
認知症のある家族が同じ物を何度も買う、入浴を嫌がる――そんな行動を前に「なぜ?」と戸惑っていませんか。『認知症世界の歩き方』は、日常の困りごとを13の旅の物語として描き、外からは見えにくい本人の感覚や認知の世界を考える本です。
この記事では、本書の要約や印象に残った点、実践へのつなげ方、似た本との違いまで整理します。読みやすさや注意点も含めて確認することで、自分に合う一冊か、今読むべきかを購入前に判断しやすくなります。
-
-
介護について理解が深まる初心者におすすめの本ランキング 10選!【2026年版】
介護は、ある日突然わが身に降りかかることもあれば、少しずつ現実味を帯びてくることもあります。 いざ向き合おうとすると、「何から知ればいいの?」「制度やお金のことはどうなっているの?」と戸惑う方も多いの ...
続きを見る
結論|この本はどんな人に向いている?

この本をひとことで言うと
『認知症世界の歩き方』は、周囲からは理解しにくい行動を、認知症のある本人が見たり感じたりしている世界から捉え直し、接し方や生活環境を考えるための入門書です。
認知症の症状名を覚えることよりも、「なぜ同じものを何度も買うのか」「なぜ入浴や着替えを嫌がるのか」といった日常の疑問を、記憶、五感、時間・空間認識、注意などの変化から理解することに重点が置かれています。
向いている人
特に向いているのは、認知症のある家族の行動に戸惑い、「なぜ同じものを何度も買うのか」「なぜ入浴や着替えを嫌がるのか」と感じている人です。記憶だけでなく、五感、時間や空間の認識、注意、計算など、さまざまな認知機能が生活に関わっていることを、旅の物語を通して学べます。
専門用語の多い認知症本では理解しづらかった人にも適しています。前半では13のストーリーから本人が経験し得る世界を知り、後半では相談、仲間づくり、生活空間の調整、スマートフォンの活用、生きがいや社会参加へと話が進みます。そのため、認知症について初めて学ぶ人だけでなく、医療・介護・福祉、接客、行政、地域活動などで認知症のある人と関わる人にも判断材料を与えてくれるでしょう。
向いていない人
一方、疾患ごとの診断基準や病理、薬物療法、介助手順、介護保険などの制度を詳しく調べたい人には、これ一冊では足りません。本書は個別の症状を診断する医学書でも、紹介された工夫によって必ず問題が解決することを保証する介護マニュアルでもないためです。
また、13の物語は認知症のある人全員に共通する症状一覧ではありません。同じ行動でも背景は一人ひとり異なるため、具体的な対応を一つに決めたい人よりも、本人の状態や環境を考えるための入口を求める人に向いています。
先に結論(買う価値はある?)
認知症のある人の気持ちや行動を、本人側の視点から理解したいなら、読む価値のある一冊です。約100名の本人の語りをもとに、理解しにくい行動の背景を身近な生活場面へ落とし込んでいるため、知識だけではつかみにくい「本人にとっての困難」を想像しやすくなっています。
本書を読めば、すべての行動の原因がわかるわけではありません。しかし、行動をすぐに問題視するのではなく、記憶や感覚、環境など複数の可能性を考える出発点になります。認知症について最初の一冊を探している人や、家族とのすれ違いを少しでも減らしたい人には、選ぶ意味があるでしょう。
要約|この本の内容を3分でつかむ

重要ポイント3つ
1つ目のポイントは、認知症のある人の行動には、本人の側から見なければ気づきにくい理由があることです。同じものを繰り返し買う、入浴を嫌がる、会計に時間がかかるといった行動も、単なる物忘れや拒否とは限りません。記憶、感覚、時間や空間の認識、注意、計算など、複数の認知機能が関係している可能性があります。
2つ目は、同じ行動でも原因は一人ひとり異なるという点です。入浴を嫌がる場合だけでも、お湯の温度や感触が不快に感じられる、服の着脱が難しい、すでに入浴したと思っているなど、さまざまな背景が考えられます。そのため、行動だけを見て一律に対応するのではなく、本人の心身の状態や生活環境まで考える必要があります。
