老後の生活を支える公的年金ですが、調べてみて「公的年金だけでは生活をしていくことが出来ない」と印象を持った人は少なくないのではないでしょうか?
老後生活していくには、
- 働いて稼ぐ
- 支出を抑える
- 貯金を切り崩す
などの方法がありますが、他にも公的年金の金額を増やす選択肢もあるのです。
詳しく解説していきます。
公的年金の金額を増やす方法は主に2つ
公的年金の金額を増やす方法は主に下記の2つです。
- 納付する保険料を増やす
- 受給を始める時期を遅らせる
1.納付する保険料を増やす
1つ目は納付する保険料を増やすことです。
老齢年金のうち基礎年金(国民年金)は原則60歳までの加入ですが、会社員や条件を満たすパートなどが対象の厚生年金は70歳まで加入できます。
新たに厚生年金に入って働いたり、働く期間を延ばしたりすれば保険料の納付実績が増え、将来の年金も上乗せされます。
2.受給を始める時期を遅らせる
2つめの方法は受給を始める時期を遅らせることです。
原則65歳からの受給開始を1カ月遅らせるごとに受給額は0.7%増えます。
現在は最大75歳まで繰り下げ可能で、その場合は84%増になります。
増額された年金は終身で受給できます。
「会社員の夫と専業主婦の妻」の年金はどの程度増えるのか
では働き方や受給時期の工夫で年金はどの程度増えるのでしょうか。
まず会社員の夫と専業主婦の妻で、いずれも50歳の場合。
夫が平均年収550万円で60歳まで働き、夫婦で65歳から受給すると世帯の年金額は概算で年270万円になります。
妻が厚生年金に加入して年収150万円で50歳から10年間働くと、妻は年8万円の厚生年金を受給できるようになり、世帯の受給額は年280万円ほどに増えます。
年金をさらに増やすには長く働き、繰り下げ受給を併用するのが有力な選択肢です。
例えば夫婦で65歳まで働き、70歳から受給すれば世帯の受給額は年420万円になります。
税金や社会保険料を除いた手取りベースでは年380万円になり、夫のみが60歳まで働く当初のパターンの手取り年260万円に比べ4割強増えます。
「夫婦とも会社員」の年金はどの程度増えるのか
夫婦とも会社員の世帯でも長く働くことと繰り下げによる増額効果は大きいです。
夫婦で60歳まで働き65歳から受給する場合の世帯の年金額は額面で年340万円、手取りでは320万円です。
65歳まで働き、70歳まで繰り下げれば額面で500万円。
手取りは450万円と4割弱増える計算になります。
「自営業の夫婦」の年金はどの程度増えるのか
厚生年金の受給資格がない自営業の夫婦の場合。
加入する国民年金の受給額を増やすには通常の保険料のほかに、月400円の「付加保険料」を納めることができます。
保険料の半額にあたる200円に納付月数をかけた額が、付加年金として受給できます。
65歳以降に受け取る国民年金に上乗せされます。
自営業の夫婦がそれぞれ例えば50歳から60歳まで10年間付加保険料を払い、65歳から受け取る場合の世帯の年金額は手取りで年160万円。
一般保険料のみに比べ年4.8万円増えることになります。
さらに受給を70歳まで遅らせれば、世帯の手取りは年220万円となります。
自営業者やフリーランス向けの国民年金基金にすでに加入していると付加保険料を払うことができません。
50代から準備することが大切
会社員、自営業を問わず、70歳から年金を受け取るなら受給までの5年間を賄う資金を50代から準備することが重要です。
総務省の「家計調査」によると、65歳以上の夫婦世帯の平均支出は月約26万円。
税なども含む生活費で約1600万円かかる計算です。
その他にも、医療や介護の備えとして800万円程度の資金も見込んでおきたいところです。
夫婦で65歳まで働いたうえで受給開始を75歳まで繰り下げると、世帯の年金額はさらに増加します。
会社員と専業主婦の妻のケースは手取りで年490万円、夫婦で会社員の世帯は560万円となります。
自営業夫婦は290万円です。
ただし75歳時点の平均余命は男性で約12年、女性で約15年。それぞれおおむね87歳と90歳です。
仮に平均余命の年齢で亡くなれば、年金の受給総額が70歳受給開始の場合に比べ少なくなる可能性があります。
実際の受給額は60歳以降の働き方と受給開始時期といった条件で変わってきます。
いくら受け取れるかは年金事務所などで試算してもらうことが可能です。