この記事では、「介護料の支給」について解説していきます。
日本では、自動車事故対策センターにおいて、自動車事故により頭部又は脊髄に損傷を受け、治療を行ったにもかかわらず、寝たきりの状態で、常時の介護を必要とする者を抱える家族の負担を軽減すらための制度が存在します。
それが「介護料の支給」です。
この記事を読めば、介護料の支給の「対象者」「支給額」などを知ることができます。
介護料の支給とは
介護料は、自動車事故を原因として、「脳」、「脊髄」または「胸腹部臓器」を損傷し、重度の後遺障害者を持つため、日常活動作について「常時」または「随時」の介護が必要となった方に支給されます。
対象者
対象者は脳、脊髄または胸腹部臓器を損傷し、下記のいずれかに該当する人です。
- 自賠責保険等による後遺障害等級(下表:介護料の支給対象となる後遺障害等級)のいずれかに認定された人
- 自損事故等により、自賠責保険等において後遺障害等級が認定されていない人(自賠責保険等の後遺障害認定通知書を紛失した人を含む)のうち、上記1.と同程度の後遺障害があると認められる人で事故後18ヶ月以上が経過し症状が固定したと認められる人
支給額
その月に介護に要した費用(訪問介護、介護用品購入、消耗品の購入等)の額に応じて、受給資格種別ごとに月額で支給。
なお、介護に要した費用が下限額に満たない場合には下限額が支給されます。
障害区分 | 下限額・上限額 |
特Ⅰ種(最重度) | 85,310円~211,530円 |
Ⅰ種(常時要介護) | 72,990円~166,950円 |
Ⅱ種(随時要介護) | 36,500円~83,480円 |
支払い月
支払い月は、毎年3月、6月、9月及び12月の年4回で、各支給月前の3ヵ月分をまとめて支給されます。
短期入院・入所費用助成費
受給資格の認定を受けた人が、治療および養護を受けることや家族のレスパイト等を目的として病院等に短期間の滞在(原則として1回の入院が2日以上14日以内)をした場合には、1回の入院(入所)ごとに、次の費用について、年間45万円以内かつ年間45日以内の範囲内で支給されます。
- 入退院(所)時の患者移送費として自己負担した額
- 室料差額および食事負担金に要する費用として自己負担した額(1日当たりに換算にして1万円が上限)
- 短期入院(所)利用時のヘルパー等の付き添いに要した費用として自己負担した額
支給期間
独立行政法人自動車事故対策機構の支所にて申請受付のあった日の属する月から、受給資格を失った日の属する月まで。
支給対象となるサービス
在宅にて介護を受けている方が、下記のサービスを受けたときには、当該サービスを行った事業者ごとの証明(領収証を含む)を提出することにより、介護料の上限額までの範囲内で支給がされます。
ただし、親族によるサービス提供は介護料の支給対象とはなりません。(友人・知人によるサービス提供は、個人事業者として有料で提供される場合のみ支給の対象となります。)
- ホームヘルプサービス
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- デイサービス
支給対象となる介護用品
在宅にて介護を受けている方が、下記の介護用品を購入、レンタル又は修理(交換)したときには、当該購入先等の事業者ごとの証明(領収証を含む)を提出することにより、介護料の上限額までの範囲内で支給を受けることができます。
なお、有料オプション等対象外となるものもあるので、請求を検討する際は、事前にお近くの支所又は主管支所で確認することをお勧めします。
品目 | 対象となる費用 |
介護用 ベッド |
本体、サイドレール又はサイドサポート、マットレス、介助バー及び付属テーブルの購入並びに修理(交換)に要する費用 |
介護用 いす |
自走式標準型車いす、普通型電動車いす及び介助用標準型車いす(浴用いすその他の特殊型いすを含み、競技用車いすを除く)及び固定ベルト、バックサポート、サイドガード等補助具の購入並びに修理(交換)に要する費用 |
褥そう 予防用具 |
水、エア、ゲル、シリコン、ウレタン等からなるマット類及びクッション類並びにカバー及びシーツであって、体圧を分散し圧迫部位への圧力を減ずることを目的とするものの購入並びに修理(交換)に要する費用 |