3つ目は、理解したことを暮らしの工夫へつなげていることです。前半では、記憶、五感、時間・空間、注意・手続きに関する困りごとを、13の旅の物語として紹介します。後半では、専門職への相談、仲間づくり、生活空間の調整、サインやスマートフォンの活用、生きがいや休息、社会参加へと話を進めています。
著者が一番伝えたいこと
本書全体を貫いているのは、認知症のある人の行動を表面だけで判断せず、その人には何が見え、どのような困難が起きているのかを考えてほしいという主張です。本人が困りごとをうまく説明できず、家族や支援者も理由を理解できない状態が、双方のすれ違いや生きづらさにつながります。
だからこそ、病気や症状だけを見るのではなく、生活を送る一人の人として向き合う必要があります。認知症の人を受け身の介護対象にせず、相談し、仲間とつながり、役割を持ち、自分の経験を伝える主体として扱っている点にも、この考え方が表れています。
読むと得られること
読み終えたあとに変わるのは、認知症のある人の行動に対する問いの立て方です。「どうしてそんなことをするのか」と外側から評価するのではなく、「本人は何に困っているのか」「何が見えにくく、判断しにくくなっているのか」と考えやすくなります。認知症は物忘れだけではなく、普段意識せずに行っている知覚、解釈、判断、手続きにも関係することがわかります。
さらに、困りごとを本人や家族だけで抱え込まず、専門職や周囲の人に相談する、五感への負担を減らす、物を見つけやすくする、予定や連絡を道具で補うといった工夫も検討できるようになります。ただし、本書は個別の原因を診断する医学書ではありません。すべての人に同じ方法を当てはめるのではなく、一人ひとりに合う関わり方を考えるための入口として役立つ本です。
内容の全体像|章(目次)の流れと読みどころ

全体の設計(章の流れをざっくり)
本書は、認知症についての知識を先に覚えさせるのではなく、まず本人が経験している可能性のある世界を知り、その後に暮らしの工夫へ進む構成です。冒頭では、本人が困りごとを説明しにくく、周囲も行動の理由を理解できないというすれ違いを提示します。
PART 1では、認知症に伴う生活上の困難を13の旅行記として描きます。記憶だけでなく、五感、時間・空間、注意・手続きへと視野を広げ、普段は簡単に見える行動にも多くの認知機能が関わっていることを伝える流れです。
PART 2では、理解した内容を実生活へ移します。自分の状態を知ることから始まり、相談相手や仲間をつくり、環境や道具を整え、楽しみや休息を大切にし、最後は経験の発信や社会参加へ進みます。「本人の世界を知る→行動の理由を考える→生活を整える→社会とつながる」という設計です。
大見出し目次(短い目次)
- PART 1
認知症世界の歩き方
「認知症のある人が生きている世界」がわかる13のストーリー - PART 2
認知症とともに生きるための知恵を学ぶ
旅のガイド
各章の要点
PART 1の記憶編では、自分がしたことを忘れる、同じものを繰り返し買う、目的地のないように見える外出をするといった行動を、本人側の体験から捉えます。続く五感編は、人の顔を認識しにくい、床が危険な場所に見える、入浴が不快に感じられるなど、認知症を物忘れだけで考える見方を広げるパートです。
時間・空間編では、火の消し忘れ、着替えの難しさ、道に迷うことの背景を扱います。注意・手続き編では、会話に集中できない状態や、会計が記憶・計算・注意などを同時に求める複雑な行為であることを示し、後半の生活支援へ橋を架けます。
PART 2の前半では、本人の状態や個人差を理解し、専門職や当事者仲間とつながる準備をします。中心となる環境調整のパートでは、五感への負担、物の配置、目印、スマートフォン、生活リズムまで具体化。終盤は、支援だけに話を限定せず、楽しみ、休息、生きがい、役割、経験の発信へと視野を広げます。
