iDeCoは、自分のペースで資産を積み立て、税制優遇を受けながら資産運用を行うための私的年金制度です。
掛金の所得控除、運用益の非課税、受け取り時の税制優遇など、さまざまな税制メリットがあり、長期的な資産形成を支援します。
適切な運用と計画的な積立により、老後の資金準備に大いに役立つ制度です。
- 掛金の全額が所得控除
- 運用益が非課税
- 受け取り時の税制優遇
詳しく解説していきます。
掛金の全額が所得控除
iDeCoに拠出する掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれます。
これにより、課税所得が減少し、その分の所得税・住民税が軽減されます。
軽減額は、「年収」や「掛け金」によって変わってきます。
年収500万円の場合の節税効果
年収500万円の場合、iDeCoの掛金が所得控除される仕組みと節税効果を具体的に説明します。
前提条件
- 年収:500万円
- 所得税率:10%(課税所得330万円超〜695万円以下の場合)
- 住民税率:10%
- 毎月のiDeCo掛金:2.3万円(月額最大)
- 年間のiDeCo掛金:2.3万円 × 12ヶ月 = 27.6万円
掛金による所得控除の影響
所得控除前の課税所得と税額
- 年収500万円から給与所得控除(概算)を差し引きます。
- 給与所得控除額(給与所得控除の計算方法に基づく):100万円 + (500万円 - 162.5万円) × 20% = 100万円 + 67.5万円 = 167.5万円
- 課税所得:500万円 - 給与所得控除167.5万円 = 332.5万円
- 所得税:332.5万円 × 10% = 33.25万円
- 住民税:332.5万円 × 10% = 33.25万円
- 合計税額:33.25万円 + 33.25万円 = 66.5万円
iDeCo掛金による所得控除後の課税所得と税額
- 課税所得:332.5万円 - iDeCo掛金27.6万円 = 304.9万円
- 所得税:304.9万円 × 10% = 30.49万円
- 住民税:304.9万円 × 10% = 30.49万円
- 合計税額:30.49万円 + 30.49万円 = 60.98万円
節税効果の計算
- 所得税の節税額:33.25万円 - 30.49万円 = 2.76万円
- 住民税の節税額:33.25万円 - 30.49万円 = 2.76万円
- 合計節税額:2.76万円 + 2.76万円 = 5.52万円
まとめ
年収500万円の方が毎月2.3万円(年間27.6万円)をiDeCoに拠出すると、年間で約5.52万円の節税効果があります。
この節税効果は毎年受けられ、掛金を拠出する限り続きます。
長期間の積み立てで大きな節税効果が期待できます。
年収600万円の場合の節税効果
年収600万円の場合、iDeCoの掛金が所得控除される仕組みと節税効果を具体的に説明します。
前提条件
- 年収:600万円
- 所得税率:20%(課税所得330万円超〜695万円以下の場合)
- 住民税率:10%
- 毎月のiDeCo掛金:2.3万円(月額最大)
- 年間のiDeCo掛金:2.3万円 × 12ヶ月 = 27.6万円
掛金による所得控除の影響
所得控除前の課税所得と税額
- 年収600万円から給与所得控除(概算)を差し引きます。
- 給与所得控除額(給与所得控除の計算方法に基づく):100万円 + (600万円 - 162.5万円) × 20% = 100万円 + 87.5万円 = 187.5万円
- 課税所得:600万円 - 給与所得控除187.5万円 = 412.5万円
- 所得税:412.5万円 × 20% = 82.5万円
- 住民税:412.5万円 × 10% = 41.25万円
- 合計税額:82.5万円 + 41.25万円 = 123.75万円
iDeCo掛金による所得控除後の課税所得と税額
- 課税所得:412.5万円 - iDeCo掛金27.6万円 = 384.9万円
- 所得税:384.9万円 × 20% = 76.98万円
- 住民税:384.9万円 × 10% = 38.49万円
- 合計税額:76.98万円 + 38.49万円 = 115.47万円
節税効果の計算
- 所得税の節税額:82.5万円 - 76.98万円 = 5.52万円
- 住民税の節税額:41.25万円 - 38.49万円 = 2.76万円
- 合計節税額:5.52万円 + 2.76万円 = 8.28万円
まとめ
年収600万円の方が毎月2.3万円(年間27.6万円)をiDeCoに拠出すると、年間で約8.28万円の節税効果があります。
この節税効果は毎年受けられ、掛金を拠出する限り続きます。
長期間の積み立てで大きな節税効果が期待できます。
運用益が非課税
iDeCoの運用益が非課税になる仕組みについて、詳しく説明します。
通常の投資の場合
通常の投資では、株式や投資信託の売却益、配当金、利息などに対して税金がかかります。
具体的には、これらの運用益に対して約20%の税金(所得税15%+住民税5%)が課せられます。
この税金は利益が発生するたびに徴収されるため、再投資できる金額が減少し、最終的な資産形成に影響を及ぼします。
