厚生労働省は2021年11月29日、オンライン診療に関する指針の改定案をまとめました。
初診時は「直接の対面」を原則としてきた従来の方針を見直し、オンラインでの初診を恒久的に認めます。
患者とすでに接点がある「かかりつけの医師」以外でも、既往歴など患者の情報を診療前に確認することを条件に容認します。
遠隔診療に前向きな一部医療機関を後押しする狙いがありますが、普及につながるかは不透明です。
かかりつけ医以外の医師でも初診からオンライン診療を可能
政府は2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、初診のオンライン診療を特例で解禁しました。
21年6月に閣議決定した規制改革実施計画で「特例措置の恒久化」を盛り込み、厚労省が具体的な指針作りを進めてきました。
一般からの意見公募を経て、21年度中にも指針を改定します。
新たな指針では、オンライン診療の初診は原則としてかかりつけ医が実施すると明示しました。
一方、かかりつけ医がオンライン診療をしていなかったり、患者側にかかりつけ医がいなかったりする場合などは、かかりつけ医以外の医師でも初診からオンライン診療を可能とします。
かかりつけ医以外の医師がオンラインで初診を担当する場合は、テレビ会議などで医師と患者が事前に情報交換する「診療前相談」を実施します。
患者の主な症状のほか、過去の診療歴や健康診断の結果などを確認したうえでオンライン診療に進みます。
オンライン診療の可否を判断する症状の基準については「一律の基準を定めるのは困難」とする一方、呼吸困難や吐血、妊娠関連の症状などには適さないとしました。
薬を処方する場合は日本医学会連合がまとめた気をつけるべきガイドラインを参考にすることになります。
基礎疾患などが把握できていない患者には、8日分以上の薬の処方をしないことなども盛り込みました。
医療機関の「通話料」や「システム利用料」などが患者負担
日本医師会は会員の開業医から既存の患者が流出することを懸念し、オンライン診療の初診をかかりつけ医に限って認めるよう求めていました。
改定案ではかかりつけ医がオンライン診療に対応していない患者らが遠隔治療に積極的な他の医療機関を選びやすくなるなど一定の効果が見込みます。
一方、ビデオ通話などを用いるオンライン診療では「通話料」や「システム利用料」などの名目で追加の患者負担を徴収する医療機関も少なくありません。
日本経済新聞が今秋、東京都内の医療機関を対象に実施した調査では平均約900円の保険外費用が生じていました。
オンライン診療の普及が進むかは未知数
対面診療に比べてオンライン診療は診療報酬も低く設定されています。
日本医師会は「対面診療とオンライン診療では診療行為の範囲が異なり、診療報酬に一定の差は今後も必要だ」と主張しています。
今回の改定案でオンライン診療の普及が進むかは未知数です。
厚労省が29日開いた検討会では、患者情報の保護などセキュリティー対策についても出席者から意見が多く出ました。
厚労省は今回の改定後、改めて検討する方針です。
まとめ
政府は2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、初診のオンライン診療を特例で解禁しました。
かかりつけ医がオンライン診療をしていなかったり、患者側にかかりつけ医がいなかったりする場合などは、かかりつけ医以外の医師でも初診からオンライン診療を可能です。
かかりつけ医以外の医師がオンラインで初診を担当する場合は、テレビ会議などで医師と患者が事前に情報交換する「診療前相談」を実施します。
ビデオ通話などを用いるオンライン診療では「通話料」や「システム利用料」などの名目で追加の患者負担を徴収する医療機関も少なくありません。
日本経済新聞が今秋、東京都内の医療機関を対象に実施した調査では平均約900円の保険外費用が生じていました。
対面診療に比べてオンライン診療は診療報酬も低く設定されています。