全ての国民が加入する基礎年金(国民年金)の給付抑制策「マクロ経済スライド」を予定より早く止める検討が2022年10月にも始まります。
給付が増える分、会社員らが払う厚生年金の保険料や国庫負担金で穴埋めする想定です。
厚生労働省の試算では給付が減る会社員は一部の高所得者に限られます。
安定財源なしに国庫負担金を増やせば、ツケは将来世代に回ることになります。
詳しく解説していきます。
動画でも解説しています
年金には「国民年金」と「厚生年金」がある
老後の安心につながる公的年金には自営業者らが入る国民年金と、会社員らが加入する厚生年金があります。
全国民が加入する基礎年金と呼ばれる土台のうえに厚生年金が報酬に比例して上乗せする2階建て構造になっています。
国民年金の加入者がもらえるのは基礎年金の部分だけで、給付水準は厚生年金に比べて低いです。
このままでは国民年金は3割弱下がる
公的年金は現役世代の保険料と国庫負担が原資です。
少子高齢化で負担と給付のバランスは年々偏るため、マクロ経済スライドと呼ぶ仕組みで現役世代の減少や寿命の延びなどを反映して実質的に年金給付を減らしながら制度が持続できるように調整します。
「100年安心」を掲げて2004年に導入した。
5年に1度の財政検証では基礎年金の給付を46年度まで減らし続ける必要があるとの見方が出ていました。
現行ルールでは46年度には19年度の水準に比べて3割弱下がる見通しです。
国民年金は20歳から40年間、月1万6590円の保険料を納めた場合、現行水準では65歳から月6万4816円の給付を受けられます。
これが3割弱減る可能性があるのです。
給付水準が減りすぎる事態を避けるため、厚労省はマクロ経済スライドの早期停止を検討します。
多くの人は年金の受給額が増える
会社員が払った保険料が基礎年金の底上げに使われることには反発も予想されます。
ただ厚労省によると大半の世帯で給付水準が現在より上がるといいます。
2階部分の厚生年金の減額幅以上に1階の基礎年金が底上げされる人が多いためです。
「損」が出るのは、19年の賃金水準で世帯年収が1790万円以上の場合に限られると厚労省は試算しています。
恩恵が幅広く行き渡るかのような試算にはからくりがあります。
国庫負担が補う金額のウエートが高いことです。
基礎年金は半分を国庫負担金で補う仕組みです。
基礎年金の給付抑制を前倒しでやめれば、必要な国庫負担金も増えます。
制度見直しで、国庫負担が40年までの累計で数兆円分増えるとの試算もあります。
まとめ
全ての国民が加入する基礎年金(国民年金)の給付抑制策「マクロ経済スライド」を予定より早く止める検討が10月にも始まります。
給付が増える分、会社員らが払う厚生年金の保険料や国庫負担金で穴埋めする想定です。
厳しい財政状況が続くなか、さらなる国庫負担の増加には確実な財源確保が必要になります。
誰の負担が増え、誰の給付を維持するのか。将来世代への影響も含めて丁寧な説明が欠かせません。
基礎年金の底上げには老後の貧困を防ぎ、年金制度への信頼を守る効果もあります。
適正な負担と給付のあり方を巡り、国民的な議論が欠かせません。
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