企業に勤めずフリーランスとして働く人が増加傾向にあります。
安心して働くには、病気やけがをしても生活が保障される保障制度が求められます。
厚生労働省は労災保険に原則全業種のフリーランスが加入できるようにする方針です。
制度の変更によりフリーランスの加入対象者は約270万人に広がる見通しです。
詳しく解説していきます。
フリーランスは総計460万人 労働人口の15人に1人
フリーランスとは、企業や団体として仕事を得るのではなく、個人として仕事を得て働くことを言います。
内閣官房の調査では2020年時点で全国に総計460万人いることが分かっています。
労働人口の15人に1人の計算です。
新型コロナウイルスの感染拡大を機に増加傾向にあります。
労災保険に入れるフリーランスの対象を全業種に広げる
フリーランスは企業に雇用されていないため、仕事や通勤中に起きた事故や病気の治療費などをカバーする労災保険に一部の業種の人しか加入できません。
これまでは自転車配達員、歯科技工士など業種ごとに徐々に保険に入れる対象を広げてきました。
こうした加入対象業種は現在25種あります。
厚労省は今回の改革で労働者災害補償保険法の施行規則を改正し、労災保険に入れるフリーランスの対象を全業種に広げる方針です。
2024年秋の施行を目指しています。
加入は任意で、ライターや研究者、デザイナーなども対象になります。
そのうち企業から業務委託を受け、企業で働く労働者と同じ環境にあることが保険加入の条件になる見通しです。
新制度が始まれば利用者が増加する可能性が高い
現在70万人ほどのフリーランスが労災に加入していたとみられています。
事業者からの委託を受けているフリーランスは約270万人とされ、新制度が始まれば利用者が増加する可能性が高いです。
保険料は月3千~5千円ほど
保険料率がいくらになるかはまだ決まっていません。
労災保険料は雇用者の場合は企業が負担しています。
しかし、フリーランスは個人負担で月3千~5千円ほど支払うケースがあります。
海外では会社が費用を負担する形での保護制度の議論も進んでおり、フランスでは一部企業がフリーランスの保険料を負担する労災補償制度を法律で定めています。
労働者をどう線引きするかは難しい問題
働き方の多様化に伴い、労働者をどう線引きするかは難しい問題です。
フリーランスは労働法の観点では「個人事業主」で、一律に労働者扱いできません。
フリーランスが保険に入らずに仕事を請け負い、事故にあったら裁判を起こして労災認定をもらおうとするケースも予想されます。
企業側が契約を結ぶ際に、あらかじめ任意で労災加入しているか確認する仕組みが求められます。
EUでは個人事業主と労働者を線引きする基準作りを進めています。
契約企業が報酬水準を決めていることや、労働状況や成果を監視・評価していることなど、7項目のうち3つ以上を満たしていれば労働者とみなす案があります。
日本ではこうした規定はありません。