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【病院格差】がん診断から5年後の生存率に最大2倍の格差!

がん診断から5年後の生存率に最大2倍の格差!

がん医療の中核として厚生労働省が指定する全国約400の拠点病院などの間で、診断から5年後の生存率に最大2倍の格差があることが日本経済新聞の調査で分かりました。


新薬を早期に投与できる体制などの違いが影響した可能性があります。

病院ごとの成績比較を通じて、医療の質を底上げする取り組みが求められます。


病院間で最も格差が大きかったのは肺がん

病院間で最も格差が大きかったのは肺がん

生存率はがん登録法に基づいて国立がん研究センターが集計しています。


病院間で最も格差が大きかったのは肺がん。トップの愛知県がんセンター(名古屋市)は係数が130で、平均より3割高い。最も低い病院は61で差は2・1倍でした。

肺がんは進行がんに有効な新薬が相次いで開発されています。同センター呼吸器内科の藤原豊部長は「臨床試験の段階で早期に投与できた患者の生存率が高まるなどした影響があるかもしれない」言っています。


他の部位別の格差は大腸が1・6倍、胃が1・5倍、肝臓が1・4倍、乳房が1・1倍。地域の中心となる拠点病院でもばらつきがある実態が浮き彫りになりました。

全病院の治療成績が平均水準以上であれば、2年間で約7千人が5年を超えて生存できた可能性があります。


国立がん研究センターの東尚弘がん対策情報センター部長は「生存率は進行度以外の患者の状態や年齢も影響する。生存率を優劣でなく、検討材料として比較し、医療の質向上のために活用してほしい」と話しています。


