不妊治療で生まれた子どもが出生数全体の8.6%に急増しています。
晩婚を背景に、2022年度からの保険適用の拡大によって利用者の裾野はさらに広がりそうです。
しかし、成功率は欧米より低く、不妊治療の開始を遅らせるデメリットを周知する必要がありそうです。
詳しく解説していきます。
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2022年度から不妊治療の保険適用が拡大された
従来は検査や、不妊の原因が明らかな場合の治療にのみ保険を適用していましたが、2022年度に体外受精や顕微授精といった生殖補助医療、人工授精が対象に加わりました。
顕微鏡を用いて極細のガラス管で1つの精子を卵子に注入する顕微授精はそれまで数十万円の費用が必要でしたが、保険適用後は3割の負担になりました。
また、医療費の自己負担をある一定額で抑える高額療養費制度を併用でき、収入状況によっては出費をさらに減らすこともできます。
不妊治療で出生する人が3%⇒8.6%に急増
保険適用を拡大する前に実施していた不妊治療の助成制度を利用した人は2021年度に13.6万人でした。
保険適用が拡大された2022年度に治療を受けた人は厚生労働省の調査で37.3万人に急増しました。
日本産科婦人科学会のデータをもとにした政府の集計では、体外受精と顕微授精で生まれた子どもの出生数全体に占める割合は2011年に3%でした。
2021年には8.6%に急増しています。
不妊治療で生まれた子どもの数は3.2万人から6.9万人に増えました。
一方、全体の出生数は右肩下がりで2023年には外国人を含む数で75.8万人と7年間でおよそ25万人減りました。
不妊治療で生まれた子どもの割合は上昇し続けており、1割を超えるのも時間の問題です。
日本は不妊治療を受けている患者数が世界第1位
出生数は増えても、治療の成功率が欧米より低いという課題があります。
米国や英国は2割を超えていますが、日本は1割強にとどまっています。
世界各国の生殖補助医療の実施状況をモニタリングしている組織「国際生殖補助医療監視委員会」が実施した調査では、日本の生殖補助医療の実施件数は60カ国中、第1位だったにもかかわらず、出産率は最下位という結果が出ています。
つまり、日本は不妊治療が世界で一番行われているが、一番出産できない国ということになります。
不妊治療を受ける人は40歳以上が突出して多い
女性の社会進出や晩婚化の影響で治療を受ける人は40歳以上が突出して多いです。
治療開始が遅れると成功率は上がりにくく、出生率の改善への効果も限定的です。
保険治療には年齢や回数に制限があります。
体外受精と顕微授精については40歳未満で6回まで、43歳未満で3回までとなっています。
43歳を超えると保険は適用されません。
見直しを求める声が広がり、2024年度の診療報酬改定でも論点になりました。
不妊治療は43歳を超えると成功率が5%以下に低下することから、制度変更は見送られました。
38歳あたりから妊娠率が低下する
女性の卵巣に含まれる卵子の数は、思春期のときには、だいたい7万個あり、それが年齢とともにだんだん減っていきます。
女性が生物的に妊娠可能となるのは15歳頃からです。
社会的には結婚は20歳前後ぐらいからとして35歳までの15年間ぐらいが妊娠適齢期です。
38歳あたりから妊娠率が低下することが分かっています。
不妊治療は児童手当の拡充よりも費用対効果が高い
日本政府内には、少子化対策としての費用対効果の高さを訴える声もあります。
2022年度に保険適用された不妊治療に関連した医療費はおよそ900億円でした。
巨額の予算を投じる児童手当(1兆5246億円)の拡充よりも効果的との声もあります。