社会保障

【公的介護保険制度とは】公的介護保険の自己負担割合や保険料を解説

公的介護保険制度とは?公的介護保険の詳細をわかりやすく解説

この記事では、日本の「公的介護保険」について解説していきます。

公的介護保険の基本的な情報を網羅していますので、コレだけ読めば自身や家族の保証状況を理解できます。


公的介護保険 とは、社会保険の1つです。

社会保険には下記の5つがあります。


社会保険は日本の社会保障制度の一部です。

公費負担、事業者負担、応能保険料負担等の制度を用いて、保険集団の範囲を強制的に拡張することにより、所得の再分配による国民の生活保障を図っています。



公的介護保険とは

公的介護保険とは

公的介護保険とは、介護が必要になった時に介護サービスを受けられる社会保険制度です。


公的介護保険は現金による給付ではなく、介護が必要になった時に介護サービスそのものが提供される「現物給付」が原則です。


40歳以上の人が保険料を支払い、介護が必要になったときは定率を負担して、必要なサービスを権利として受けられます。

公的介護保険制度は5年に1度をめどに見直しが行なわれ、介護報酬(各サービスの料金)は3年に1度見直しをされます。


高齢化が進むにつれ、介護を必要とする高齢者の増加や核家族化の進行、介護による離職が社会問題となりました。
こうした中、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的に、2000 年に創設されたものが介護保険制度です。


介護保険料は「給与天引き」「年金天引き」

現役世代である第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者では、介護保険料の支払い方法・保険料の計算法が異なります。


65歳以上の方(第1号被保険者)は、65 歳になった月から徴収開始されます。
原則、年金からの天引きです。

65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料の全国平均は月額5,869円です。


40 歳から64歳の方(第2号被保険者)は、40歳になった月から徴収が開始されます。給料をもらっている人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。

40歳から64歳の方(第2号被保険者)の介護保険料の全国平均は月額5,397円

保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同じように、標準報酬月額を使って算出されます。


標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、毎年4月~6月の給与額を平均し、その平均した額を標準報酬月額表の等級(報酬額の区分)にあてはめて決めるものです。

その等級によって「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」が決まります。


保険料は、その年の9月から翌年の8月まで基本同じ金額を使用します。


被保険者は年齢によって2つに分けられる

介護保険の加入者は65歳以上の「第1号被保険者」と、40歳から64歳の「第2号被保険者」に分けられます。

40歳未満の人は、公的介護保険制度の対象外です。

  40歳~64歳
(第2号被保険者)
65歳~
(第1号被保険者)
介護が
必要に
なった
原因
・16種類の特定疾病 16種類の特定疾病のみ
サービスを受けられる
原因を問わずサービスを
受けることができます
・上記以外の疾病
・ケガ
サービスを受けることはできない

※16種類の特定疾病

[1]がん末期 [2]関節リウマチ [3]筋萎縮性側索硬化症 [4]後縦靱帯骨化症 [5]骨折を伴う骨粗鬆症 [6]初老期における認知症 [7]パーキンソン病関連疾患 [8]脊髄小脳変性症 [9]脊柱管狭窄症 [10]早老症 [11]多系統萎縮症 [12]糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 [13]脳血管疾患 [14]閉塞性動脈硬化症 [15]慢性閉塞性肺疾患 [16]両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症


65歳以上の「第1号被保険者」

要介護状態になった原因が何であろうと、公的介護保険の介護サービスを利用することができます。


40~64歳の「第2号被保険者」

老化に伴う特定の病気によって要介護状態になった場合に限り、公的介護保険の介護サービスを利用することができます。

したがって、それ以外の原因で要介護状態になった場合は、公的介護保険の介護サービスを受けられません。


要介護度によって7段階に分けられる

介護サービスを受けるには「介護を要する状態にある」との要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定は、介護の度合いに応じて「要支援1~要支援2」「要介護1~要介護5」の7段階に分けられます。

 

要介護度 身体の状態


要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態。

食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、立ち上がりや片足での立位保持などの動作に何らかの支えを必要とすることがある。入浴や掃除など、日常生活の一部に見守りや手助けが必要な場合がある。
生活の一部について部分的に介護を必要とする状態

食事や排泄などはほとんどひとりでできるが、ときどき介助が必要な場合がある。立ち上がりや歩行などに不安定さがみられることが多い。問題行動や理解の低下がみられることがある。この状態に該当する人のうち、適切な介護予防サービスの利用により、状態の維持や、改善が見込まれる人については要支援2と認定される。


軽度の介護を必要とする状態

食事や排泄に何らかの介助を必要とすることがある。立ち上がりや片足での立位保持、歩行などに何らかの支えが必要。衣服の着脱は何とかできる。物忘れや直前の行動の理解の一部に低下がみられることがある。
中等度の介護を必要とする状態

