災害時にペットと室内で一緒に過ごせる避難所の設置が進みつつあります。
過去の災害では犬や猫などのペット連れが認められず、避難をためらうケースもあったからです。
しかし、同伴は鳴き声などからトラブルにつながることもあります。
東日本大震災から間もなく11年。国はペットの受け入れを自治体に促すとともに、飼い主側にも基本的なしつけや避難時の餌・薬の備えを呼びかけています。
災害時にペットも一緒に避難生活を送れる避難所が増えている
福岡県久留米市は2021年の豪雨の際、ペットと室内で過ごせる避難所を初めて1カ所開設しました。
犬や猫を連れた住民が避難し、テント型のパーテーションの中で一緒に過ごしたといいます。
担当者は「『一緒に過ごせないなら』と避難をためらう人もおり、開設に踏み切った」と話します。
18年夏の西日本豪雨で初めて同様の避難所を設けた岡山県総社市の担当者も「暑い中、ペットを外につないでおくわけにいかなかった」と話します。
「ペットと一緒にいられることは、被災者のストレス緩和にもつながる」といいます。
環境省によると、屋内でペットと同伴できる避難所はまだ少数派ですが、担当者は「『ペットは家族』という認識の高まりを受けた自治体が対応を始めている」としています。
きっかけは東日本大震災
避難所のペット受け入れが進んだきっかけは、東日本大震災の苦い経験です。
震災では一度避難した後に自宅にいるペットを助けに戻り、津波にのまれた人がいました。
福島県内では東京電力福島第1原子力発電所事故で避難が長期化し、置き去りにされたペットが餓死するなどしました。
同県によると、犠牲になったペットは約2500匹と推測されています。
こうした反省を踏まえ、環境省はペットと一緒に避難することを呼びかけてきました。
避難所の玄関にケージを並べる場所を設けるなど、現在では全国の市区町村の約8割が災害時のペット対応を防災計画などで定めています。
福島市も防災計画に「指定避難場所にペットの避難スペースを確保する」と明記。屋外などにケージをまとめて置くなどの対応を想定しています。
そのうえで21年9月、約40カ所のうち1カ所を屋内でペットと過ごせる避難所とすることを決めました。
市担当者は「震災の時のようなことを繰り返してはならない」と話します。
ペットとの避難の課題
ペットとの避難を巡っては課題もあります。
20年9月の台風10号でペット同伴可能な避難所を設けた熊本市では、ペット連れでない避難者から、鳴き声やにおいに関する苦情が寄せられました。
市は21年5月、市内にある動物を扱う専門学校と提携。災害時に飼い主約100人とペット約300匹を一緒に受け入れてもらう協定を結びました。
市担当者は「獣医師もおり、健康管理といった民間のノウハウも生かせる」と期待を寄せます。
環境省は災害時に備え、飼い主向けに必要な対応をまとめたガイドラインを作成しています。
餌や薬の備蓄に加え、ノミやダニを防ぐワクチン接種、むやみにほえないようにするしつけなどを求めています。
担当者は「災害時の対応を自治体に任せるだけではなく、飼い主側にもペットを守る意識を持ってほしい」と話しています。
まとめ
福岡県久留米市は2021年の豪雨の際、ペットと室内で過ごせる避難所を初めて1カ所開設しました。
犬や猫を連れた住民が避難し、テント型のパーテーションの中で一緒に過ごしたといいます。
担当者は「『一緒に過ごせないなら』と避難をためらう人もおり、開設に踏み切った」と話します。
避難所のペット受け入れが進んだきっかけは、東日本大震災の苦い経験です。
震災では一度避難した後に自宅にいるペットを助けに戻り、津波にのまれた人がいました。
ペットとの避難を巡っては課題もあります。
環境省は災害時に備え、飼い主向けに必要な対応をまとめたガイドラインを作成しています。
餌や薬の備蓄に加え、ノミやダニを防ぐワクチン接種、むやみにほえないようにするしつけなどを求めています。