厚生労働省が1月19日、2024年度の年金支給額を発表しました。
物価や賃金の上昇を受けた2024年度の公的年金額は前年度比で2.7%増額となり、1992年度以来32年ぶりの伸びとなりました。
4、5月分をまとめて支給する6月の受け取り分から適用されます。
年金額は増えますが、年金財政の安定のために支給額を抑える「マクロ経済スライド」により、物価の伸びには届きません。
マクロ経済スライドはデフレ下で何度も発動が見送られており、抑制の長期化で将来の給付額が想定より減る懸念が高まっています。
詳しく解説していきます。
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68歳以下の人は1人当たり1750円増の月6万8000円
自営業者らが入る国民年金は40年間保険料を納めた場合、68歳以下の人は1人当たり1750円増の月6万8000円になります。
厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯は、6001円増の月23万483円になります。
モデル世帯は賞与を含む月額換算で43万9千円で40年間働いた夫と専業主婦のケースのことです。
年金額は直近1年間の物価変動率と過去3年度分の実質賃金の変動率をもとに、毎年4月に改定されています。
2023年度は厚生年金で月22万4482円、67歳以下の人の国民年金は月6万6250円でした。
マクロ経済スライドの影響で、国民年金は実質年3600円ほど、厚生年金では同1万1500円ほど目減り
支給額は2年連続で増えましたが物価や賃金の上昇分を下回っています。
物価や賃金の伸びよりも支給額を抑えるマクロ経済スライドの影響で、国民年金は実質年3600円ほど、厚生年金では同1万1500円ほど目減りします。
2024年度の物価や賃金を反映した改定率は3.1%でした。
2023年の物価上昇率(3.2%)と2020~2022年度の名目賃金変動率(3.1%)を考慮し賃金が物価を下回ったため賃金の変動率が採用されました。
そこからマクロ経済スライドによる0.4%分の抑制分を差し引き、最終的な改定率は2.7%となりました。
マクロ経済スライドによる将来の年金への影響
マクロ経済スライドは2004年に導入されてから4回しか発動されていない
公的年金は現役世代から集めた保険料を高齢者に給付する仕組みのため、少子高齢化が進むと年金財政が難しくなります。
このためマクロ経済スライドで支給額を抑えています。
しかし物価や賃金が下落するデフレ下では発動しないルールのため、2004年に導入されてからの20年間で4回しか発動されていません。
マクロ経済スライドが遅れると将来の給付水準が過度に低下する
支給額の抑制が想定より遅れると、マクロ経済スライドを発動させる期間が長期化し、将来の給付水準が過度に低下します。
特に基礎年金の抑制は現行のままなら、2046年度まで続く見通しです。
この結果、現役男性の平均手取り収入に対する年金額の比率を示す基礎年金の「所得代替率」は、2019年度の36.4%から2046年度には26.5%と約3割も低下する見通しです。
抑制期間の長期化を防ぐために、賃金や物価の下落局面でも毎年スライドを発動させるための議論が必要、との意見もあります。
2025年は5年に1回の年金制度改正
2025年は5年に1回の年金制度改正の年にあたり、2024年中に具体的な改革案が示されます。
厚労省の審議会では財政に余裕のある厚生年金が基礎年金に資金支援して、給付水準の抑制を前倒しで終了する案が出ました。
就労を促進して高齢者の手取り収入を増やす方向の改正も議論されています。
一定の所得のある高齢者の年金支給を減額する在職老齢年金制度も見直しを求める声が強いです。
老後の収入を充実させるために、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)など私的年金の活用促進も重要になります。
まとめ
物価や賃金の上昇を受けた2024年度の公的年金額は前年度比で2.7%増額となり、1992年度以来32年ぶりの伸びとなりました。
4、5月分をまとめて支給する6月の受け取り分から適用されます。
自営業者らが入る国民年金は40年間保険料を納めた場合、68歳以下の人は1人当たり1750円増の月6万8000円になります。
厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯は、6001円増の月23万483円になります。
モデル世帯は賞与を含む月額換算で43万9千円で40年間働いた夫と専業主婦のケースのことです。
支給額は2年連続で増えましたが物価や賃金の上昇分を下回っています。
物価や賃金の伸びよりも支給額を抑えるマクロ経済スライドの影響で、国民年金は実質年3600円ほど、厚生年金では同1万1500円ほど目減りします。