食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりや片足での立位保持などがひとりでできない。入浴や衣服の着脱などに全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や理解の低下がみられることがある。
重度の介護を必要とする状態

食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服の着脱には全面的な介助が必要。立ち上がりや両足での立位保持がひとりではほとんどできない。多くの問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。
最重度の介護を必要とする状態

食事や排泄がひとりでできないなど、日常生活を遂行する能力は著しく低下している。歩行や両足での立位保持はほとんどできない。意思の伝達がほとんどできない場合が多い。



公的介護保険サービス利用の手続き

公的介護保険サービス利用の手続き

ご自身やご家族に介護が必要になった場合、介護サービスを利用するには要介護(要支援)認定を受けることが必要です。


具体的な手続きの流れは以下のようになります。

step
1
申請する

介護サービスの利用を希望する方は、市区町村の窓口で「要介護(要支援)認定」の申請をします(地域包括支援センターなどで手続きを代行している場合があります)。

また、申請の際、第1号被保険者は「介護保険の被保険者証」、第2号被保険者は、「医療保険の被保険者証」が必要です。


step
2
要介護認定の調査、判定などが行われます


【認定調査・主治医意見書】
市区町村の職員などの認定調査員がご自宅を訪問し、心身の状況について本人やご家族から聞き取りなどの調査を行います。調査の内容は全国共通です。
また、市区町村から直接、主治医(かかりつけ医)に医学的見地から、心身の状況について意見書を作成してもらいます(市区町村から直接依頼)。


【審査・判定】
認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、保険・福祉・医療の学識経験者による「介護認定審査会」で審査し、どのくらいの介護が必要か判定します。要介護度は要介護1~5または要支援1、2のいずれかとなります。

また、第2号被保険者は、要介護(要支援)状態に該当し、その状態が特定疾病 によって生じた場合に認定されます。


step
3
認定結果が通知されます

原則として申請から 30 日以内に、市区町村から認定結果が通知されます。


step
4
ケアプランを作成します

要介護1~5と認定された方は、在宅で介護サービスを利用する場合、居宅介護支援事業者と契約し、その事業者のケアマネジャーに依頼して、利用するサービスを決め、介護サービス計画 ( ケアプラン ) を作成してもらいます。

施設へ入所を希望する場合は、希望する施設に直接申し込みます。要支援1・2と認定された方は、地域包括支援センターで担当職員が介護予防サービス計画 ( 介護予防ケアプラン ) を作成します。


step
5
サービスを利用します

サービス事業者に「介護保険被保険者証」と「介護保険負担割合証」を提示して、ケアプランに基づいた居宅サービスや施設サービスを利用します。ケアプランに基づいた利用者負担は、費用の1割または2割※です。

※65 歳以上の第1号被保険者については、原則合計所得金額 160 万円(単身で年金収入のみの場合、年収 280 万円)以上の所得を有する方は、2割負担となります。( 第2号被保険者は、所得に関わらず1割負担 ) 



公的介護保険で利用できるサービス

公的介護保険で利用できるサービス

公的介護保険で利用できるサービスは、大きく3つに分けることができます。

自宅で生活する人のための「在宅サービス」、住み慣れた環境・地域でサービスを受けたい人のための「地域密着型サービス」、施設に入所する人のための「施設サービス」。


さらに細かく、下記の7つに分けることができます。

その①:自宅で利用するサービス
その②:日帰りで施設等を利用するサービス
その③:宿泊するサービス
その④:居住系サービス
その⑤:施設系サービス
その⑥:組み合わせサービス
その⑦:介護と看護の一体的なサービス


それぞれわかりやすく説明していきます。


その①:自宅で利用するサービス

自宅で利用するサービスには「訪問介護」「訪問看護」「福祉用具貸与」の3つがあります。


それぞれわかりやすく説明していきます。


訪問介護

訪問介護員(ホームヘルパー)が、入浴、排せつ、食事などの介護や調理、洗濯、掃除等の家事を行うサービスです。


訪問看護

自宅で療養生活が送れるよう、看護師が医師の指示のもとで、健康チェック、療養上の世話などを行うサービスです。


福祉用具貸与

日常生活や介護に役立つ福祉用具(車いす、ベッドなど)のレンタルができるサービスです。


その②:日帰りで施設等を利用するサービス

日帰りで施設等を利用するサービスには「通所介護(デイサービス)」「通所リハビリテーション(デイケア)」の2つがあります。


それぞれわかりやすく説明していきます。


通所介護(デイサービス)

食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練、口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供します。


通所リハビリテーション(デイケア)

