年を取って一人暮らしになる女性が増えています。
死別や離婚で独身に戻る75歳以上の層が人口に占める割合は2040年に7.4%に達する見通しです。
死別の場合、収入は遺族年金頼みになりがちで相対的貧困率は3割を超えています。
核家族化が進み、経済的な支えになる子どもとの同居が減っています。
貧困が健康をむしばみ、介護など社会保障の負担が膨らむ懸念もあります。
詳しく解説していきます。
メモ
「相対的貧困率」とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の貧困線(中央値の半分)に満たない世帯員の割合のことです。可処分所得とは、所得から所得税、住民税、社会保険料及 び固定資産税を差し引いたものをいいます。
独身になる75歳以上の女性は817万人に達する
寿命の性差や夫婦の年齢差があるため、年を取って一人暮らしになる女性が多いです。
さらに社会全体の高齢化が増加を後押ししています。
死別や離婚で独身になる75歳以上の女性は2030年までの10年間で130万人増え、817万人に達します。
この年代に占める比率は6割に及び、男性の2割を大きく上回っています。
遺族年金が収入の柱 平均月額は8万2千円程度
死別した高齢女性の場合、遺族年金が収入の柱になります。厚生年金だと報酬比例部分の支給は4分の3です。
厚生労働省によると平均月額は8万2千円程度です。月々の収入が生活保護の水準を下回る人も少なくありません。
世帯人数を考慮した可処分所得が一人あたり中央値の半分に満たない相対的貧困の年齢層別の割合を見ると、配偶者と死別した65歳以上の女性は2018年に32%と約30年間で8ポイント上がりました。
男性は23%に留まっています。
相対的貧困の女性は貯蓄も少ないです。
厚労省の国民生活基礎調査によると、75歳以上の単独世帯は500万円以下が過半です。
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核家族化で親族の支えは期待できない
かつては当然視された親族の支えは期待できなくなりつつあります。
子どもと同居している65歳以上の人の割合は2022年に34%と、30年間で23ポイントも下がりました。
一方で一人暮らしの割合は12%から22%に上がっています。
そのため、家族が貧困の防波堤にならなくなってきているのです。
非正規雇用が広がり、親族でも若い層のほうが経済力が低い場合もあります。
団塊ジュニアやそれに続くのは就職氷河期の世代です。
むしろ子どもが親の年金に頼るようなケースが増えることも考えられます。
貧困は負の連鎖を招きかねない
貧困は負の連鎖を招きかねません。
食事をきちんととれずに栄養不足になったり、外出の機会が減って体力の衰えに拍車がかかります。
健康が悪化すれば、介護費の増大につながる懸念もあります。
日本の女性の賃金の中央値は男性より21.3%低い
高リスクの不遇な層が将来さらに拡大すれば、社会経済の活力はそがれてしまいます。
女性の所得を現役時代から高めるための環境整備を整えて、40代後半から50代の男女の賃金格差自体を縮めていくことが重要です。
経済協力開発機構(OECD)によると、2022年に日本の女性の賃金の中央値は男性より21.3%低いことが分かりました。
格差は四半世紀で15ポイント縮みました。
それでも先進国平均の約2倍です。
女性はパートなど非正規雇用が比較的多いです。
正社員でも管理職の比率や勤続年数は男性に水をあけられています。
まとめ
寿命の性差や夫婦の年齢差があるため、年を取って一人暮らしになる女性が多いです。
さらに社会全体の高齢化が増加を後押ししています。
死別や離婚で独身になる75歳以上の女性は2030年までの10年間で130万人増え、817万人に達します。
死別した高齢女性の場合、遺族年金が収入の柱になります。厚生年金だと報酬比例部分の支給は4分の3です。
厚生労働省によると平均月額は8万2千円程度です。
未曽有の超高齢社会の潜在的な貧困層を年金などだけで事後的に支えるのは限界があります。
性別にかかわらず希望に応じて活躍できる社会をつくる地道な改革も求められます。