(例:訪問介護員(ホームヘルパー)、ワープロ、パソコン、栄養士等) |
修業資金 | 事業を開始し又は就職するために必要な知識技能を習得するために必要な資金 |
就職支度資金 | 就職するために直接必要な被服、履物等及び通勤用自動車等を購入する資金 |
医療介護資金 | 医療又は介護(当該医療又は介護を受ける期間が1年以内の場合に限る)を受けるために必要な資金 |
生活資金 | 知識技能を習得している間、医療若しくは介護を受けている間、母子家庭又は父子家庭になって間もない(7年未満)者の生活を安定・継続する間(生活安定期間)又は失業中の生活を安定・継続するのに必要な生活補給資金 |
住宅資金 | 住宅を建設し、購入し、補修し、保全し、改築し、又は増築するのに必要な資金 |
転宅資金 | 住宅を移転するため住宅の貸借に際し必要な資金 |
就学支度資金 | 就学、修業するために必要な被服等の購入に必要な資金 |
結婚資金 | 母子家庭の母又は父子家庭の父が扶養する児童及び寡婦が扶養する20歳以上の子の婚姻に際し必要な資金 |
その③:母子生活支援施設等
母子生活支援施設は、18歳未満の子どもを養育している母子家庭、また何らかの事情で離婚の届出が出来ないなど、母子家庭に準ずる家庭に生活の場を提供します。
そして、 安心・安全な環境の中で、母と子の生活を安定するため相談・援助を進めながら、自立を支援します。
他にも、母子福祉センター、母子休養ホーム等の母子福祉施設があります。
その④:その他の母子福祉に関する対策
他の社会福祉や社会保険によって、ひとり親世帯を支援する仕組みもあります。
所 得 保 障 |
児童扶養手当の支給 | 生別母子世帯等 |
母子年金等の支給 | 母子年金 | |
遺族基礎年金 | ||
遺族年金 | ||
母子福祉資金の貸付 | 母子(寡婦)世帯に対する低利または無利子の資金貸付 | |
寡婦福祉資金の貸付 | ||
自 |
自立促進事業 | 公共的施設内の売店等の優先設置 |
製造たばこの小売販売業の優先許可 | ||
住宅対策 | 公営住宅の母子世帯向け特別配慮 | |
生活指導等 | 1)母子生活支援施設 2)母子福祉センター 3)母子休養ホーム 4)母子自立支援員の設置 5)母子家庭等日常生活支援事業 6)保育対策(保育所への優先入所) |
|
税 制 |
税制上の措置 | 母子世帯等に対する所得控除 |
利子非課税制度 |
サービス利用の手続き
「児童扶養手当」と「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」のサービスを利用する手続きを解説していきます。
児童扶養手当の手続き
お住まいの市区町村窓口で、必要な書類を添えて請求の手続きをしてください。
必要な書類は下記のとおりです。
- 請求者と対象児童の戸籍謄本または抄本(外国籍の方は登録済証明書)
- 預金通帳(請求者名義のもの)
- 年金手帳
- 印鑑(朱肉を使用するもの)
- 所得証明書(6月までの申請の方は前年度分、7月以降の申請の方は本年度分)
- 請求者と対象児が含まれる世帯全員の個人番号カード等
- その他、世帯の状況によって書類等が必要になる場合がありますので、必ず子育て支援課窓口でご相談ください。
母子父子寡婦福祉資金貸付金制度の手続き
手続きの簡単な流れ
- 事前の相談
- 書類の提出
- 連帯借受者の有無
- 審査
- 貸付 or 却下
step
1事前の相談
step
2必要な書類の提出
- 申請書
- 戸籍謄本(おおむね3ヶ月以内に発行されたもの)
- 所得証明書及び住民税納税証明書
- 連帯保証人を立てる場合、連帯保証人の所得証明書
- 申請者の個人番号(マイナンバー)がわかるもの
- その他資金の種類により、入学許可書の写し、事業計画書、収支計画書
step
3連帯借受者の有無
上記以外の理由で資金を借りる場合、連帯保証人を立てると無利子、立てないと年率1.0%の利子が付きます。
step
4審査
step
5貸付 or 却下
まとめ
母子及び父子並びに寡婦福祉では、ひとり親世帯への支援を行っています。
「児童扶養手当」は、ひとり親家庭の生活の安定と自立を助け、「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」では、有利な金利で貸し付けが行われます。
日本の社会保障制度は世界的に見ても手厚くなっていて、ひとり親世帯へのサポートも充実しています。
しかし、それでも決して余裕のある生活が送れるわけでははありません。もしもの時に備え、必要に応じて民間の保険で保障を補う行動をとりましょう。