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早期・希望退職は募集方法によって「会社都合・自己都合」が変わる

早期・希望退職は募集方法によって「会社都合・自己都合」が変わる

近年は新型コロナウイルスやDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応などによって、早期・希望退職を募集する企業は高水準が続いています。


ご存じの通り、「会社都合・自己都合」の違いによって、失業給付を受けられる期間が異なってきます。

なんと、会社が早期・希望退職を募集する方法によってそれらが変わってくるのです。


早期退職優遇制度で退職した場合は退職金が多くなることが多いですが、それだけでなく、「会社が募集する方法」や「将来受け取ることになる厚生年金」なども考慮して退職を考えることが大事です。


詳しく解説していきます。


早期・希望退職を募集する企業は高水準が続く

早期・希望退職を募集する企業は高水準が続く

早期・希望退職を募集する企業は2020年に新型コロナウイルス禍で大幅に増え、その後も高水準が続いています。

東京商工リサーチの調査によると、21年に早期・希望退職を募集した上場企業は84社。

うち人数を公表した69社の募集人数は計1万5892人で、前年に比べ14.7%減少したものの2年連続で1万5000人を超えました。


赤字企業だけでなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応など事業の再構築に向けた、黒字企業による大型・先行型の募集もあるのが特徴です。

今年3月には富士通が50歳以上の社員を対象に募集した早期退職に過去最大規模の3031人が応募したと発表し、話題を集めました。


早期退職優遇制度で退職した場合は退職金が多くなる

早期退職優遇制度で退職した場合は退職金が多くなる

もらえる退職金の額は通常、勤続年数や退職時の役職、給与などで決まります。

早期退職では退職金の割り増しなど金銭的な優遇を設けることが多いです。

厚生労働省の18年の調査では、大卒・大学院卒の人が定年退職した場合の退職金は平均1983万円で月収の38.6カ月分。

一方、早期退職優遇制度で退職した場合は2326万円、月収の43.4カ月分だ。金額でみると早期退職が17%多いです。


募集方法によって退職理由(会社都合・自己都合)が変わる

募集方法によって退職理由(会社都合・自己都合)が変わる

ただし優遇条件は企業によって千差万別です。

さらに注意が必要なのは、一口に早期退職や希望退職といっても募集の仕方に様々なパターンがあることです。

特定社会保険労務士は「募集方法によって退職理由が変わり、結果として雇用保険の失業給付をもらえる条件も変わる」と指摘しています。


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募集期間が3カ月以内なら離職票に記載される退職理由が「会社都合」になる

一つ目のパターンは、業績悪化や事業の再構築などに伴って、退職する社員を一定期間募集するやり方です。

この場合は募集期間が3カ月以内なら離職票に記載される退職理由が「会社都合」になります。

退職前の1年間に6カ月以上、雇用保険に加入していればハローワークで受給資格が決定してから7日間が過ぎた後、失業給付を受けられます。

45歳以上60歳未満で勤続20年以上なら、330日分まで可能です。

給付額は退職時の年齢や退職前の給与で変わり、日額2000~8000円程度になります。


3カ月を超える場合は退職理由が「自己都合」になる

一方、会社が早期退職優遇制度を定めて常に募集する場合や、一時的な募集でも募集期間が3カ月を超える場合は退職理由が「自己都合」になります。

自己都合で失業給付を受けるには、退職日以前の2年間に1年以上の雇用保険加入が必要です。

給付が始まるのは7日間に加えて2カ月の「給付制限期間」が過ぎた後で、「障害者等の就職困難者」以外はすべての年齢で給付日数が最大150日までと、会社都合の半分以下になります。


定年が55歳の場合

このほか、企業によっては通常の60歳定年以外に従業員が「55歳定年」などを選択できる「選択定年制」を採用するケースもあります。

この場合は通常の定年退職と同じ扱いになります。

給付日数が最大150日までなのは自己都合と同じだが、受給資格決定から7日間が過ぎれば受給できます。


退職金だけでなく、厚生年金が減ることも考慮しよう

退職金だけでなく、厚生年金が減ることも考慮しよう

早期・希望退職に応募するなら、慎重に決めるようにしましょう。

すぐに再就職できない場合や、再就職しても年収が減る場合は生涯収入の減少に加えて、老後に受け取る厚生年金の額も減る可能性が大きいです。

老後資金が足りなくならないか、よく検討しましょう。


退職後に扶養に入らない場合は国の制度を活用しよう

退職後に扶養に入らない場合は国の制度を活用しよう

すぐに再就職しない場合は、健康保険や公的年金など社会保険を選ぶことになります。

配偶者が働き、厚生年金と健康保険に加入しているケースで扶養家族になれば、保険料の追加負担は生じません。

ただし自分の年収など様々な条件をクリアする必要があるので、配偶者の勤務先に確認しましょう。


配偶者などの扶養家族に入らないなら60歳まで国民年金に加入する必要があるため、市区町村で国民年金への切替手続きをする必要があります。

健康保険については、退職前の会社の健康保険に最大2年間まで任意継続加入するか、国民健康保険に切り替えるかを選ぶことになります。

会社都合で退職する場合は、国民健康保険料の減免制度があり、健康保険の任意継続より負担が減るケースもあるります。


雇用保険の失業給付の手続きも知っておきましょう。

まず住んでいる自治体を管轄するハローワークで申請する。その後は原則として4週間に一度、自分でハローワークに出向いて失業の認定を受ける必要があります。


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