社会保障ニュース

健康保険組合の78%が赤字!解散 or 保険料増の選択を迫られる

健康保険組合の78%が赤字!解散 or 保険料増の選択を迫られる

主に、大企業の従業員などが加入している健康保険が、解散・保険料増額の危機に迫られています。

新型コロナウイルス・高齢化が原因です。


すでに、中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)に乗り換えたほうが得だと思われる企業も出てきています。

大企業に就職している貴方の会社は大丈夫ですか?


健康保険組合の78%が赤字の見込

健康保険組合の78%が赤字の見込

出典:日本経済新聞社


新型コロナウイルスの感染拡大で、大企業の社員らが入る健康保険組合の財政が悪化しています。


健康保険組合連合会(健保連)が、2021年4月22日にまとめた全国約1400組合の2021年度の予算集計では、78%が赤字を見込んでいます。

収支の均衡に必要な実質保険料率も、解散の目安とされる10%を初めて超える見通しです。


保険料収入は前年度比2・6%減

保険料収入は前年度比2・6%減

1387組合を集計したところ、コロナの影響で保険料収入は前年度比2.6%減の8兆60億円に減少することがわかりました。

高齢化による支出増加の傾向は変わらず、収支の悪化に拍車がかかりました。


保険料収入は従業員の給与や賞与に連動します。

コロナの影響により賞与などが減少している宿泊・飲食、生活関連サービス・娯楽関連の企業で特に落ち込みが大きいです。


今回の支出は、コロナウイルスによる一時的な増加と言えますが、収入減は続いていくことが予想されます。

健康保険組合の抜本的な改革が求められます。


赤字組合の割合は、コロナの感染拡大前から倍増

赤字組合の割合は、コロナの感染拡大前から倍増

2021年度予算の経常赤字は5098億円と、前年度に比べて赤字幅が約2800億円も広がります。

赤字組合の数は169増えて1080になります。


コロナの感染拡大前の2019年度実績と比べると、赤字組合の割合は35%から78%まで倍増しています。

経常赤字の大きさはリーマン危機後の財政悪化で解散が続出した、2009年度(5234億円の赤字)以来の水準に膨らんでいます。


収支悪化に拍車がかかれば、保険料率の引き上げや解散する健保組合の増加が懸念されます。


必要な保険料率は10・06%と過去最高

必要な保険料率は10・06%と過去最高

2021年度の平均保険料率は9.23%と0.01ポイント高まります。

料率を引き上げる組合数は115組合です。健保連によると、予備費や積立金の取り崩しで対応する動きが多いです。
 

収支を均衡させるのに必要な保険料率を算定すると、10.06%と過去最高の料率になります。

前年度から0.35ポイント増で、10%を超えるのは初めてです。


10%を超えれば解散の方が得?

健保組合にとって料率10%超が持つ意味は重いです。

中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の料率が10%です。


10%超となれば企業が自前の健保組合を持つ必要性を失いかねません。

解散を判断する目安が10%とされているため、今後、解散を決める組合が増えるおそれがあります。


実際に解散した企業も出てきた

実際に解散した企業も出てきた

2021年4月1日には、アパレルの製造・販売会社でつくる大阪既製服健康保険組合が解散しました。

コロナの影響を理由とする初の解散です。


健保組合が解散すると加入者は協会けんぽに移ることになります。

協会けんぽに移ると、企業が個別に提供する健康増進プログラムなどの手厚い福利厚生を受けることが難しくなり、協会けんぽに対する税負担の増加にもつながります。


高齢化により拠出額は年々増加

高齢化により拠出額は年々増加

感染が拡大する前から健保組合を取り巻く環境は厳しさを増していました。


加入者が医療機関を受診した場合の医療費にかかる給付だけでなく、高齢者の医療費を支える支援金なども拠出しています。


高齢化により拠出額は年々増加し、2021年度は福利厚生プランなどを除いた支出の47%と半分近くになっているのです。


保険料率が10%を超えるのは時間の問題

健保連では従来、「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になる2022年度から拠出額が一段と膨らみ、保険料率が10%を超えるという「22年危機」を想定していました。

コロナがその危機を1年早め、健保には厳しい判断が迫られています。


制度存続のために後期高齢者の医療費窓口負担増を目指す

制度存続のために後期高齢者の医療費窓口負担増を目指す

現役世代の保険料負担を軽減するため、年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる法案が今国会で審議中です。


佐野副会長は「国民皆保険制度を維持するためにも、後期高齢者の所得基準の見直しなどさらなる改革が必要だ」と強調しています。



-社会保障ニュース
-