社会保障

遺族(補償)年金とは?「金額」や「受給資格者」をわかりやすく解説

遺族(補償)年金とは?「年金額」や「受給資格者」をわかりやすく解説

労災保険といえば、業務上や通勤上によるケガや病気の治療費が無料になる…というイメージを持たれている方が多いと思います。

実は、保険加入者が死亡した場合は、その遺族が補償を受けられる保険でもあるのです。


この記事を読めば、遺族(補償)年金の「金額」「受給資格者」「手続き」などを知ることができます。




遺族(補償)年金とは

遺族(補償)年金とは

遺族(補償)年金とは、業務上または通勤途上の災害によるケガや病気がもとで死亡した場合には、一定の範囲内の遺族に遺族(補償)給付が行われます。

遺族がもらえる給付は、遺族の条件によって、「年金」か「一時金」に分かれます。


遺族(補償)給付は労災保険によって支払われます。


厳密には、業務災害の場合を遺族補償年金、通勤災害の場合を遺族年金といいます。



年金を受けることができる遺族

受給資格者は、労働者の死亡当時、生計維持関係のあった次の遺族です。


実際に遺族(補償)年金を受ける遺族は、そのうち最先順位者(最先順位者が失権し、同順位者がいないときは次順位者に権利が移る)となっています。

受給資格 優先順位

  1. 妻、60歳以上または一定の障害のある夫
  2. 18歳に達する年度の年度末までにあるまたは一定の障害のある子
  3. 60歳以上または一定の障害のある父母
  4. 18歳に達する年度の年度末までにある孫または一定の障害のある孫
  5. 60歳以上または一定の障害のある祖父母
  6. 18歳に達する年度の年度末までにある兄弟姉妹もしくは60歳以上または一定の障害兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳未満の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

    なお、7~10までの人が実際に受けられるのは60歳になってからです。



遺族(補償)年金の給付の内容

遺族(補償)年金の給付の内容


年金額

遺族(補償)年金を受ける遺族およびその者と生計を同じくしている遺族(補償)年金を受ける権利を有する遺族の人数に応じて下記の額。

ただし、上記7~10の人は遺族の人数に含めません。

遺族(補償)年金 給付額

  • 1人…給付基礎日額(年齢により最低・最高限度額あり)の153日分(55歳以上または一定の障害のある妻の場合は175日分)
  • 2人…給付基礎日額の201日分
  • 3人…給付基礎日額の223日分
  • 4人以上…給付基礎日額の245日分



年齢階層別年金給付基礎日額限度額

年齢 ~19 20~24 25~29 30~34 35~39 40~44
最低限度額 4,892 5,475 6,000 6,379 6,749 7,031
最高限度額 13,264 13,264 14,226 17,257 19,022 21,365
年齢 45~49 50~54 55~59 60~64 65~69 70~
最低限度額 7,075 6,902 6,414 5,213 3,940 3,940
最高限度額 23,267 25,192 24,757 19,737 14,973 13,264



遺族特別支給金

上記の年金額に加えて、300万円の一時金が支給されます。


遺族特別年金

上記年金額に加えて、遺族の人数に応じてそれぞれ算定基礎日額の、1人の場合は 153日分(55歳以上または一定の障害のある妻の場合は 175日分)、2人の場合は 201日分、3人の場合は 223日分、4人以上の場合は 245日分の年金が支給されます。


給付期間

終身あるいは既婚・養子縁組・離婚などにより死亡した労働者との親族関係がなくなるまで、子、孫、兄弟姉妹については18歳に達する年度の年度末を過ぎるまであるいは一定の障害があったために年金を受けることとなった場合は障害がなくなるまで。


なお、同順位者がなく次順位者がいる場合には、その次順位者に年金を受ける権利が移ります。


基礎年金・厚生年金との同時給付による減額

遺族(補償)年金と同時に厚生年金保険の遺族厚生年金および国民年金の遺族基礎年金が受けられるときは 20%、遺族厚生年金だけが受けられるときは 16%、遺族基礎年金だけが受けられるときは 12%、それぞれ労災保険の遺族(補償)年金が減額されます。



年金の支払い月

遺族(補償)年金は、支給要件に該当することになった月の翌月分から支給され、毎年 2月、4月、6月、8月、10月、12月の 6期に、それぞれの前 2ヶ月分が支払われます。


給付基礎日額とは

給付基礎日額とは

「給付基礎日額」とは、原則として、労働基準法の平均賃金に騒動する額をいいます。


平均賃金とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因となった事故が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、傷病発生日の直前の賃金締切日)の直前3ヶ月間にその労働者に対して支払われた賃金の総額(ボーナスや臨時に支払われた賃金を除く)を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。


年金としての保険給付の額の算定の基礎となる給付基礎日額は、毎年、前年度と比較した賃金水準の変動率に応じて増額または減額(スライド)されます。

また、年齢階層別の最低・最高限度額も適用されます(年金給付基礎日額)。


※船員については、給付基礎日額の特例があります。


算定基礎日額とは

算定基礎日額

「算定基礎日額」とは、原則として、業務上または通勤による負傷や死亡の原因である事故が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を 365で割った額です。

特別給付とは、給付基礎日額の算定の基礎から除外されているボーナスなど3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいい、臨時に支払われた賃金は含まれません。


特別給与の総額が給付基礎年額(給付基礎日額の 365倍に相当する額)の 20%に相当する額を上回る場合には、給付年額の 20%に相当する額が算定基礎年額となります。

