健康保険や厚生年金保険などの社会保険料は、給与所得者の場合は給与から天引きされます。
社会保険料は毎年秋になると金額が変わることがあります。これは、保険料を計算する基準となる「標準報酬月額」が更新されるためです。
標準報酬月額は何に使われるのか
標準報酬月額は、健康保険や厚生年金、介護保険といった社会保険の保険料などを計算する際に利用します。
社会保険料は基本的に収入に応じて負担する仕組みです。
ただ、毎月の給与は一定ではなく、1円単位で変わってきます。
計算などの手間を減らすため、区切りの良いおおよその金額となる標準報酬月額を使います。
標準報酬月額はどのように決まるのか
標準報酬月額は、基本的には4~6月の給与の平均額が基になります。
平均給与を数千~数万円の間隔で区切った「等級」にあてはめ、各等級ごとに定められた金額を採用します。
例えば厚生年金は等級が32に分かれており、標準報酬月額は8万8000円から65万円までです。
平均給与が23万円以上25万円未満なら標準報酬月額は16等級の24万円となります。
等級の数は制度で異なり、健康保険と介護保険では50等級に分かれます。
社会保険料の計算方法
標準報酬月額に加入する制度の保険料率を掛けた額が毎月の保険料となります。
厚生年金の場合は保険料率が18・3%です。
本人負担分はその半分のため、さらに2分の1を掛けた金額を負担します。
健康保険と介護保険では加入する制度ごとに定められた、本人負担分の料率を掛けます。
会社の手当も「給与」になるのか
給与には基本給のほか残業手当、住宅手当、家族手当なども含まれます。
通勤手当では3カ月分や6カ月分の定期券代をまとめて受け取ることもあります。
こうした場合は1カ月分を計算して加えます。
通常は4~6月の給与の平均をもとに標準報酬月額を決め、9月分から翌年8月分までの社会保険料に反映します。
賞与も反映されるのか
賞与の額も社会保険料に影響します。ただ、支給される回数で負担の仕方が2つに分かれます。
年3回以下の場合は1000円未満を切り捨てた金額を「標準賞与額」とし、保険料率を掛けて社会保険料を計算し、負担します。
支給が年4回以上の場合は総額を12カ月で割り、標準報酬月額の基準となる給与に加えます。
なお、会社から受け取るお金のうち、臨時で支払われる結婚祝い金や出産祝い金、傷病見舞金などは対象外です。
給与が変わっても社会保険料は1年間変わらないのか
基本給や毎月一定額が支払われる手当などが大きく増減すれば、保険料は変わることがあります。
変動した月から3カ月の平均給与の標準報酬月額が従来と2等級の差がついた場合などです。
昇給や降給のほか、転居に伴い通勤手当が増えたり子どもが生まれて家族手当が増えたりした場合などに該当しやすくなります。
残業を抑えると社会保険料が減るのか
確かに4~6月の残業手当が少なければ社会保険料の負担を抑えられる場合があります。
ただし、標準報酬月額を下げることが単純にメリットとは言い切れません。
例えば、厚生年金は納めた保険料が多ければ、将来受け取る金額が増えるのが原則です。
納めるだけでなく、受け取る額にも反映されるのか
健康保険でも病気やけがで会社を休んで十分な給与が支払われない場合の傷病手当金は、標準報酬月額をもとに支給額が決まります。
出産の際に受け取る出産手当金も同様です。
給付を受ける可能性を考えれば、残業代を無理に抑える必要はありません。