例えば、毎月2.3万円を30年間積み立て、年平均利回り5%で運用するケースを考えてみます。
年間の掛金は27.6万円で、30年間での掛金合計は828万円です。
この掛金を年平均利回り5%で運用した場合、最終的な積立金額は未来価値計算により約1,938.1万円になります。
しかし、この金額は税引前のもので、実際には運用益に対して約20%の税金がかかります。
運用益は1,938.1万円から掛金合計828万円を差し引いた1,110.1万円です。
この運用益に対して約20%の税金がかかると、約222.02万円が税金として差し引かれます。
したがって、最終的な積立金額は約1,716.08万円になります。
iDeCoの場合
一方、iDeCoではこれらの運用益がすべて非課税となります。
つまり、運用中に得られる売却益、配当金、利息に対して一切の税金がかかりません。
このため、得られた運用益はそのまま再投資に回され、複利効果を最大限に活用することができます。
同じ条件でiDeCoを利用した場合を考えてみます。
毎月2.3万円を30年間積み立て、年平均利回り5%で運用すると、最終的な積立金額は約1,938.1万円になります。
通常の投資では、この金額から運用益に対する税金約222.02万円が差し引かれますが、iDeCoでは税金がかからないため、最終的な積立金額はそのまま約1,938.1万円となります。
比較と効果
これにより、iDeCoを利用した場合の最終積立金額は、通常の投資に比べて約222.02万円多くなります。
この非課税の効果は、運用期間が長いほど、また運用利回りが高いほど大きくなります。
iDeCoの非課税メリットにより、長期的に見て大きな資産形成が可能となるのです。
このように、iDeCoの運用益が非課税であることは、投資の効果を最大限に引き出すための重要な要素となります。
税金を気にせずに運用益をそのまま再投資できるため、長期的な資産形成において非常に有利な制度と言えます。
受け取り時の税制優遇
iDeCoの受け取り時には、税制優遇措置が適用されるため、通常の課税よりも有利に資金を受け取ることができます。
具体的には、受け取り方法に応じて「退職所得控除」や「公的年金等控除」が適用されます。
以下にそれぞれの詳細を説明します。
一時金として受け取る場合:退職所得控除
iDeCoの資金を一時金として受け取る場合は、「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されます。
この場合、以下の計算式で退職所得控除額が決まります。
退職所得控除額の計算
- 勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
- 勤続年数が20年を超える場合:800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
ここでの「勤続年数」は、iDeCoに加入していた期間と同じです。
退職所得の計算
- 退職所得 = (受け取った一時金 - 退職所得控除額) × 1/2
この計算で求められた退職所得に対して所得税が課されます。
例えば、iDeCoに30年間加入していた場合、退職所得控除額は以下のようになります。
-
20年 × 40万円 + (30年 - 20年) × 70万円 = 800万円 + 700万円 = 1500万円
受け取った一時金が2000万円の場合、退職所得は以下のようになります。
-
(2000万円 - 1500万円) × 1/2 = 250万円
250万円に対して所得税が課されます。
年金として受け取る場合:公的年金等控除
iDeCoの資金を年金として受け取る場合は、「公的年金等」として扱われ、公的年金等控除が適用されます。
公的年金等控除額は年齢と年金受取額に応じて決まります。
公的年金等控除額の計算(65歳未満の場合)
- 受け取る年金額が60万円以下の場合:全額控除
- 60万円を超え、130万円以下の場合:60万円 + (年金額 - 60万円) × 1/4
- 130万円を超える場合:105万円
公的年金等控除額の計算(65歳以上の場合)
- 受け取る年金額が110万円以下の場合:全額控除
- 110万円を超え、330万円以下の場合:110万円 + (年金額 - 110万円) × 1/4
- 330万円を超える場合:195万円
例えば、65歳以上で年間80万円の年金を受け取る場合、公的年金等控除額は全額控除となり、税金がかかりません。
併用して受け取る場合
iDeCoの資金を一部を一時金として、一部を年金として受け取ることも可能です。
この場合、それぞれの部分に対して上記の控除が適用されます。
まとめ
iDeCoの受け取り時の税制優遇措置は非常に有利で、受け取る金額や方法に応じて退職所得控除や公的年金等控除が適用されます。
一時金として受け取る場合には退職所得控除が適用され、長期間にわたり積み立てた資金を効率的に受け取ることができます。
一方、年金として受け取る場合には公的年金等控除が適用され、受け取り金額に応じて大部分が非課税となります。
これらの税制優遇措置により、iDeCoは資産形成だけでなく、受け取り時の税金対策にも非常に有効な制度となっています。