海外への留学生を2033年までに年50万人にする目標の実現に向け、文部科学省は給付型奨学金の対象者を2024年度に現在に比べ7割増の3万人にする方針を固めました。
これらに向け2024年度予算案の概算要求に114億円を盛り込みます。
国際競争力向上へグローバル人材の育成のための政策です。
詳しく解説していきます。
留学生の奨学金を拡充する予算案に114億円
政府の教育未来創造会議は2033年までに日本人留学生を新型コロナウイルス禍前の年22.2万人から年50万人に、外国人留学生を年31.8万人から年40万人に増やすよう提言しました。
文部科学省は経済面の支援策などを検討していました。
派遣する留学生の奨学金を拡充するため2024年度予算案の概算要求に114億円を盛り込みます。
留学支援の給付型奨学金には「協定派遣型」と「学部学位取得型」などがある
留学支援の給付型奨学金は現在、交換留学など中短期の留学を支援する「協定派遣型」と、学位取得を目指す「学部学位取得型」「大学院学位取得型」などがあります。
協定派遣型は月額で最大10万円を支給し23年度は約1万6900人が利用しています。
2024年度はこの受給者を約1万3000人分増やし、3万人を対象にします。
最大で月11万8000円を支給する学部学位取得型、月額最大14万8000円の大学院学位取得型の受給者は2023年度の600人から700人強に増やします。
自治体などと連携して高校を卒業してすぐ海外大に進学する生徒らを支援します。
留学意欲は外国に比べて低い
内閣府が2018年度に若者約1000人を対象に実施したアンケートによると、経済的な理由や語学力不足などを理由に「外国留学をしたいと思わない」と答える若者は全体の5割を超えています。
2割程度の韓国、米国などに比べて留学意欲が低いです。
学位取得を目的とする留学者数は2020年に4万2000人でしたが、2033年には年50万人のうちの15万人に引き上げたい考えです。
実現すればフランス(10万人)や米国(10万9000人)、ドイツ(12万3000人)を抜く規模となります。
文科省としては中短期留学者の支援を充実させ、留学機運を醸成したい考えです。
高校段階での意欲喚起も重要とみており、留学情報の発信やプラン策定などを担う「留学コーディネーター」の高校への配置も進めます。
外国人留学生への奨学金も拡充する方針
外国人留学生も受け入れ拡大へ日本学生支援機構に誘致戦略を立案する部署を新設します。
同機構によると、日本の在学者に占める外国人留学生の割合は5%。
英国の20%、オーストラリアの30%と比べ低いです。
5月に富山市と金沢市で開催された主要7カ国(G7)教育相会合の閣僚宣言では「G7各国間の国際交流をコロナ前の水準に戻し、それ以上に拡大する」と盛り込まれました。
文部科学省はG7とともに東南アジア諸国連合(ASEAN)との大学間共同教育プログラムの策定支援や、これらの国から受け入れる留学生への奨学金を拡充する方針です。