施設や病院などにおいて、日常生活の自立を助けるために 理学療法士、作業療法士などがリハビリテーションを行い、 利用者の心身機能の維持回復を図るサービスです。


その③:宿泊するサービス

宿泊するサービスには「短期入所生活介護(ショートステイ)」があります。


施設などに短期間宿泊して、食事や入浴などの支援や、心身の機能を維持・向上するための機能訓練の支援などを行うサービスです。家族の介護負担軽減を図ることができます。


その④:居住系サービス

居住系サービスには「特定施設入居者生活介護」があります。


有料老人ホームなどに入居している高齢者が、日常生活上の支援や介護サービスを利用できます。

その⑤:施設系サービス

施設系サービスには「特別養護老人ホーム」があります。


常に介護が必要で、自宅では介護が困難な方が入所します。食事、入浴、排せつなどの介護を一体的に提供します。(※原則要介護3以上の方が対象)


その⑥:組み合わせサービス

組み合わせサービスには「小規模多機能型居宅介護」があります。


利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心に、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組み合わせて日常生活上の支援や機能訓練を行うサービスです。


その⑦:介護と看護の一体的なサービス

介護と看護の一体的なサービスには「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」があります。


定期的な巡回や随時通報への対応など、利用者の心身の状況に応じて、24 時間 365 日必要なサービスを必要なタイミングで柔軟に提供するサービスです。

訪問介護員だけでなく看護師なども連携しているため、介護と看護の一体的なサービス提供を受けることもできます。


公的介護保険の自己負担

公的介護保険の自己負担

公的介護保険のサービスでは、かかった費用の1割~3割を利用者が負担します。


ほとんどの利用者の自己負担額は、介護保険サービス料全体の1割です。


65歳以上で一人暮らしをしている方で「年金収入とそのほかの合計所得額」が280万円以上340万円未満の場合は2割負担になります。


65歳以上で一人暮らしをしている方で「年金収入とそのほかの合計所得額」が年間340万円以上ある場合、自己負担額は3割負担になります。


夫婦の場合は「年金収入とそのほかの合計所得額」が年間346万円以上で2割、463万円以上で3割負担です。


公的介護サービスの支援限度額

公的介護サービスの限度額は大きく2つに分けることができます。

その①:在宅サービス・地域密着型サービスの利用料
その②:施設サービスの利用料


それぞれわかりやすく説明していきます。


その①:在宅サービス・地域密着型サービスの利用料

在宅サービス・地域密着型サービスを利用する場合は、要介護度に応じて、1ヶ月あたりのサービスの支給限度額が設けられています。


限度額の範囲内でサービスを利用する際の負担は1割~3割(所得が一定以上の第1号被保険者は2~3割)ですが、上限を超えてサービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となります。


【住宅介護サービスの支給限度額(月額)】

要介護度 支給限度額
※超過分は自己負担
自己負担費用
1割の場合
要支援1 50,030円 5,003円
要支援2 104,730円 10,473円
要介護1 166,920円 16,692円
要介護2 196,160円 19,616円
要介護3 269,310円 26,931円
要介護4 308,060円 30,806円
要介護5 360,065円 36,065円

※支給限度額は標準的な地域の例です。大都市の場合、介護サービスの内容に応じて利用料が高くなるため、支給限度額は上記よりも高くなります。


その②:施設サービスの利用料

施設サービスの対象となる施設に入居した場合、施設・居室のタイプ(個室や相部屋など)や要介護度によって、自己負担額が変わります。

※所得の少ない人には軽減措置が設けられています。


【特別養護老人ホームの1ヶ月の自己負担の目安 ※要介護5のケース】

  相部屋を利用した場合 ユニット型個室を利用した場合
施設サービス費の1割 約24,500円 約27,000円
居住費 約25,200円
(840円/日)
約60,000円
(1,970円/日)
食費 約42,000円
(1,380円/日)
約42,000円
(1,380円/日)
日常生活費 約10,000円
(施設により異なる)
約10,000円
(施設により異なる)
一カ月あたり 合計 約107,700円 約139,000円



まとめ

公的介護保険とは、介護が必要になった時に介護サービスを受けられる社会保険制度です。

公的介護保険は現金による給付ではなく、介護が必要になった時に介護サービスそのものが提供される「現物給付」が原則です。

40歳以上の人が保険料を支払い、介護が必要になったときは定率を負担して、必要なサービスを権利として受けられます。


ご自身やご家族に介護が必要になった場合、介護サービスを利用するには要介護(要支援)認定を受けることが必要です。

日本の平均寿命の推移

ご覧のように、日本人の平均寿命は毎年のように更新しています。

健康寿命の分だけ平均寿命が延びていればハッピーなのですが、現状そうはなっていません。


天寿をまっとうするのなら、人の手を借りて生活を送る人生は必ずやってきます。

必要に応じて民間の介護保険も活用し、不安のない老後を迎えるための準備をしましょう。



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