損害保険大手4社は2024年10月以降、火災保険料を全国平均で10%前後上げることになります。
保険料の引き上げは続いており、直近5年で4回目も行っています。
前回の値上げは2022年10月で、平均11~13%でした。
自然災害の多発や再保険金の増加などにより、火災保険は赤字が続いています。
詳しく解説していきます。
火災保険料が2024年10月から10%値上げ
損保各社で構成する損害保険料率算出機構は2023年6月に保険料の目安となる「参考純率」を全国平均で13%上げると金融庁に届け出ました。
これにともない東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社などが具体的な上げ幅や条件を検討していました。
東京海上日動は10月から保険料を全国平均で9%上げる方針です。
損保ジャパンや三井住友海上、あいおいニッセイは改定率を10%程度にする予定です。
改訂料金の対象は10月以降に新規契約したり、更改を迎えたりした場合になります。
値上げ額は東京都で築浅の戸建て住宅の場合、保険料は年4000円程度増えることになります。
火災保険の収支は13年連続で赤字
火災保険は住居が火災した場合のほか、水災や風災による建物や家財の被害が補償されます。
自然災害の多発で保険金の支払額は高い水準となっています。
大手4社を合算した火災保険の収支は13年連続で赤字が続いています。
これまで各社は収支改善に向けて保険料を断続的に上げてきました。
2015年10月に2~4%、2019年10月に6~7%、2021年1月に6~8%上げました。
2022年10月には2000年以降で最大となる11~13%程度の引き上げを行いました。
今回も前回に続き、10%割前後になります。
火災保険の審査が厳しくなる
保険会社は保険料の引き上げだけでなく、保険引き受けの審査を厳しくするといった対策も始めます。
東京海上日動や損保ジャパンは築40~50年を超える一戸建てを巡り、住宅の劣化度合いによって契約者が一部を自己負担する免責額を設けています。
三井住友海上とあいおいニッセイ同和も古い物件の契約を引き受ける際、物件の確認を徹底しています。
水災補償の料率が浸水のリスクに応じて5段階に分けられる
東京海上日動は床上浸水や家屋の流出といった水害に対応する水災補償の料率を細分化する方針です。
現状はどの地域に住んでいても全国一律の保険料ですが、2024年10月から市区町村ごとに浸水のリスクに応じて5段階に分けます。
10月以降の保険料は地域ごとに現状から5%程度の増減が生じることになり、保険料が最も高い地域は最も安い地域に比べて1.1倍の保険料になります。
水災補償の付帯率は低下している
水災補償は火災保険に任意でつけることができる保険です。
2017年度の付帯率は7割を超えていましたが、2022年度は6割程度まで低下しています。
水害のリスクが低い地域では保険料の負担を抑えようと、保険離れの動きが顕著です。
2023年6月に料率機構が水災補償の保険料を5段階に分ける方針を公表しており、損保ジャパンや三井住友海上、あいおいニッセイも細分化を予定しています。
保険会社が入る再保険金も増えている
保険会社は企業や個人から引き受けたリスクを全て抱えることが難しく、再保険会社に転嫁することでリスクを抑えています。
世界で災害が多発、大規模化し、物価上昇を受けて再保険会社が保険会社に支払う再保険金も増えており、再保険会社の収益も悪化させています。
そのため保険会社が支払う再保険料が上がっていることも、火災保険の赤字の原因になっています。
10月に引き上げた後も火災保険の収支が改善するとは限らず、今後も保険料の値上げは続きそうです。