ただし、150万円が限度額です。


手続き

手続き

遺族(補償)年金を請求するときは、所轄の労働基準監督署長に、「遺族補償年金支給請求書」または「遺族年金支給請求書」を提出します。


なお、特別支給金の支給申請は、原則として遺族(補償)年金の請求と同時に、同一の様式で行うことになります。

ダウンロード用(OCR)様式

障害補償給付支給請求書などダウンロード(厚生労働省)
(リンク先の「遺族(補償)等給付関係」のところにあります)



請求書記入例

遺族(補償)給付を請求するときの請求書の記入例は下記のとおりです。

遺族(補償)給付を請求するときの請求書の記入例

出典:厚生労働省



通勤災害の場合の請求書の記入例

通勤災害の場合の請求書の記入例は下記のとおりです。

通勤災害の場合の請求書の記入例



受給権者が2人以上いる場合

同順位の受給権者が2人以上いるときは、そのうちの1人を年金の請求、受領についての代表者とすることになっています。


世帯を異にし、別々に暮らしている場合などやむを得ない事情がある場合は別として、原則として同順位の受給権者がそれぞれ年金を等分して受領することは認められません。


代表者の選任は、年金を請求するときまたは転給により年金を請求する時などに「遺族(補償)年金代表者選任(解任)届」(年金申請様式第7号)を所轄労働基準監督署長へ提出してください。


提出に必要な添付書類

状況 添付書類
必ず添付するもの 死亡診断書、死体検案書、検視調書またはそれらの記載事項証明書など、被災労働者の死亡の事実および死亡の年月日を証明することができる書類
戸籍の謄本、抄本など、請求人および他の受給資格者と被災労働者との身分関係を証明することができる書類
請求人および他の受給資格者が被災労働者の収入によって生計を維持していたことを証明することができる書類
請求人または他の受給資格者が被災労働者と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情に合った者であるとき その事実を証明する書類
請求人および他の受給資格者のうち一定の障害の状態にあることにより受給資格者となっているとき 被災労働者の死亡時から引き続き当該障害の状態にあることを証明することができる書類(診断書など)
受給資格者のうち、請求人と生計を同じくしている者があるとき その事実を証明する書類
妻が障害の状態にある場合 被災労働者の死亡の時以後障害の状態にあったことおよびその障害の状態が生じまたはその事情がなくなった時を証明することができる書類(診断書など)
同一の事由により、遺族厚生年金、遺族基礎年金、寡婦年金等が支給される場合 支給額を証明することができる書類



遺族(補償)年金の請求に関する時効

障害(補償)給付の請求に関する時効

遺族(補償)年金は、被災労働者が亡くなった日の翌日から5年を経過すると、時効により請求権が消滅しますので注意が必要です。


遺族(補償)年金前払一時金とは

遺族(補償)年金前払一時金とは

遺族(補償)年金前払一時金とは、遺族(補償)年金を受給できることとなった遺族が、1回に限り、年金の前払いを受けることができる制度です。


若年停止により年金の支給が停止されている場合でも、前払いを受けることができます。


給付の内容

前払一時金の額は、給付基礎日額の 200日分、400日分、600日分、800日分、1,000日分のなかから、希望する額を選択できます。


なお、前払一時金が支給されると遺族(補償)年金が各月分( 1年たってからの分は年 5%の単利で割り引いた額)の合計額が、前払一時金の額に達するまでの間支給停止されます。


請求の手続き

遺族(補償)年金前払一時金の時効は、被災労働者が亡くなった日の翌日から 2年です。


原則として、遺族(補償)年金の請求と同時に、「遺族補償年金、遺族年金前払一時金請求書」を所轄の労働基準監督署長に提出します。


ただし、被災労働者が亡くなった日の翌日から2年以内で、かつ年金の支給決定の通知のあった日の翌日から1年以内であれば、遺族(補償)年金を受けたあとでも前払一時金を請求することができます。

この場合は、給付基礎日額の 1,000日分から既に支給された年金の額の合計額を減じた額の範囲で請求することになります。


遺族(補償)年金の受給権者が変わるとき

遺族(補償)年金の受給権者が変わるとき

遺族(補償)年金の受給権者が、下記の理由によって年金を受けられなくなったときは、次順位の遺族が年金の支給を受けることになります。

これを「転給」といいます。

受給権者が変わるとき

  1. 死亡したとき
  2. 婚姻したとき(届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含みます)
  3. 直系血族または直系姻族以外の者の養子になったとき(届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含みます)
  4. 離縁によって、死亡した労働者との親族関係が終了したとき
  5. 子、孫または兄弟姉妹については、18歳に達する以後の最初の3月31日が終了したとき(被災労働者の死亡の時から引き続き一定障害の状態にあるときを除きます)
  6. 一定障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹については、その事情がなくなったとき



請求の手続き

所轄の労働基準監督署長に「遺族補償年金・遺族年金転給等請求書」を提出します。


なお、遺族特別年金の支給申請は、原則として転給の申請と同時に同一の様式で行うことになります。


提出に必要な添付書類

状況 添付書類
必ず添付するもの 戸籍謄本、抄本など、請求人および請求人と生計を同じくしている他の受給資格者を被災労働者との身分関係を証明することができる書類
請求人および請求人と生計を同じくしている他の受給資格者のうち、一定の障害の状態にあることにより受給資格者となる者があるとき 被災労働者の死亡時から引き続き障害の状態にあることを証明することができる書類(診断書など)
受給資格者のうち、請求人と生計を同じくしている者があるとき その事実を証明する書類




【まとめ】業務上・通勤途上の事故に関する補償をすべて解説

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