政府が2022年12月23日に閣議決定した2023年度予算案は、過去最大の114兆3812億円でした。
そのうち、社会保障費は過去最大の36.9兆円となりました。
社会保障費の3割強を占める医療関係は2022年度当初予算と比べて0.5%の増加に抑えましたが、薬価の引き下げ頼みの側面は否めません。
新型コロナウイルス禍で手厚くした診療報酬など有事対応からも抜けきれていません。
高齢化で膨張圧力が増す中で効率化が急務です。
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2023年度予算案、社会保障費は過去最大の36.9兆円
2023年度当初予算案で社会保障は一般会計総額の3割を占めます。
2022年度当初予算と比べて6154億円(1.7%)増えました。
医療関係の支出は2022年度比で587億円(0.5%)増えて12.2兆円となりました。
新たな制度改正によって効率化できた分は少ないです。
医療提供体制のために主なものだけで17兆円
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で財務省が11月に示した資料には、「コロナの医療提供体制のために主なものだけで17兆円程度の国費による支援が行われた」との記述が盛り込まれました。
ようやく国内でもコロナ対策は平時への移行を探る局面になった一方で、医療体制の有事対応の手じまいは遠いです。
2021年度に2兆円を支出した病床確保料は今年10月に要件を厳格化しました。
しかし財政制度等審議会の資料によると1日当たり最大40万円を上回る病床確保料は、平時の診療収益の2倍から12倍の水準です。
コロナ向けの病床確保が通常の医療を圧迫しているという指摘もあります。
一段の見直しを視野に入れるべき時期に来ています。
後期高齢者は2025年に2180万人
厚生労働省は2023年の通常国会で、75歳以上の保険料を2024年度から引き上げることなどを盛り込んだ関連法改正案の提出を目指しています。
ただ、現役世代の負担軽減を主な目的としていることもあり、国費の減少分は50億円にとどまります。
保険料や公費で賄う前段の患者本人の窓口負担のさらなる拡大といった課題は先送りのままです。
1人当たりの医療費が75歳未満の約4倍に達する後期高齢者は2021年から2025年にかけて16%増え、2180万人になる見込みです。
負担と給付のバランスを見直さなければ、医療保険財政の持続性が危うくなりかねません。
社会保障費の抑制は薬価頼み
年金の改定分を除いた社会保障費の自然増は4100億円で夏時点の見込みから1500億円圧縮しました。
半分弱は薬価引き下げによるものです。
社会保障費の抑制は薬価頼みの構図が続いています。
その薬価も2023年度予算は様相が変わりました。
今回の改定は対象範囲がもともと決まっていません。
前回の改定と同じように7割の品目を対象にすれば厚労省の試算で4900億円の医療費の削減につながるはずでした。
ただ、原材料費の高騰で採算が取れない薬への配慮や、新薬の価格を改定前と遜色ない水準に増額する措置が相次ぎました。
結局、3100億円にとどまり、削減幅は前回から3割弱減りました。
年金額は2022年度の水準より増える
およそ13兆円を計上する年金は、2023年度の支給額改定で給付を物価の伸びより抑制する「マクロ経済スライド」を3年ぶりに発動します。
ただ、物価上昇を反映し、年金額は2022年度の水準より増えます。
制度の安定性を高めるにはマクロ経済スライドを物価の下落時でも発動し、給付の抑制を進める抜本的な見直しが必要ですが、機運は乏しいです。
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膨張ペースが際立つ介護
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22年で社会保障費は2倍以上
2000年度の社会保障費は約17兆円と、今の半分以下でした。
給付は膨らむ一方、2022年の出生数は80万人を初めて割り込む見通しで、将来の支え手も減ります。
団塊の世代が全員75歳以上になり、膨張圧力が一段と増す2025年まで残された時間は少ないです。
まとめ
政府が閣議決定した2023年度予算案は、過去最大の114兆3812億円でした。
そのうち、社会保障費は過去最大の36.9兆円となりました。
2022年度当初予算と比べて6154億円(1.7%)増えました。
年金の改定分を除いた社会保障費の自然増は4100億円で夏時点の見込みから1500億円圧縮しました。
半分弱は薬価引き下げによるものです。
社会保障費の抑制は薬価頼みの構図が続いています。
2000年度の社会保障費は約17兆円と、今の半分以下でした。
社会保障費は22年で約2倍以上になったことになります。
1人当たりの医療費が75歳未満の約4倍に達する後期高齢者は2021年から2025年にかけて16%増え、2180万人になる見込みです。
負担と給付のバランスを見直さなければ、医療保険財政の持続性が危うくなりかねません。
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