自然災害の増加により、損害保険会社の火災保険の部の赤字が続いています。
なんと、11年連続の赤字です。
”保険料増加もやむなし”という状況ですが、一般的なケースで年5000円程度の負担増となり、保険加入者は少なくない負担を求められます。
火災保険料が4年で2割上昇
国内の火災保険料を巡り、家計の負担が増しています。
風水害が増え、これらの被害が補償に含まれる個人向け火災保険は2022年度に過去最大の1割程度の値上げとなる見通しです。
4年間で3度目の値上げとなり、この間の上昇率は2割を超えます。
損害保険会社も火災保険事業は赤字が続いています。
気候変動による自然災害の深刻化が保険加入者と損保業界に重くのしかかります。
参考純率を平均10・9%引き上げ
火災保険は風水害や火災、落雷による建物や家財などの被害を補償します。
個人の加入率は約8割とされています。
金融庁の審査を経て、損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は2021年6月中旬をメドに火災保険料の目安となる「参考純率」を平均10・9%引き上げると発表しています。
引き上げは2019年以来で2年ぶりです。
参考純率は保険料率の6割程度を占める「純保険料率」の目安となります。
今回の10・9%の上昇は単純計算で、保険料率全体の約6・5%の上げ要因になります。
各社は人件費など事業費を織り込み、保険料率の上げ幅は1割程度になる見込みです。
損害保険の大手4社が2022年度に火災保険料を引き上げる
参考純率の引き上げを受けて東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社は2022年度に火災保険料を引き上げることになりました。
一般的なケースで年5000円程度の負担増
火災保険料の引き上げで家計の負担も増しています。
22年度の保険料が1割値上げになれば、首都圏の戸建て住宅の一般的なケースでは年5000円程度の負担増となります。
参考純率は2014年から直近まで約15%上がりました。
21年4月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合指数が2015年比1.5%高にとどまっており、火災保険の負担がいかに家計を圧迫しているかがわかります。
自然災害の保険金支払いは増加傾向にある
世界的に自然災害の保険金支払いは増加傾向にあります。
英保険仲介エーオンによると、風水害の保険金支払額は2017年が1600億ドル(約17兆6000億円)、2020年も米国の大型ハリケーン「ローラ」の被害などで950億ドルにのぼりました。
過去20年間の平均(650億ドル)を4年連続で上回ります。
自然災害によって支払う保険金の約1割が日本
日本損害保険協会によると、国内でも主な風水害で支払う保険金は2018年度と2019年度に1兆円を超えました。
直近3年間(18~20年度)の平均は約9500億円と世界全体の約1割を占めました。
全国各地で深刻な自然災害が増えており、19年は千葉県で暴風による鉄柱の倒壊で多くの住宅が被害を受けました。
19年の台風では首都圏のタワーマンションが浸水して住民に大きな被害が出ています。
火災保険は11年連続の赤字
損害保険会社では火災保険料の収入が全体の15%ほどを占めます。
自動車保険と並ぶ主力商品だが、支払金の増加で大手4社合計で20年度まで11年連続の赤字となりました。
自然災害の多発や、建物や設備の老朽化で保険金の支払額がかさみます。
2020年度は風水害による保険金の支払額は減少したものの、再保険料の高騰や保険金の支払いに備えた責任準備金の積み増しで、東京海上日動が1103億円、損保ジャパンが926億円、MS&ADが1427億円の赤字でした。
火災保険の水害の部分が今後変わる
損害保険会社はよりきめの細かい火災保険の設定を模索しています。
水災について現在全国一律にしている料率に地域差を設ける方針で検討する方針です。
金融庁は今夏にも有識者会議を立ち上げて、地域の分け方や新たなリスク評価手法などに関する基準づくりを進めます。
リスクが低い場所に住む契約者の不公平感は解消されるが、高リスクの地域では値上げ幅がさらに拡大する可能性があります。