この記事では「結核(tuberculosis)」について解説していきます。
結核は重大な感染症だけど「過去のモノ」と認識している人が多いのではないでしょうか?
1999年に厚生省により「結核非常事態宣言」が発令され、今なお猛威を振るっています。
この記事を読めば、結核の「症状」「治療方法」「日本における結核の現状」を知ることができます。
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結核とは
結核とは、ヒト型結核菌によって引き起こされる感染症です。
結核の約8割は肺に発症しますが、リンパ節、骨、脳、臓器や眼など、あらゆる部位でも発症する可能性があります。
結核は空気感染するため、伝染性が非常に高いです。
結核菌が体内に取り込まれても必ず「感染」するわけではなく、体の抵抗力により追い出されることの方が多いです。
しかし、菌が体内に残ることがありますが、多くの場合、免疫によって封じ込められ、発病しません。しかし、免疫力が低下すると発病することもありますので、注意が必要です。
結核の症状
結核の初期症状はカゼと似ていますが、せき、痰(たん)、発熱(微熱)などの症状が長く続きます。
初期は進行が遅く症状が軽いため、風邪と間違えられることがあります。
感染してから2年くらいの内に発病することが多く、発病者の60%くらいの人が1年以内に発病しています。
結核の治療方法
結核の治療は基本的に投薬治療になります。
3~4種類の薬剤を服用することになり、服用期間は、基本的に6ヵ月ですが、個人の病状や経過によって長くなることがあります。
結核の歴史
出典:結核予防会結核研究所国際結核情報センター
結核の爆発的流行は、多くの人が職を求めて大都会に集中するようになった産業革命をきっかけに先進諸国で始まりました。
その後、衛生環境や栄養状態の向上に伴い、いったんは改善したものの、20世紀の2度の世界大戦においては、環境の悪化により各国で再び流行が見られました。
第二次世界大戦後は栄養状態、環境の改善などにより感染は減少したが、現在では日本、ロシア、イギリスなど、先進国でも罹患率の高い国が存在します。
また、アフリカ各国や東南アジアなどHIVの罹患率が高い国ではHIVとの重複感染による罹患率の上昇がみられます。
WHOは1985年に「結核非常事態宣言」を発表しました。
日本における結核の現状
出典:国立感染症研究所
日本の結核罹患率は戦後減少傾向でしたが、1997年に新規結核患者数、罹患率ともに上昇し、この傾向が続いたことから、1999年に厚生省により「結核非常事態宣言」が発令されました。
2000年以降は、新登録結核患者数は減少しており、新登録患者数は2014年には2万人を下回りました。
2018年末の結核登録患者数は約3万7千人、2018年の年間新規登録患者数は1万6千です。
結核による年間死亡者数は2千人を超え感染症による死因としては最多で、先進国中でも高い値が続いており、依然として「日本最大の感染症」です。
DOTS(直接監視下短期化学療法)
結核菌の薬剤耐性の獲得を防ぎ、確実に結核を治療するためには3剤以上併用の化学療法(薬物療法)を6ヵ月以上にわたり確実に続けることが重要です。
このために医療従事者が患者の服用するところを実際に見て確認し、治療の失敗・脱落を防ぐ方法をDOTS(直接監視下短期化学療法)といいます。
結核の予防接種・健康診断・接触者健診
結核の予防接種は『予防接種法』により、生後12ヶ月未満にBCG接種を一回行うこととされています。
結核の健康診断は『感染症法』により、定期健康診断と接触者健診が定められています
接触者健診は結核患者が発見された際、施設、学校などで感染の可能性の高い者を対象とし臨時に実施されます。
IGRA、ツベルクリン反応検査などが一般的です。
対象者 | 実施方法 | 実施者 | 回数 | |
小学校・中学校 | 全学年 | 問診 (必要に応じて他の検査) |
学校長 | 毎年度1回 |
高校・大学・各種学校 | 第1学年 | 胸部X線検査 (必要に応じて他の検査) |
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施設 | 刑務所の収容者 (20歳上) |
施設長 | ||
社期福祉施設の入所者 (65歳以上) |
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事業所 | 学校、医療機関、福祉施設の従業者 | 事業所長 | ||
市町村 | 65歳以上の居住者 | 市町村長 | ||
市町村が必要と認めたもの | 市町村により異なる |
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