忙しい人が先に読むならここ
最初に冒頭を読み、認知機能と生活上の困難の関係を押さえてください。次に「七変化温泉」を読むと、一つの行動にも複数の理由があり得るという本書の重要な考え方がわかります。
続いて「カイケイの壁」を読むと、普段は簡単に見える支払いに、複数の認知機能が必要だと理解できます。その後、PART 2の環境調整を扱う部分へ進めば、本人の行動を止めるだけでなく、物の置き方や目印、道具によって暮らしを支えるという実践的な流れまでつかめます。
感想|読んで印象に残ったことと注意点

特に印象に残ったポイント
最も印象に残ったのは、認知症のある人の行動を、外から見える結果だけで判断しないという考え方です。同じものを何度も買う、入浴したがらない、レジでの支払いに時間がかかるといった行動も、本人の側には周囲から見えにくい困難や理由があるのかもしれません。「なぜそんなことをするのか」ではなく、「本人は何に困っているのか」と問い直すことが、本書を読んで残った大きな変化でした。
特に、認知症を物忘れだけで説明していない点が印象的です。「七変化温泉」では、入浴を嫌がる背景に温度や皮膚の感覚、着替えの難しさ、時間や記憶の認識などが関係し得ることを扱います。「カイケイの壁」では、会計という日常的な行為にも、記憶、計算、注意、空間認識などが同時に必要になることが示されます。普段は簡単に見える行動が、いくつもの認知機能によって成り立っているとわかり、本人の戸惑いを具体的に想像しやすくなりました。
また、前半の13の物語だけで終わらず、後半で相談、仲間づくり、環境調整、生きがい、休息、発信へ進む構成にも意味があります。本人を単に支援される側として扱うのではなく、できることや役割を持ち、社会とつながる存在として描いているためです。症状を理解する本というより、本人と周囲が生活をどう組み直すかまで考える本として受け取りました。
すぐ試したくなったこと
読後にまず試したくなったのは、理解しにくい行動があったとき、すぐに止めたり注意したりする前に、その理由を考えることです。本書では、同じ行動でも原因が一つとは限らず、本人の認知機能だけでなく、身体の状態や生活習慣、周囲の環境も関係すると説明されます。対応を決める前に本人が何に困っているのかを考えるだけでも、関わり方は変わりそうだと感じました。
生活空間の見直しも、取り入れてみたい考え方です。物を見つけやすく置く、混乱を生むものを減らす、サインや目印を工夫する、光や音、温度などの負担を確認する。本書がこうした工夫を示すのは、本人の行動を制限するより、生活する環境の側を変えられる場合があるからです。
さらに、家族だけで抱え込まず、専門職や頼れる人、当事者同士のつながりを探すことも重要だと受け止めました。環境調整だけでなく、相談、道具の活用、生きがいや役割まで視野に入れることで、認知症のある人の生活を部分的な介助だけで捉えずに済みます。
読んで気になった点
注意したいのは、13の物語を、すべての認知症のある人に共通する体験として受け取らないことです。本書の物語は、本人の世界を想像するための入口としてわかりやすい一方、「本人の頭の中をそのまま再現したもの」と考えると、本書が重視する個人差を見落としてしまいます。同じ行動に複数の背景があり得るという前提を保ちながら読む必要があります。
また、旅行記形式のわかりやすさを期待して手に取ると、後半で扱われる範囲の広さに少し印象の違いを感じる人もいるかもしれません。生活環境だけでなく、資金計画、休息、生きがい、発信、社会参加まで話が広がるため、症状別の対処法だけを短く知りたい人には目的が異なります。個別の原因を判断する医学書や、決まった介助手順を示す本ではなく、本人の視点から生活全体を考え直すための本として読むのが合っています。
実践編|この本を読んだあと、どう行動する?

