社会保障

年金の給付と民事上の損害賠償を支給調整する「第三者行為災害」とは?

年金の給付と民事上の損害賠償を支給調整する「第三者行為災害」とは?

労災保険は、労働者の業務または通勤による災害に対して所定の給付を行うことを目的としています。

これらの災害の中には、通勤途中に交通事故に遭ったり、仕事で道路を通行中に建設現場から落下した物に当たるなどして負傷する場合もあります。


労災保険制度上、これらの災害を「第三者行為災害」と呼んでいます。


第三者行為災害とは

第三者行為災害とは

第三者とは、年金給付者(国)・年金受給者(被害者)以外の受給権者以外の加害者のことです。

第三者行為災害とは、第三者によって生じたもののことで、この場合は第三者が被害者または遺族に対して損害賠償の義務を負います。


災害の加害者が第三者と呼ばれるのはなじみにくいのですが、年金支給の関係においては年金給付者(国)と年金受給者(被害者)が当事者です。

災害の当事者であっても、災害の加害者は年金支給関係においては第三者という立場になります。


第三者行為災害が発生した場合、被害者や遺族は年金給付者である国に対して保険給付の請求権を取得すると同時に、第三者に対して民事上の損害賠償請求権を取得することになります。

しかし、同一事由で両者から二重の損害の填補(補償)を受けるとなると、被害者や遺族は実際に発生した損害額より過剰な利益を受けることになります。


さらに、本来、加害行為がなければ年金給付の原因が発生しなかったことを考えると、填補されるべき損失は、最終的には国ではなく第三者が負担するのが合理的です。

そこで、第三者行為災害の場合、年金の給付と民事上の損害賠償とは支給調整されます。


支給調整される部分とは

支給調整される部分とは

第三者行為災害による年金と損害賠償額との支給調整額は、損害賠償額すべてではなく、一部の額が対象となることに注意が必要です。

第三者つまり災害の加害者は、逸失利益や休業補償の他、慰謝料、医療費などを被害者に保障することになります。


このうち逸失利益や休業補償といった生活保障の部分が支給調整対象となりますが、慰謝料などは支給停止される年金部分から省かれることになります。

生活補償分として支払われた損害賠償の金額が国の定める月間生活費の何ヶ月分になるのかが計算され、その月数の年金が支給停止になります。


なお、調整期間は最大3年(平成27年9月30日以前の災害については最大2年)です。

ただし、年金が支給されるのは、通常初診日から1年6ヶ月経過した障害認定日からとなります。

1年6ヶ月を待たずに障害認定されるケースを除き、災害が発生してから1年6ヶ月となります。


また、事後重症請求を行う場合などは災害から3年以上経過していることもあります。

そのような場合は支給調整対象にはなりません。


第三者行為災害の具体例

第三者行為災害の具体例

たとえば、第三者の起こした交通事故によりケガを負い、結果として障害等級に該当する障害が残った場合などは、第三者行為災害に該当します。

この場合は、事故の加害者に対して損害賠償を請求することが可能になります。


障害認定を受けると障害年金も請求できるようになりますが、損害賠償が優先されることになります。

損害賠償の金額が確定し支払われると、そのうちの生活補償に相当する分の金額を特定します。


保険会社から支払われるときは保険会社が作成した計算書を基に算出しますが、災害の当事者同士が直接やり取りをし、保険会社も関与せず、損害賠償の内容もはっきりさせないまま総額だけを決定して支払われることもあります。

その場合は、国の算定によって生活保障分がいくらに該当するかを算出します。


そしてその賠償請求額の生活補償相当額が災害の被害者の生活費何ヶ月分に相当するかが計算され、そこで求められた月数について、最大3年間受け取ることのできる障害年金額が支給停止されます。


また、第三者の起こした交通事故で被害者が亡くなった場合も、第三者行為災害となります。

この場合は、損害賠償請求額の生活補償額相当額の範囲で、被害者の遺族に対して支払われる遺族年金額が支給停止されます。


第三者行為事故状況届が必要になる

第三者行為事故状況届が必要になる

第三者行為災害により、障害年金または遺族年金を受け取ることのできるケースに陥った場合は、年金請求の手続きを行う際に第三者行為災害であることを証明する書類が必要になります。


その主たるものが「第三者行為事故状況届」という書類です。

この書類には年金の請求者や相手方のデータ、この現場の状況や発生状況、現場の図、自動車保険の加入有無、賠償額の請求先、第三者の負う損害賠償額の内訳などを障害に記載する必要があります。


また、第三者行為災害であることを確認するための「確認書」や、交通事故などの事故が発生したことを証明するための事故証明や事故内容が記載された記事なども必要になります。

すでに損害賠償金が決定している場合は、示談書などの損害賠償金の受領額がわかるものも提出します。

この損害賠償金のうち生活補償分として支払われた金額については障害年金と支給調整が行われます。

第三者からいくら損害賠償を受け取ったのか、その受領金額等が分かる算定書を「第三者行為事故状況届」などとともに提出します。


なお、損害賠償は損害保険会社から支払われることもあります。

事故の加害者となった第三者あるいは損害保険会社から支払われた損害賠償金、今後支払われる予定の損害賠償金を確認するために損害保険会社や事業所、弁護士等に照会をする必要があります。


しかし、個人情報保護のため、損害保険会社等は相手が日本年金機構であっても個人の損害賠償金等の情報を教えることはありません。

そこで「同意書」を提出して、損害保険会社等が損害賠償金の情報紹介を受けられるようにします。



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