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転職する際に企業型確定拠出年金を移し忘れる人が1割強

転職する際に企業型確定拠出年金を移し忘れる人が1割強

会社を転職する際に企業年金の資産を移し忘れる人が沢山いることが分かりました。

2022年度末時点の企業型確定拠出年金(DC)元加入者で118万人、資産額は2818億円に上り、いずれも10年間で3倍超に増えました。


老後の生活資金が活用されない状態を解消するため厚生労働省は対策を検討中です。

転職などで加入資格がなくなった後の資金の移し先をあらかじめ決めておく案などが提起されています。


詳しく解説していきます。


企業型確定拠出年金(DC)とは

企業型確定拠出年金(DC)とは

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、多くの場合企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)が自ら年金資産の運用を行う制度です。

「多くの場合掛金は企業が負担してくれますが、運用の結果はあくまで従業員の自己責任」です。

運用成績によって将来受け取れる退職金・年金の額が変動します。

積み立ててきた年金資産を一時金(退職金)、もしくは年金の形式で受け取ります。

ただし、積み立てた年金資産は原則60歳まで引き出すことはできません。


手続きしなかった場合、資産は運用されずに塩漬けされる

手続きしなかった場合、資産は運用されずに塩漬けされる

企業に勤める人が転職などで会社を辞める際、企業型確定拠出年金(DC)に積み立てていた資産は転職先のDCや国が運営する個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)などに移して運用(移管)することができます。


しかし、会社を離れた月の翌月から6カ月以内に手続きしなかった場合、資産は国民年金基金連合会に自動で移されてしまいます。

そうなると資産は運用されずに塩漬けとなります。

その場合、毎年624円の管理手数料が引かれることになります。


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塩漬けとは

塩漬けとは、現在の価格が買い値よりも下がっていて、売ると損が出る状態であるために、やむをえず長期保有していることをいい、特に株価が近い将来も上がりそうにない銘柄を持っている場合によく使われます。

本来は食材を長期保存するための言葉で、主に腐敗しやすい食品を、長期保存や味付けのため食塩に漬けておく古くからの方法、またその方法で塩に漬けた食品をいいます。


自動移管になった対象は人数でその1割強

自動移管になった対象は人数でその1割強

企業型確定拠出年金(DC)の管理機関でつくる運営管理機関連絡協議会によると、企業型確定拠出年金(DC)は2022年度末時点の加入者数が805万3500人、総資産は18.8兆円でした。

自動移管になった対象は人数でその1割強、資産では1.5%に相当する規模です。


企業型確定拠出年金(DC)が普及するにつれ自動移管は増加しています。

総加入者数と総資産額が10年間でそれぞれ1.8倍と2.8倍に増えたのに比べ、自動移管の方が増加ペースが速いです。


 

会社も積極的に移管しようとはしない

会社も積極的に移管しようとはしない

企業側は通常、転職などで加入資格がなくなることを本人に周知するとともに、移行の手続きについても説明しています。

本人からの申し出がなくても同連合会が確認すれば転職先の運用口座などに移すことができます。

しかし、それでも移し忘れ等による国民年金基金連合会への自動移管は増加しています。


企業年金は公的年金に上乗せして老後の生活資金を手厚くする制度です。

少子高齢化で公的年金の給付水準が低下していくのを踏まえ、政府は積極加入を呼びかけています。


厚生労働省は対策を検討中

厚生労働省は対策を検討中

厚労省はせっかくの資金が運用機会を逃している状況を重く見て、厚労相の諮問機関である社会保障審議会で改善策を議論しています。

審議会委員からは転職などで加入資格がなくなった後の資金の移し先をあらかじめ決めておく案などが提起されています。


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