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2023年の年金額、「マクロ経済スライド」によって抑制

2023年の年金額、「マクロ経済スライド」によって抑制

足元の物価上昇を踏まえ、2023年度の公的年金の額面上の支給額は3年ぶりの引き上げ改定となる見通しです。

しかし、給付を抑制する「マクロ経済スライド」が発動し、実質では目減りする可能性が高いです。

物価が前年比2.5%上がる前提の民間試算では、68歳以上の給付は1.8%ほど増える見通しです。

差し引き0.7%程度、伸びを抑えることになります。


年金財政の安定に欠かせない給付抑制策が、物価高の局面で一気にきます。

高齢者の負担感は強まり、景気回復の足かせとなる恐れがあります。


詳しく解説していきます。


動画でも解説しています




2023年の年金額は「マクロ経済スライド」によって抑制

2023年の年金額は「マクロ経済スライド」によって抑制

年金は原則として、物価と賃金が上がる局面では給付が増える設計です。

ただ少子高齢化で寿命が伸びるうえ保険料の担い手が減っているため、物価の伸びよりは給付を抑えるマクロ経済スライドと呼ぶルールがあります。


足元の物価高や賃金の伸びを踏まえ、23年度にルールが完全に適用された場合の支給水準をニッセイ基礎研究所が試算しました。

改定額は68歳以上で前年度比1.8%増、67歳までの人は2.1%増になりました。


試算は9月までの統計をもとに、物価上昇率を10~12月は前年比3.7%と仮定し、22年通年は2.5%と設定しています。


22年度の厚生年金のモデルケース(68歳以上の夫婦2人の場合、月21万9593円)に改定率を当てはめた23年度の支給額は22万3545円で、ルールを適用する前より年1万8000円程度抑えられる計算となります。


年金が実質で大きく目減りする原因

年金が実質で大きく目減りする原因

年金が実質で大きく目減りする原因は、過去の年金支給にあります。

マクロ経済スライドは物価と賃金が下落する局面では発動せず、その抑制分は「キャリーオーバー制度」で翌年度以降に持ち越されます。


足元では21年度から2年連続で発動せず、0.3%分の減額が「ツケ」としてたまっているのです。

23年度は21~23年度分が一気に差し引かれ、試算では合計0.7%の抑制要因になりました。


高齢者の消費意欲を冷やす可能性がある

高齢者の消費意欲を冷やす可能性がある

足元で急速な物価高が進む中年金の目減りは高齢者の消費意欲を冷やす可能性があります。

日本経済研究センターがまとめた11月時点の民間予測で、23年度の消費者物価(生鮮食品を除く)上昇率は前年度比1.47%です。

年金の伸びが上回るかに見えますが、そもそも22年度の物価高で年金が大きく目減りしています。

それを取り戻す支給増は見込めません。


総務省の家計調査によると、60歳以上の層は59歳以下よりも消費支出に占める食費や水道・光熱費の割合が高いです。

食品は10月以降にメーカーの値上げが相次ぎ、店頭の物価は11月に入って前年比で6%超の上昇になっています。

政府は経済対策に電気代やガス代の抑制を盛り込みましたが、電力各社は値上げを計画しており、価格が下がるわけではありません。


年金改定額は23年1月に公表される

年金改定額は23年1月に公表される

厚生労働省は23年度の年金改定額を23年1月に公表する見通しです。

マクロ経済スライドは04年の制度改正で導入されました。

物価が前年を下回る時には適用されないこととなっており、実際の適用は15年度と19年度、20年度の3回にとどまっています。


マクロ経済スライドを発動しなかった22年度も、物価や賃金の下落を理由に年金支給額は21年度に比べて0.4%減少しています。

厚生年金のモデルケースでは年換算で1万円超の減額でした。


この際も政府・与党は3月に年金生活者向けに5000円の給付金支給を一時検討しましたが、批判を受けて断念した経緯があります。

23年度の実質的な減額幅は22年度の改定幅よりも大きくなる可能性があります。


まとめ

まとめ

足元の物価上昇を踏まえ、2023年度の公的年金の額面上の支給額は3年ぶりの引き上げ改定となる見通しです。

しかし、給付を抑制する「マクロ経済スライド」が発動し、実質では目減りする可能性が高いです。


年金は原則として、物価と賃金が上がる局面では給付が増える設計です。

しかし、少子高齢化で寿命が伸びるうえ保険料の担い手が減っているため、物価の伸びよりは給付を抑えるマクロ経済スライドと呼ぶルールがあります。


年金財政の持続性を高めるには、支給を抑えるルールは必要です。

物価高の局面で目減りが大きくなる問題の根源は、物価や賃金が下がる局面で減額を先送りし、実質的な増額を繰り返してきた仕組みにあります。

今後はこうした制度の見直しが課題になりそうです。



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