吸引器等 | 吸引器(痰吸引器を含む)及び吸入器(ネプライザー)の購入並びに修理(交換)に要する費用 |
特殊尿器 | 尿が自動的に吸引されるもので要介護者又は介護者が容易に使用し得るものの購入並びに修理(交換)に要する費用 |
パルスオキシメーター | 動脈血酸素飽和度(SpO2)及び脈拍数を測定するための機器の購入並びに修理(交換)に要する費用 |
非接触体温計 | 介護における感染症予防対策等のための赤外線(電磁波)により測定する非接触の体温計の購入に要する費用 |
移動用リフト | 本体及びつり具。床走行式、固定式若しくは据置式で、身体をつり上げ又は体重を支える構造により、自力での移動が困難な者の寝台と車椅子との間等の移動を補助する機能を有するものの、購入並びに修理(交換)に要する費用。ただし、取付けに工事を伴うものの購入及び工事に要する費用を除く |
スロープ | 段差解消のためのものの購入並びに修理(交換)に要する費用。ただし、取付けに工事を伴うものの購入及び工事に要する費用を除く |
スライディングボード | ベッド及び車いすの相互移乗のためのものの購入並びに修理(交換)に要する費用 |
スライディングシート | ベッド上での体位変換及び車いすとの相互移乗のためのものの購入並びに修理(交換)に要する費用 |
消耗品 | 紙オムツ、尿とりパッド、導尿カテーテル、バルーンカテーテル、痰吸引用カテーテル、コンドーム型カテーテル、レッグバッグ、ウロバッグ、滅菌ガーゼ、手袋(使い捨て用)及び褥瘡用ドレッシング剤の購入に要する費用。 介護における感染症予防対策等のための消毒液・除菌液、手指消毒・除菌剤、消毒・除菌用ウェットティッシュ、消毒・除菌ハンドソープ及び医療用マスク(不織布マスク)の購入に要する費用 |
手続き
介護料受給資格認定申請書に自賠責保険等の後遺障害等級認定通知書(自損事故等により自賠責保険等による後遺障害等級の認定を受けていない人は自動車安全運転センターで発行する交通事故証明書、事故時の診断書、重度後遺障害診断書)、対象者と申請者の続柄と扶養状態のわかる戸籍謄本および住民票、所得証明書、誓約書等を添付し、独立行政法人自動車事故対策機構各支所へ提出します。
問い合わせ先
独立行政法人自動車事故対策機構各支所。
介護料の支給制限
受給資格者が独立行政法人自動車事故対策機構で設置した療護施設等に入院したとき、労働者災害補償保険法による介護(補償)給付を受けたとき、介護保険法による介護給付を受けたとき、他の法令による重度の後遺障害者を収容する施設に入所したとき等は受給資格が喪失します。
また、現在それらの給付を受けている場合や入所している場合は申請できません。
なお、受給資格者の主たる生計維持者の合計所得金額が1,000万円を超えるときは、介護料は支給されません。
介護料の支給対象となる後遺障害等級
種別 | 平成14年4月1日以降の事故 | 平成14年3月31日以前の事故 | |
最重度 | 特Ⅰ種 | 常時要介護のうち、損傷部位ごとに次の要件の全てに該当 〈脳損傷〉 ・自力移動が不可能である ・自力摂取が不可能である ・し尿失禁状態にある ・眼球はかろうじて物を追うこともあるが、認識はできない ・声を出しても意味のある発言はまったく不可能である ・眼を開け、手を握れという簡単な命令にはかろうじて応ずることもあるが、それ以上の意思のある疎通は不可能である 〈脊髄損傷〉 ・自力移動が不可能である ・自力摂取が不可能である ・し尿失禁状態にある ・人口介添呼吸が必要な状態である |
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常時 要介護 |
Ⅰ種 | 自賠法施行令別表1の等級が「第1級1号」または「第2級2号」 | 自賠法施行令別表1の等級が「第1級3号」または「第1級4号」 |
随時 要介護 |
Ⅱ種 | 自賠法施行令別表1の等級が「第2級1号」または「第2級2号」 | 自賠法施行令別表1の等級が「第2級3号」または「第2級4号」 |
※「自賠法」とは「自動車損害賠償保障法」のことです。