厚生労働省はパートら短時間労働者が厚生年金に入れる要件を緩和する検討に入りました。
2024年に従業員51人以上の企業で働く人に広がりますが、従業員数の要件撤廃も視野にさらなる対象拡大を議論します。
年金財政の悪化で、国民年金(基礎年金)は将来の目減りが予想されています。
国民年金の上乗せ部分である厚生年金を受け取れる人を増やし、老後資金の底上げを狙います。
詳しく解説していきます。
パートが厚生年金に加入できる要件を緩和する
2022年10月に始まった社会保障審議会の年金部会で、有識者ら委員から厚生年金の対象拡大を求める声が多く上がりました。
現状のままでは国民年金の受給水準は2046年度に19年度比で約3割減るとの試算があります。
厚労省は具体策の協議を経て24年末までに結論を出し、25年の通常国会に関連する法改正案の提出を目指しています。
厚生年金は国民年金に加えて報酬に比例した金額を合わせてもらえ、会社員らが受け取れます。
パートの一部や自営業者らは国民年金しかもらえません。
パートでも厚生年金を受け取るには従業員101人以上の企業に勤務し、週20時間以上働き、月収が8.8万円(年収換算で106万円)以上で、学生でないといった条件を満たす必要があります。
政府は共働き世帯の増加などで、パートが厚生年金に加入できる要件の緩和を進めてきました。
22年10月に従業員数の要件を501人以上から101人以上に変え、24年10月には51人以上まで引き下げることが決まっています。
次なる制度改正で従業員数の要件撤廃を含めたさらなる緩和を検討します。
個人事業所で働く人の厚生年金の対象業種の拡大も模索
個人事業所で働く人の厚生年金の対象業種の拡大も模索しています。
10月の部会で従業員5人以上を雇う個人事業所について、飲食や旅館など対象外となっている業種を追加すべきだとの意見が出ました。
現在は製造や土木といった16業種のほか、10月に加えた弁護士や弁理士ら「士業」が対象となっています。
これらの見直しが実現すれば、短時間労働者らが将来もらえる年金額は増えます。
厚生年金の保険料を払う人も増え、年金財政の下支えになります。
一方、企業や事業主側の負担は増えます。
厚生年金の保険料は健康保険と同じく、労働者本人と事業者が折半するため、労働者1人あたりのコストは高くなります。
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年金の改革はさまざまな案が提示されている
国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位シナリオ)によると、15年に約7700万人いた現役世代(15~64歳)は40年に約6000万人まで減少します。
国内で人手不足は深刻化し、雇用に関連するコスト増が見込まれるなか、人材の獲得競争はさらに激しくなりそうです。
年金の改革をめぐっては厚生年金のパート適用拡大のほか、年金の基礎部分となる国民年金の底上げ策も検討事項になります。
厚生年金の財源などで穴埋めして国民年金の給付水準の低下を抑えたり、国民年金の納付期間を現状の40年から45年に延ばしたりする案があります。
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フリーランスやギグワーカーを支える仕組みも課題
さらに中長期的には、フリーランスやギグワーカーといった従来の枠組みに収まらない労働者を支えるための新たな仕組みの創設も課題となります。
政府は少子高齢化が進むなか、社会保障制度の維持に向けて9月に全世代型社会保障構築会議の議論を再開しました。
多様な労働者を厚生年金など社会保険の対象に加える「勤労者皆保険」は主要なテーマに浮上します。
海外ではドイツがフリーランスの一部を日本の厚生年金に相当する年金制度の加入対象にしています。
これには、芸術家やジャーナリストらも含まれます。
このほか、近年急増しているアプリなどを通じて配達業務などを請け負うギグワーカーについても、欧米を中心に社会保険の対象に加えようとする議論が進んでいます。
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