岸田文雄首相は2月6日、少子化財源確保のために医療保険料に上乗せする新たな「支援金制度」の負担額が平均で1人当たり月500円弱になるとの見通しを示しました。
同時に、賃上げによって実質的な負担増にならないことを強調しました。
しかし、賃上げが実施されない企業で働く人は首相の説明通りにならない場合もありそうです。
詳しく解説していきます。
少子化支援金のために「1人あたり月500円弱負担」
政府は2024年度からの3年間で年3.6兆円の予算を確保して、児童手当の増額など少子化対策の充実に充当します。
その財源のうち1兆円を「支援金制度」で賄います。
首相は2月6日の衆院予算委員会で「支援金の総額を1兆円と想定すると、2028年度の拠出額は加入者1人当たり月平均500円弱となると見込まれている」と語りました。
これまで1人当たりの負担水準を明らかにしていませんでした。
実際の1人当たりの負担額は個人ごとに差が出る
1人当たり500円弱との事ですが実際の負担額は個人ごとに差が出ます。
会社員らが加入する健康保険組合では定率で保険料を上乗せして支援金を集めることになります。
加入する健康保険組合や年収によって個人の負担額は変わる見込みです。
たとえば、2022年度の医療保険料率は中小企業が主な対象となる全国健康保険協会(協会けんぽ)は平均で10%。
大企業が中心の健康保険組合連合会(健保連)は9.26%と異なります。
被保険者の平均年収も2021年度時点で協会けんぽ272万円、健保連は408万円と差があります。
試算によると、医療保険の加入者(家族を含む)1人あたりの支援金の平均額は協会けんぽでは月638円となります。
健保組合は月851円、後期高齢者医療制度で月253円になります。
所得が高い人はこの負担額がさらに増えそうです。
賃上げにより社会保障分野の国民負担率を上げない方針
首相は支援金を導入しても、社会保障分野の国民負担率を上げない方針を示しています。
社会保障の歳出改革で保険料の伸びを抑え、今春以降の賃上げにより負担率の分母が増えると訴えています。
6日の予算委でも「実質的な負担は全体として生じない」と語りました。
しかし、その発言に説得力はありません。
歳出改革では政府が2023年12月にまとめた2028年度までの工程表は予定調和とは言えません。
介護保険サービスを利用した際の自己負担について、政府は2024年度から2割負担の対象者を広げる方針でした。
現行は原則1割となっています。
対象拡大は自民党などの反発を受けて、2027年度以降に先延ばしとなりました。
賃上げが実施されない企業で働く人は支援金の実質負担が発生する
賃上げ頼みの仕組みも課題です。
仮に歳出改革が計画通りに進んでも、賃上げが実施されない企業で働く人は支援金の実質負担が発生するケースがあり得ます。