育児休業給付の受け取りを延長することを目的に、落選狙いで保育所に入所申請する事例が相次いでいます。
入所ができず休業を続けることが延長の要件のためです。
厚生労働省は復職の意思を確認できるよう新たに申告書の提出を求め、支給を厳格にする方針です。
早ければ2024年中に省令を改正します。
詳しく解説していきます。
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「保育所に落選したいならこの園に申し込んでください」
育休給付を延長したい親の希望を踏まえ、入所したくない意向を示した親に抽選倍率の高い園を紹介している自治体があります。
育休の給付は休業180日目まで賃金の67%を受け取れます。
180日を超えても原則子どもが1歳になるまで賃金の50%を受給できます。
保育所に落選した場合などは、例外として最長2歳まで延ばせます。
この例外規定を利用し、手当を貰おうとするケースが多くなってきています。
育児休業給付の不正受給は簡単
育児休業給付の不正受給の背景には延長手続きが簡略なことがあります。
申請者は保育所に入れなかったときに自治体が発行する「保留通知書」と呼ばれる文書をハローワークに提出するだけです。
働く意思がなくても「保育園に落ちた」との証明だけで給付を受け続けられ、落選狙いで入所を申し込む構図になっています。
2024年に申請書が必要になる
厚労省は給付の延長を申し込む親に詳細な保育所の申し込み内容などを記した申告書を求める方針です。
申請日や入所希望日、保育所名など今の通知書で確認できないことが多い項目を本人に記入してもらいます。
同省の審議会で内容を詰め、早ければ2024年中に省令を改正します。
省令改正後も、一定の周知期間を設けるため、既に受付が始まっている24年4月の入所申請には影響しません。
実効性のある仕組みが求められるます。
申告書があればハローワークは育休給付の延長申請が適切かどうかを判断しやすくなります。
例えば、本来は子どもが1歳になるまでにする保育所への申し込みが、期日に間に合っていない場合などは疑わしいと判断されます。
厚労省は申し込み内容に関する項目に一定の基準を設け、客観的に親が復職する意思があるかを判断する想定です。
提出された申告書が不十分な場合には、保育所を申し込んだ市区町村に事実確認を求めます。
育児休業給付の不正受給は全体の1割超
具体的な件数は不明ですが、ある自治体からは落選を意図した申請が全体の1割超を占めるとの指摘が厚労省にありました。
自治体にとっては業務を圧迫する要因となり、国に改善を要求してきました。
保育所はそもそも働いていたり病気になったりした親が子どもを預ける施設です。
すぐに働く意思がないのに給付の延長目当てで申請が水増しされていれば、本当に保育が必要な子どもの数などを把握できません。
「隠れ待機児童」には不正受給者も含まれる
希望しても保育所などに入れない待機児童の数は4月1日時点で2680人と、5年連続で過去最少を更新しています。
ただ、家に近い特定の園だけを希望して入れなかったといった「隠れ待機児童」も約6万6千人います。
この中には給付延長を目的に延長申請した人数も含まれます。
今回の見直しで本当に保育所を希望する人数をつかみやすくなり、適切な保育所の設置につながります。