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雇用保険の保険料が2022年にも引き上げへ

雇用保険の保険料が2022年にも引き上げへ

厚生労働省は雇用保険の保険料率引き上げる検討に入りました。

新型コロナウイルスを受けて雇用安定の事業の一部である雇用調整助成金の給付が急増したことが原因です。


企業が負担する雇用安定・能力開発の料率は現在は賃金総額の0・3%ですが、本来の0・35%を目安に上がります。


雇用保険の保険料が2022年にも引き上げへ

雇用保険の保険料が2022年にも引き上げへ

厚生労働省は雇用保険の保険料率を引き上げる検討に入りました。

新型コロナウイルス感染拡大で雇用調整助成金の給付が増え、財源が逼迫しているためです。


国費投入のほか、企業や働く人の負担も増えます。

フリーランスの働き手の拡大など、働き方が多様化する中で財源の確保策とともに、雇用の安全網をどういう中身にしていくかも課題となっています。


雇用保険とは

雇用保険は仕事を失った人が生活に困らないようにする失業者など向けと、雇用安定・能力開発の2つの事業に大別されます。

企業などからの保険料収入を財源にし、好景気の際の積立金も使って給付する仕組みです。


原因はコロナによって雇用調整助成金の給付が急増

原因はコロナによって雇用調整助成金の給付が急増

雇用保険の保険料を引き上げる背景には、新型コロナウイルスを受けて雇用安定の事業の一部である雇調金の給付が急増したことがあります。

企業が労働者に支払う休業手当を助成するもので、コロナを受けて支給要件緩和や助成拡充の特例を設けました。

2020年3月以降の支給決定額は4兆円超にも膨れ上がりました。


財源が不足し国の一般会計から約1兆1千億円を繰り入れ、失業者向け事業の積立金からも約1兆7千億円を借りました。

この積立金はコロナ前の19年度に約4兆5千億円でしたが、21年度に約1700億円に減る見通しです。


積立金に余裕があったため16年度以降、保険料率を下げていますが、健全化に向けて22年度にも引き上げる予定です。

企業が負担する雇用安定・能力開発の料率は現在は賃金総額の0・3%ですが、本来の0・35%を目安に上げます。

コロナが落ち着けば年間給付を賄える可能性があります。


失業者向け事業の料率は労使折半

失業者向け事業の料率は労使折半

失業者向け事業の料率は労使折半で本来1・2%ですが、現在は0・6%にしています。

保険料収入は0・1%の引き上げで年2千億円増え、1・2%の場合の労使の負担は1兆円規模で増します。

月収30万円の人だと保険料は900円から1800円に増える計算になります。


上げ幅は給付の対象者数や経済状況を勘案して決めます。

負担増になるだけに雇用保険全体の役割の見直しも課題となります。


雇用調整助成金は雇用維持に一定の効果がある

雇用調整助成金は雇用維持に一定の効果がある

コロナ下で雇調金は雇用維持に一定の効果が出ていますが、休業手当を補う内容のため、人手があまる業界に働き手がとどまりかねません。

長引けば労働市場の調整機能がゆがむ面もあります。

人手が必要な成長分野への移動が起きるよう学び直しの機会を増やす必要があります。


雇用保険の対象にならないフリーランスの働き手の経済危機時の対応をどうするかなど、日本社会で働き方が変わる中、雇用のセーフティーネットを巡る課題は多いです。


雇用安定・能力開発の財源は誰が負担するべきなのか

雇用安定・能力開発の財源は誰が負担するべきなのか

財源を巡っても、雇用安定・能力開発の財源は企業のみが負担しており、経団連などは国の一般会計の負担拡充を求めてきました。

英国やドイツは失業給付を労使の保険料収入でまかなっています。

欧州では雇用支援の多くを国費で支える国もあります。


日本政府も国費投入などで21年度は雇調金で約1兆2千億円分を確保しますが、4月からの約4カ月で支給額は8千億円を超えました。

この規模の支出が続くと21年度末までの財源が足りず、緊急措置として一般会計からの追加投入を視野に入れます。


料率見直しは労使代表者と有識者らでつくる労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で秋にも具体的な議論に着手します。

22年の通常国会にも雇用保険法改正案を提出する見通しです。



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