流産や死産を経験し、本来は取得すべき産後休業に入れない女性がいることが明らかになりました。
法令では出産だけでなく、流産や死産でも原則8週間の産休を義務付けていますが、約15%が取得していません。
母体の回復や精神的なケアには時間を要します。
流産や死産を経験した方が産休を取得するためには、企業や職場の理解を深める必要がありそうです。
詳しく解説していきます。
流産や死産でも原則8週間の産休を義務
流産や死産で子どもを失うことは「ペリネイタル(周産期)・ロス」と呼ばれています。
心への負荷も大きく、うつ病や不安障害につながる恐れもあります。
周囲に話すのをためらう人も多く、気づかれにくい側面があります。
労働基準法では原則産後8週間は働かせることを禁じ、出産した女性は産休に入ります。
これは、妊娠12週(4カ月)以降に流産・死産した女性にも適用されます。
厚生労働省は医学的に「後期流産」にあたる同週以降からを死産と定義しています。
この場合、市区町村への届け出を義務付けています。
制度は十分に知られていない
流産や死産も産休の対象になるという事は十分に知られていません。
厚労省は2022年9月、働く女性の健康管理に関する情報発信サイトに死産の場合も産休の対象であることを明記しました。
企業側は制度を理解した上で、社員の状況を把握し法令を順守するべきでしょう。
産休を取らなかった人は15・8%
2021年に流産・死産などの経験者を対象にした調査では、妊娠12週以降で経験した女性171人のうち、産休を取らなかった人は15・8%でした。
非正規雇用者(32人)に限ると34・4%に高まり、正社員(6・6%)との開きは大きくなります。
取得しなかった理由
取得しなかった理由は「制度を知らなかった」「取らせてもらえなかった」「早く復帰したかった」などです。
法定の産休対象とならない妊娠12週未満の流産経験者に限ると、5割超が当日または数日後に職場に復帰していました。
2022年の死産数は約1万5000人
厚労省の人口動態統計(概数)によると、2022年の死産数は約1万5000人でした。
全国労働組合総連合(全労連)の2020年の調査では、2015年以降に妊娠した働く女性のうち、5人に1人が流産を経験していることになります。
流産・死産を経験した男性向けの法的な休業制度はない
日本には配偶者が流産・死産を経験した際、男性向けの法的な休業制度はありません。
出産を前提としている育児休業も対象外です。
英国では死産の場合、配偶者が最大14日間の特別休暇を取得できます。
妻を支える役に徹しようと努めた夫が、時間がたってから喪失感を募らせる場合もあります。
精神的な苦痛は性別によって変わるわけではなく、男性も望めば休業できる仕組みを求める声もあります。