この記事では、日本の「高齢者福祉」制度について解説していきます。
高齢者福祉の基本的な情報を網羅していますので、コレだけ読めば自身や家族の保障状況を理解できます。
高齢者福祉とは、社会福祉の1つです。
社会福祉には下記の4つがあります。
- 児童福祉
- 母子及び父子並びに寡婦福祉
- 高齢者福祉
- 障害者福祉
社会福祉は日本の社会保障制度の一部です。
基本的人権(特に生存権)の保障の観点から生活困窮者の生活保障や心身に障害等があり支援や介助を必要とする人への援助を行う公的サービスです。
合わせて読みたい記事⇩
-
高齢者福祉について学べるおすすめの本4選【2024年版】
この記事では、高齢者福祉について学べるおすすめの本を紹介していきます。高齢者福祉を扱っている本は少ないため、厳選して4冊用意しました。高齢者福祉は、長年にわたって社会の進展に寄与し、豊富な知識と経験を ...
続きを見る
-
介護保険について学べるおすすめの本4選【2024年版】
日本では、40歳以上の人は全員介護保険に加入することになり、要支援認定を受けた場合には介護サービスを受けることができます。その割に、介護保険の制度について詳しく知っている人は少ないのでないでしょうか? ...
続きを見る
高齢者福祉とは
「高齢者福祉」と「公的介護保険」はコインの裏と表です。両方を知ることで高齢者を支える日本の社会保障を理解できます。
高齢者福祉は、長年にわたって社会の進展に寄与し、豊富な知識と経験を有している高齢者が、敬愛され、生きがいをもって健康で安心した生活を送ることができるよう、社会全体で支えていくことを目的に「老人福祉法」に基づいて発展してきました。
高齢者に対するホームヘルプサービスや福祉施設の利用等、具体的なサービスの多くは2000年に導入された介護保険制度のもとで実施されています。
介護保険法に基づくサービスを利用するためには、あらかじめ介護の必要性や必要量についての認定(要介護認定)を受ける必要があり、市町村がその業務を行っています。
高齢者福祉で受けられるサービス
高齢者福祉の内容は、公的介護保険と同様に給付ではなく、介護が必要になった時に介護サービスそのものが提供される「現物給付」が原則です。
具体的には下記の5つになります。
その①:老人福祉施設
その②:訪問介護
その③:認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
その④:複合型サービス福祉事業
その⑤:日常生活用具給付等事業
それぞれわかりやすく説明していきます。
その①:老人福祉施設
老人福祉施設とは、老人福祉法を根拠として老人福祉を行う施設のことです。
具体的には下記の7つがあります。
- 老人デイサービスセンター
- 老人短期入所施設
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
- 軽費老人ホーム
- 老人福祉センター
- 老人介護支援センター
老人デイサービスセンター
老人デイサービスセンターとは、高齢者に対して入浴、食事の提供、機能訓練、介護方法の指導その他の便宜を提供する施設です。
また、健康チェックや日常生活動作(ADL)訓練、生活指導、レクリエーション、アクティビティなどのサービスを行っています。
利用できる対象者は下記の2つです。
- 65歳以上の者で、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある者が、やむをえない事由により介護保険法に規定する通所介護を利用することが困難であると認められるとき。
- 介護保険法その他の政令で利用を認められた者。
設置主体は社会福祉法人や市町村などで、介護保険の通所介護の多くは単独、または社会福祉法人の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などで提供されています。
施設数は、全国に2万3,597か所(2017年)あります。
老人短期入所施設
老人短期入所施設とは、養護者の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難となった高齢者に対して、特別養護老人ホームなどに短期間入所させ、養護することを目的とする施設のことです。
利用できる対象者は下記の2つです。
- 65歳以上の者で、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある者が、やむをえない事由により介護保険法に規定する通所介護を利用することが困難であると認められるとき。
- 介護保険法その他の政令で利用を認められた者。
養護老人ホーム
養護老人ホームは、介護の必要性とは関係なく身体的、精神的、環境的、または経済的な理由で困窮し、在宅で生活ができない高齢者が入所できる施設です。
生活に困窮した高齢者が自立した日常生活を送り、社会復帰ができるように支援することを目標にした施設です。
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入居する高齢者は老人福祉法施行令第10条に定められています。
対象者は下記のとおりです。
- 介護保険法その他の政令で利用を認められた者
- 行政による入所措置対象である。身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ介護保険法による施設への入所が困難な老人が対象となります。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームとは、無料又は低額な料金で、60歳以上の者を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設のことです。
下記の施設は除かれます。
- 老人デイサービスセンター
- 老人短期入所施設