今日からできること
本書を読んだあとに大切なのは、本人を変えようとする前に、行動の背景と生活環境を見直すことです。すべてを一度に実行せず、身近な場面から一つ選んで試してみましょう。
- 気になる行動が起きてもすぐに注意せず、本人が何に困っているのかを考える。
- もの忘れだけで判断せず、感覚、時間認識、身体機能、周囲の情報量も確認する。
- 本人に負担の少ない聞き方で、困っていることや不快に感じることを尋ねる。
- できないことだけでなく、一人でできることや手助けがあればできることも確認する。
- よく使う物が見えにくくなっていないか、本人と一緒に家の中を見直す。
- 場所や手順が分かりにくい所に、目印や短い表示を加えられないか考える。
- 家族だけで抱え込まず、相談できる専門職や支援者を一人確認しておく。
- スマートフォンなど、記憶や手順を補える使い慣れた道具がないか検討する。
- 本人が楽しめること、続けたい役割、休みたい時間について話してみる。
最初は、繰り返し起きている行動を一つだけ選びましょう。原因を当てることより、本人の感じ方と周囲の環境を丁寧に確かめることが出発点です。
1週間で試すならこうする
Day1:気になる場面を一つ決める
買い物、入浴、着替え、会計などから、本人と周囲のすれ違いが起きやすい場面を一つだけ選びます。まずは解決しようとせず、いつ、どこで、何が起きたかを整理します。
Day2:本人側から場面を考える
記憶だけで決めつけず、見え方、音、温度、時間感覚、手順の多さなど、本人の負担になっている可能性を考えます。可能であれば、何が嫌だったか、どこが難しかったかを本人にも確認します。
Day3:できる部分を見つける
一連の行動を細かく分け、本人が一人でできる部分と、助けが必要な部分を整理します。すべてを代わりに行うのではなく、残せる力に目を向けます。
Day4:環境を一つだけ変える
物を見える位置へ移す、不要な物を減らす、目印を付けるなど、負担を減らせそうな変更を一つ試します。一度に複数を変えず、本人の反応を確認できる範囲にとどめます。
Day5:道具で補えることを考える
予定、連絡、買い物などで困っている場合は、リストや使い慣れたスマートフォンなどで補助できないか検討します。本人が使いにくい方法を無理に増やさないことも大切です。
Day6:一人で抱えない形をつくる
家族や支援者と、本人が困っている場面と試した工夫を共有します。必要に応じて、専門職や当事者同士のつながりへ相談できるよう準備します。
Day7:続ける工夫を一つ選ぶ
本人の負担が減ったか、できることを奪っていないかを振り返ります。効果がありそうな工夫だけを残し、合わなかったものは元に戻します。
つまずきやすい点と対策
最初につまずきやすいのは、本書に登場した理由を目の前の人にもそのまま当てはめてしまうことです。同じ行動でも背景は異なるため、原因を決めつけず、本人への確認と観察から始めます。考えた理由は結論ではなく、環境を見直すための仮説として扱うのが安全です。
次に起こりやすいのが、良かれと思って生活環境を一度に変えてしまうことです。物の配置、目印、道具をまとめて変更すると、本人に合っていたものまで失われる可能性があります。まず一つだけ変え、本人の様子を確かめてから次へ進みます。
もう一つは、安全を優先するあまり、本人ができることまで代わりに行ってしまうことです。困っている工程だけを補い、本人が続けられる部分は残します。家族だけで判断が難しい場合は抱え込まず、具体的な場面を整理したうえで専門職や頼れる人に相談することが大切です。
比較|似ている本とどう違う?

まず違いを一覧で整理
3冊はいずれも認知症を本人の側から捉える本ですが、入口が異なります。『認知症世界の歩き方』は複数の本人の語りを旅行記風に整理した入門書、『認知症の私から見える社会』は一人の当事者による経験と社会への提言、『認知症世界の歩き方 実践編』は理解した視点を対話や環境改善へ移すための本です。
| 本 | 重心 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 『認知症世界の歩き方』 | 13の物語による本人視点の理解 | 認知症を生活場面から初めて学ぶ人 |
| 『認知症の私から見える社会』 | 若年性認知症の当事者による経験と社会への提言 | 一人の本人の声を直接受け取りたい人 |
| 『認知症世界の歩き方 実践編』 | 対話と生活環境の改善 | 理解を具体的な支援へつなげたい人 |
『認知症の私から見える社会』との違い
『認知症世界の歩き方』は、約100名の本人へのインタビューをもとに、記憶や五感、時間・空間認識、注意などの変化を13の旅行記風ストーリーへ再構成しています。複数の体験から、認知症のある人が日常で直面し得る困難を広く理解する本です。一方、『認知症の私から見える社会』は、若年性認知症の当事者本人が、診断後の生活や社会のあり方について直接語ることに重心があります。
認知症について専門用語を避けながら全体像をつかみ、家族の行動を本人側から考え直したい人には『認知症世界の歩き方』が合います。一人の当事者が経験してきたことや、本人の立場から見える社会の課題をより直接的に知りたい人には、『認知症の私から見える社会』が選びやすいでしょう。
『認知症世界の歩き方 実践編』との違い
『認知症世界の歩き方』は、まず本人に世界がどのように見え、なぜ生活上の困難が生じるのかを理解するための入口です。後半には環境調整や相談などの知恵もありますが、中心にあるのは、周囲から不可解に見える行動の背景を想像することです。『認知症世界の歩き方 実践編』は、その視点を引き継ぎ、具体的な生活ケース、対話、生活環境の改善方法へ進みます。
本人視点の基本を身につけ、認知症をひとくくりにしない考え方から学びたい人は、先に本書を読むと理解しやすくなります。すでに本人の感じ方をある程度理解しており、家族や支援者との対話、住環境の工夫をより具体的に考えたい人には『実践編』が向いています。
迷ったらどれを選ぶべき?
