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一定の所得がある75歳以上の医療費の自己負担が2割に

一定の所得がある75歳以上の医療費の自己負担が2割に

今回の法改正によって、一定の所得がある75歳以上の医療費自己負担が2割負担になりました。


これまでは、75歳以上で現役並みの所得のある方は「3割」、

それ以外は「1割」でした。

そこに、新たに「2割」を負担する層ができたのです。


詳細を解説していきます。


一定の所得がある75歳以上の医療費の自己負担が2割に

一定の所得がある75歳以上の医療費の自己負担が2割に

一定の所得がある75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が4日の参院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決、成立しました。


単身世帯は年金を含めて年収200万円以上、複数世帯では合計320万円以上が対象になります。

高齢者に収入に応じた支払いを求めて現役世代の負担を抑制する狙いですが、効果は限定的です。


制度の導入は2022年10月から23年3月の間

田村憲久厚生労働相は2021年6月4日の閣議後の記者会見で「若い人々の負担の伸びを抑えていく目的だ。法律の趣旨、意図を国民に理解してもらいながら周知に努めたい」と述べました。


導入時期は2022年10月から23年3月の間で、今後政令で定めることになります。

外来患者は導入から3年間、1カ月の負担増を3千円以内に抑える激変緩和措置もあります。


激変緩和措置が講じられる

今回は「激変緩和」措置として、2割負担の適用開始から3年間は外来受診の際の負担増加額を最大で月3000円に抑えることになりました。

2割に上げても単純に負担が2倍になるわけではありません。

同省は外来の平均受診回数が現在の年33回から年32・2回になると試算します。


例えば、関節症と高血圧で外来を受診した場合、現在は月5400円負担している人は2割負担により1万800円の負担となります。

月3000円の緩和措置が適用されている間は、負担増となった5400円のうち3000円を超える2400円分が軽減対象となるため、実際の負担額は8400円となる計算です。

出典:日本経済新聞社



法改正による対象者は、約2割にあたる約370万人

75歳以上の「後期高齢者」は国内に約1870万人います。

今は大半の人が1割の窓口負担です。

しかし、今回の改正により、約2割にあたる約370万人は負担が1割から2割に上がることになります。

負担増の対象か否かの線引きは、年金収入を含めた所得の金額です。


対象となる条件

自分が対象かどうかは、単身世帯と75歳以上の人が複数いる世帯で条件が異なります。

単身世帯では、まず年金収入とパートなどによる所得の合計(年収)から各種控除分などを除いた「課税所得」が28万円以上あるかを確認します。

該当する場合、年収が200万円以上あれば負担は2割に上がります。


75歳以上の人が複数いる世帯は、まず最も課税所得の高い人が28万円以上かを確認します。

これに該当し、世帯内の75歳以上の全員の年収の合計が320万円以上なら2割負担となります。


自分の世帯の所得が負担増の基準に該当するか分からない場合は、住んでいる自治体に確認しましょう。

出典:日本経済新聞社



75歳以上の窓口負担は「1割」「2割」「3割」の三段階に

75歳以上の窓口負担は「1割」「2割」「3割」の三段階に

現在、75歳以上の大半は窓口負担が1割です。

現役並みの所得(単身で年収383万円、複数世帯で520万円以上)の人は3割を負担するが全体の7%にすぎません。


今回の改正で、2割負担の層がつくられたことにより、3段階となります。

2割負担となるのは75歳以上の約20%で約370万人が該当します。




高齢者の負担を増やした理由

高齢者の負担を増やした理由

高齢者に負担増を求める背景には、人口の多い団塊の世代が22年から75歳以上になり始めることがあります。


医療費の急増が見込まれ、政府の全世代型社会保障検討会議が20年12月、改革案をまとめました。


後期高齢者医療制度の財源

後期高齢者医療制度の財源は窓口負担を除いて5割を公費で負担し、残り4割は現役世代からの支援金、1割を高齢者の保険料でまかなっています。


75歳以上の人口が増えて医療費が膨らめば現役世代の負担も重くなります。

出典:日本経済新聞社



現役世代からの支援金が急速に膨らむ

厚労省の試算によると2021年度の支援金総額は6.8兆円で、現状のままだと22年度に7.1兆円、25年度に8.1兆円と急速に膨らみます。


現役世代の負担は高まる一方です。


今回の改正だけでは問題解決にならない

今回の改正だけでは問題解決にならない

2割負担を導入しても支援金の軽減効果は25年度で830億円にとどまります。

現役世代の負担を1人あたり年800円軽減するにすぎません。


事業主との折半などもあり、本人の軽減効果は月30円程度と試算されます。

そのため、今夏の法改正で問題解決とはいえず、今後も給付と負担の議論は必要になります。



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