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
食事サービスのあるA型、自炊を前提とするB型、食事や生活介護などが付帯するC型(ケアハウス)の3つの種類があり、C型の開設件数が増加しています。
老人福祉センター
老人福祉センターとは、地域の高齢者を支援する施設です。
無料又は低額な料金で、老人に関する各種の相談に応ずるとともに、老人に対して、健康の増進、教養の向上及びレクリエーションのための便宜を総合的に供与することを目的とします。
老人介護支援センター
老人介護支援センターとは、利用者の要望に合ったサービスを利用できるように、調整などを行う相談所です。
老人福祉に関する専門的な情報提供、相談、指導や、居宅介護を受ける老人とその養護者などと老人福祉事業者と間の連絡調整、その他援助を総合的に行います。
その②:訪問介護
訪問介護とは、利用者が在宅のまま自立した日常生活が出来るよう、訪問介護員などが利用者宅を訪問して、「身体介護」や家事面における「生活援助」を行うサービスのことです。
ホームヘルプとも呼ばれます。
その③:認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは、少人数の家庭的な雰囲気のなかで共同生活を支援するサービスです。
その④:複合型サービス福祉事業
複合型サービス福祉事業とは、2つのサービスを組み合わせて提供するサービスです。
訪問介護および小規模多機能型居宅介護を組み合わせて一体的に提供することが特に効果的な場合に提供される事業です。
利用者は下記のとおりです。
- 65歳以上の者で、身体上又は精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある者が、やむをえない事由により介護保険法に規定する通所介護を利用することが困難であると認められるとき。
- 介護保険法その他の政令で利用を認められた者。
その⑤:日常生活用具給付等事業
日常生活用具給付等事業は、市町村が行う地域生活支援事業の一つです。
障害者や高齢者などの日常生活がより円滑に行われるための用具を給付又は貸与すること等により、福祉の増進に資することを目的とした事業です。
サービス利用までの流れ
福祉施設などサービスを利用するには各種手続きが必要です。
下記は養護老人ホームの場合の流れです。
step
1相談・申込み
step
2調査・判断
step
3入所措置
措置とは
社会福祉において措置とは、要援助者のために法上の施策を具体化する行政行為、およびその施策の総称。福祉の措置。
その他の高齢者を支える仕組み
日常生活自立支援事業
日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な者に対し、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うことにより、地域において自立した生活が送れるよう支援します。
都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施主体となって福祉サービスの利用援助等を行います。
支援の内容は下記のとおりです。
- 福祉サービスの利用援助
- 苦情解決制度の利用援助
- 住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等
実施主体が設定している訪問1回あたり利用料 平均1,200円
有料老人ホーム
有料老人ホームは、民間が運営する高齢者が生活する施設です。
施設により利用料金は異なります。多くの施設では、入居時に一時金が必要になります。また、介護保険制度下のサービスを利用する場合は、利用料の1割または2割の自己負担等が必要になります。
有料老人ホームには、一般的に「健康型有料老人ホーム」「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」の3種類のタイプがあります。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設で、介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければなりません。
介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームは、入浴、排せつ、食事の介護、食事の提供等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設で、入居後介護が必要となっても、その有料老人ホームの介護職員等が提供する特定施設入居者生活介護を利用しながら居室で生活を継続することが可能です。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受けていない居住施設です。住宅型という名称の通り、自宅での生活に近いのが特徴です。
入居中に介護が必要となった場合は、介護保険制度下の訪問介護などのサービスを利用することができます。施設の介護職員等がサービスを提供する場合とサービスを外部委託する場合とがあります。
まとめ
高齢者福祉の内容は、公的介護保険と同様に給付ではなく、介護が必要になった時に介護サービスそのものが提供される「現物給付」が原則です。
長くなった末子結婚後の期間。
男女の平均的な生涯を3世代にわたってみてみると定年退職や末子結婚後の期間が長期化していることがわかります。
急速な高齢化によって、日本人の老後の生活を支える社会保障は膨れ上がる一方です。しかし、少子化によって税収は少なくなっています。
のみならず、現役引退後の日本人の寿命は2倍近くに倍増しているのです。
喜ばしいことではありますが、社会保障費の財源のことを考えると心配もあります。
将来、社会保障費を抑えることも想定されます。必要に応じて民間の保険で各自に合った保障を手厚くすることも一考する必要がありそうです。