- 本人に見えている世界を広く理解したい人:『認知症世界の歩き方』
- 当事者本人の経験と社会への提言を読みたい人:『認知症の私から見える社会』
- 対話や生活環境の改善を具体化したい人:『認知症世界の歩き方 実践編』
認知症について初めて学ぶ人や、家族の行動をもの忘れや頑固さだけで説明してよいのか迷っている人には、『認知症世界の歩き方』が最も入りやすい一冊です。まず見方を変え、その後に当事者個人の語りや具体的な実践へ進みたい人にも、出発点として選びやすいでしょう。
著者はどんな人?|この本の信頼性を確認する

著者プロフィール
筧 裕介氏は1975年生まれ。一橋大学社会学部を卒業後、東京大学大学院工学系研究科を修了し、工学博士を取得しています。特定非営利活動法人イシュープラスデザインの代表を務め、2008年から社会課題の解決を目指すデザインの研究と実践に取り組んできました。2017年からは認知症未来共創ハブの設立メンバーとして、認知症のある人が暮らしやすい社会づくりにも携わっています。
著者の経験が本書にどう活きているか
筧氏が認知症のある人の暮らしやすさを社会や環境の側から考えてきた経験は、本書の設計に反映されています。『認知症世界の歩き方』は、病気や症状だけを説明するのではなく、本人が日常で何に困っているのかを起点に、物の配置や情報量、住環境、周囲との関係まで扱う本です。
また、本人の語りを13の旅行記風ストーリーへ整理し、専門知識のない読者にも伝わる形にしている点には、社会課題を分かりやすく可視化するソーシャルデザインの視点が表れています。本書の信頼性は、筧氏個人の経験談だけではなく、認知症のある約100名へのインタビューを基礎に、本人視点の生活課題を構成している点にもあります。
よくある質問(FAQ)

要約だけ読めば十分?
本の大枠を知りたい人や、購入するか判断したい人は、要約だけでも中心的な主張をつかめます。本人の行動を表面だけで判断せず、記憶や感覚、時間認識、環境など複数の背景から考える本だと分かれば、目的に合うかは判断しやすいでしょう。
ただし、家族への接し方や生活環境の見直しに活かしたい人は、本文まで読む必要があります。旅行記風の13の物語を通して本人の感じ方を想像し、後半の相談、環境調整、道具の活用、役割や休息まで読むことで、理解を具体的な行動へつなげられます。
初心者でも読める?
認知症について初めて学ぶ人にも読みやすい本です。医療や介護の専門用語を中心に説明するのではなく、買い物、入浴、着替え、会話、会計などの身近な場面を、旅の物語として理解できるようにしています。
前提知識は必要ありませんが、決まった介助手順だけを素早く知りたい人には、扱う範囲が広く感じられる可能性があります。認知症を物忘れだけで捉えず、本人の見え方や感じ方から学びたいという関心があれば、内容に入りやすいでしょう。
どこから読むべき?
基本的には、前半から後半へ順番に読むのがおすすめです。本人が経験し得る世界を知り、行動の理由を考えたあと、生活環境や周囲との関係を整える流れで構成されているためです。
時間がない場合は、最初に認知機能の基本説明を読み、その後に自分が気になる生活場面を扱った物語へ進みます。入浴への抵抗が気になるなら「七変化温泉」、支払いの難しさを知りたいなら「カイケイの壁」を読み、最後に後半の環境調整を扱うパートへ進むと、本書の考え方と使い方を短時間でつかめます。
読む前に注意点はある?