肺がんはがんによる死亡数の中で最も多い

肺がんは国内のがんによる死亡数の中で最も多いです。

2019年に肺がんで亡くなった人は約7万5千人で、がんの部位別で最も多い。男性が7割の約5万3千人に上り、死亡数は増加が続いています。


肺がんは進行すると転移しやすく、治療成績が大幅に下がります。

調査で治療成績が高かった病院では早期発見から治療に結びつけるだけでなく、患者の身体的負担を少なくする手術を積極的に導入しています。


肺がんの8割を占めるのが「非小細胞がん」というタイプで、早期の場合、手術で切除するのが標準的な治療法です。

術前術後に薬物療法や放射線治療を組み合わせる治療も広がります。進行して切除できない場合、薬物療法や放射線治療で対応します。


がん診断から5年後の生存率に最大2倍の格差

        1期 2期 3期 4期
病院名   所在地  生存率 係数 平均年齢(歳) 症例数(人) 生存率(%) 症例数(人) 生存率(%) 症例数(人) 生存率(%) 症例数(人) 生存率(%)
北海道がんC 北海道 105.6 69.4 265 75.4 52 59.6 91 29.7 149 6.0
岩手県立中央病院 岩手 109.1 69.5 137 79.4 33 63.6 73 29.9 115 3.5
宮城県立がんC 宮城 118.7 69.7 145 75.8 36 52.8 65 44.6 124 14.8
東北大病院 宮城 115.0 68.2 134 81.3 37 60.3 68 27.9 90 11.1
仙台医療C 宮城 107.0 69.4 120 81.4 25   37 19.6 48 6.3
土浦協同病院 茨城 111.8 71 104 79.6 31 48.4 49 28.6 81 12.4
筑波大病院 茨城 108.2 68.9 196 77.5 39 48.7 74 33.8 64 7.7
埼玉県立がんC 埼玉 108.5 68.5 216 76.3 57 47.4 114 33.3 234 8.6
千葉大病院 千葉 115.8 67.9 211 81.7 47 48.9 85 37.7 91 11.0
千葉労災病院 千葉 110.7 70.5 87 77.0 35 45.7 52 33.9 79 11.4
国立がん研究C東病院 千葉 106.3 68.5 532 74.0 145 56.0 275 30.7 362 14.0
国立がん研究C中央病院 東京 123.6 66.5 694 87.2 115 57.2 195 38.8 224 14.0
がん研有明病院 東京 121.3 65.5 209 85.7 30 73.3 79 35.4 101 7.1
順天堂大順天堂医院 東京 117.0 67.3 468 84.3 67 55.2 125 30.1 122 14.4
虎の門病院 東京 113.1 68.6 373 80.3 41 50.1 71 46.7 72 6.9
慶應大病院 東京 113.1 69.5 281 80.7 32 58.8 56 29.3 84 13.5
東京医科歯科大病院 東京 109.9 70.2 175 73.9 34 47.1 63 42.9 52 15.8
杏林大病院 東京 109.3 70.4 190 81.5 39 66.7 73 21.1 172 5.5
三井記念病院 東京 105.5 69 95 74.9 31 54.1 57 26.0 62 9.7
神奈川県立がんC 神奈川 117.2 68.5 395 81.9 75 60.0 123 35.8 163 11.6
昭和大横浜市北部病院 神奈川 108.1 69 145 77.3 44 54.6 55 24.4 110 10.3
横浜市立市民病院 神奈川 105.8 71.2 145 79.9 32 62.5 49 24.5 111 1.8
長岡中央綜合病院 新潟 108.6 71.1 162 78.3 48 51.7 46 28.9 86 9.3
富山県立中央病院 富山 107.3 70.2 153 78.3 46 50.0 51 29.4 111 7.3
金沢大病院 石川 109.5 67.8 249 78.6 35 62.9 45 26.7 67 9.4
信州大病院 長野 118.1 68.5 204 86.7 27   39 30.8 74 8.1
長野赤十字病院 長野 112.9 71.9 81 79.0 10   39 23.1 89 13.7
岐阜大病院 岐阜 107.3 69.4 167 71.2 25   57 42.1 75 13.2
聖隷三方原病院 静岡 108.7 69.3 274 79.9 72 48.6 93 34.4 114 3.5
愛知県がんC 愛知 130.4 65.2 250 89.2 67 65.5 128 40.2 160 11.9
大阪国際がんC 大阪 117.4 66.9 324 84.2 71 51.8 107 33.6 171 11.1
大阪赤十字病院 大阪 106.8 69.9 110 75.5 40 47.5 100 30.0 164 8.1
神戸市立医療C中央市民病院 兵庫 118.6 69.7 184 77.7 41 62.8 78 39.2 123 14.2
兵庫県立がんC 兵庫 110.3 68.3 336 77.3 70 54.3 123 30.7 146 13.0
日本赤十字社和歌山医療C 和歌山 109.6 70.7 226 78.9 50 53.5 80 28.8 129 9.1
岡山大病院 岡山 111.8 68 262 76.2 40 45.7 71 45.7 91 14.6
岡山赤十字病院 岡山 106.3 70.2 158 78.3 29   48 38.3 92 1.1
広島大病院 広島 120.3 67.7 216 83.3 28   59 40.5 82 14.6
広島市民病院 広島 119.8 68.1 149 85.7 18   46 39.1 76 7.6
徳島県立中央病院 徳島 106.3 71.6 119 78.7 38 51.6 76 27.6 94 5.4
香川大病院 香川 114.1 68.3 197 83.6 40 48.8 60 36.7 64 4.7
香川労災病院 香川 106.7 70.9 92 84.8 17   43 11.6 72 8.3
高松赤十字病院 香川 106.5 71.2 91 81.1 16   41 26.8 77 4.0
四国がんC 愛媛 112.0 68.2 328 80.1 60 60.9 96 33.3 14.8 6.1
高知大病院 高知 110.5 71.5 120 80.8 25   44 31.3 52 5.8
九州がんC 福岡 116.3 66.3 188 78.7 40 62.5 99 37.1 164 9.2
北九州市立医療C 福岡 111.9 69 217 80.7 36 63.9 66 28.8 131 6.9
九州病院 福岡 110.6 71.6 134 81.3 23   55 32.0 86 5.0
九州医療C 福岡 106.7 68.3 196 77.6 54 42.6 77 32.5 130 8.5
九州大病院 福岡 105.4 69.3 249 74.4 26   63 34.4 113 9.8
長崎原爆病院 長崎 110.3 71.4 153 78.9 26   47 30.5 91 9.9
長崎大病院 長崎 106.9 68.6 197 75.1 38 60.5 55 23.6 70 14.5
済生会熊本病院 熊本 110.4 69.8 170 79.0 23   42 25.4 85 8.2
熊本大病院 熊本 106.7 69.6 294 77.5 31 45.2 57 35.1 56 7.1
大分県立病院 大分 106.1 69.4 146 76.9 28   44 25.0 62 11.3
県立宮崎病院 宮崎 106.3 69.4 96 73.9 19   43 30.2 45 13.3
今給黎総合病院 鹿児島 107.2 70.5 113 74.9 22   56 35.7 77 6.8
南九州病院 鹿児島 105.1 70.7 139 77.0 28   39 25.6 73 8.2

国立がん研究センターによると、12~13年に診断を受けた全患者の5年生存率は41・1%。初期の1期は73・6%ですが、2期では47・2%まで下がります。3期は25・3%、最も進行した4期では6・7%にとどまっています。


進行がんが多いと、全体の生存率が下がります。このため調査では1~4期の進行度の違いを調整し、全国平均を100とする「生存率係数」で比較しました。


最も生存率係数が高かったのは愛知県がんセンター

病院別の生存率を公表している約400のがん拠点病院のうち、12~13年に200人以上の患者を診断・治療したのは194病院。このうち、最も生存率係数が高かったのは愛知県がんセンター(名古屋市)で130・4でした。

全国平均に比べ治療成績が1・3倍高いことになる。最も低い中部地方の病院との格差は2・1倍でした。


調査対象

調査は国立がん研究センターの「がん診療連携拠点病院等院内がん登録2012~13年5年生存率集計報告書」で、今年7月に公開された「施設別結果」を分析しました。


同センターはがん拠点病院など約470施設から治療実績を入手。

報告書では12~13年にがんと診断された患者の5年後の生存状況を90%以上把握していた約400施設について、肺、胃、大腸、乳房、肝臓の治療成績を公開しています。患者数は2年間で計80万人超。


評価方法

進行度の違いを調整する「生存率係数」を算出して比較しました。


生存率係数は、まず「症例数×全国平均の実測生存率」で各期の「期待生存数」を算出して1~4期分を合計。

次に「症例数×施設別の実測生存率」で各期の「5年後の生存数」を算出して1~4期分を合計し、1~4期分の「期待生存数」の合計で割りました。

全国平均が「100」となるように100倍しました。


例えば「120」ならば全国平均より治療成績が20%高いことになる。患者の個別データは非公開のため年齢の違いなどは調整できていません。


同センターが実測生存率を公表していない症例数30人未満の進行度は生存率係数の算出から除外しました。

症例数が10人未満で「1~3人」などと公表している場合は「2人」など中間値としました。



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