13の物語や44の心身機能の整理は、すべての認知症の人に共通する診断基準ではありません。似た行動があっても、その原因は感覚、記憶、身体状態、生活歴、性格、住環境などによって異なるため、物語だけで本人の状態を決めつけないことが大切です。
また、本書は原因疾患や薬物治療を詳しく解説する医学書でも、個別の介護手順を網羅したマニュアルでもありません。本人の生活世界を想像し、接し方や環境を見直すための入門書として読むと、期待とのずれが少なくなります。
まとめ|結局、この本を読む価値はある?

この本の価値を3つで言うと
1つ目の価値は、認知症のある人を見る立ち位置が変わることです。同じものを何度も買う、入浴を嫌がる、道に迷うといった行動を、もの忘れや頑固さだけで片づけず、本人には何が見え、何が負担になっているのかを考え直せます。行動を正す前に、その人が困っている理由を探る視点を得られる本です。
2つ目の価値は、理解を暮らしの見直しへつなげられることです。必要な物を見える場所へ置く、表示や目印を工夫する、本人のできることと難しいことを共有するなど、本人だけに変化を求めない発想が示されています。家族や支援者が、禁止や制限以外の対応を考えやすくなります。
3つ目の価値は、本人の生活世界を初心者にも想像しやすい形で伝えていることです。約100名の本人の語りをもとにした13の旅行記風ストーリーによって、記憶だけでなく、五感、時間・空間認識、注意などの変化を身近な生活場面から理解できます。ただし、物語や心身機能の整理は診断基準ではなく、一人ひとりを理解するための手がかりとして読むことが大切です。
この本をおすすめできる人・合わない人
認知症のある家族の行動が理解できず、接し方に悩んでいる人にはおすすめできます。認知症について初めて学ぶ人や、医学・介護の言葉だけでは本人の日常を想像しにくい人、本人中心の介護や生活環境づくりに関わる人にも向いています。
一方、原因疾患、診断基準、薬物治療を詳しく学びたい人や、状況別の介護手順を網羅したマニュアルを求める人は、期待とずれる可能性があります。本書は正解を一つに決める本ではなく、目の前の人に何が起きているのかを考える入口として読む本です。
読むならどう活かす?
最初に持ち帰りたいのは、理解しにくい行動が起きたときに「どう止めるか」ではなく、「本人は何に困っているのか」と考える姿勢です。記憶だけで判断せず、感覚、時間認識、身体機能、周囲の情報量、物の配置などを分けて考えてみてください。
今日できる最初の一歩は、気になっている行動を一つ選び、その場面の環境を見直すことです。原因を決めつけず、本人に尋ねられることは尋ね、必要であれば専門職や周囲の人へ相談する。その小さな確認から、本書の考え方を生活へ移せます。
次に読むならこの本
- 『認知症世界の歩き方 実践編』:本人視点の理解を、対話や生活ケース、環境づくりへ発展させたいときに読む本
- 『認知症の私から見える社会』:一人の当事者が直接語る経験と社会への提言に触れたいときに読む本
- 『私の脳で起こったこと』:レビー小体型認知症に伴う体験の変化を、当事者の日記と自己観察から知りたいときに読む本
介護について理解が深まるおすすめの書籍

介護について理解が深まるおすすめ書籍です。
本の「内容・感想」を紹介しています。
- 介護について理解が深まる初心者におすすめの本ランキング
- 突然の介護で困らない! 親の介護がすべてわかる本~高齢の親を取り巻く問題で悩まない~改訂第2版
- 親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版
- プロとして知っておきたい!介護保険のしくみと使い方 : ケアマネ・相談援助職必携 2024-2027年対応版
- 読むだけで介護がラクになる本
- ビジネスパーソンが介護離職をしてはいけないこれだけの理由
- 介護離職しない! 介護で仕事を辞めないための本 お金・制度・休み方がよくわかる
- 完全図解 介護に必要な 医療と薬の全知識
- 高齢者施設 お金・選び方・入居の流れがわかる本 第3版
- 要介護認定調査の評価・判断ポイントがわかる本
- 認知症世界の歩き方