2024年は5年に1度の公的年金の財政検証の年です。
論点の一つが「頑張って働くと年金額が減る」制度についてです。
働く高齢者が増える一方、65歳以上で働く人の17%が適用されている年金減額が意欲をそいでいるとの指摘があります。
働く意欲をそぐ年金減額は、社会保障の担い手を減らしている可能性があります。
詳しく解説していきます。
-
年金について学べるおすすめの本5選【2024年版】
年金については、ニュースなどで見聞きすることがあるため、何となく理解していると思いますが、しっかりと制度を把握している人は少ないのではないでしょうか?年金保険料は20歳以上になると納めることになります ...
続きを見る
働く年金受給者の17%が減額の対象者 在職老齢年金制度
公的年金は一定の所得がある人の給付を減らす在職老齢年金制度があります。
2023年度は厚生年金を含む収入が月48万円になると、超える分の支給額が半分に減ります。
2024年度は基準が50万円に上がりました。
収入によって全額カットのケースもあります。
この制度の対象がねんね増加傾向にあります。
厚生労働省によると2021年度末の対象者は65歳以上のケースで49万人で、働く受給権者の17%にあたります。
1965年に導入された時の狙いは、働く人にも一定額の年金を支給することでした。
年金を払うための制度でしたが、2021年度末には年金を「もらえない額」が4500億円まで膨らみました。
在職老齢年金制度
70歳未満の方が会社に就職し厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上の方が厚生年金保険の適用事業所で働いた場合には、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これを在職老齢年金といいます。
働き過ぎると年金が減る仕組み
年金は受給開始年齢を遅らせると、月々の金額を増やすことができます。
75歳からなら最大で1.8倍になる。
しかし在職老齢年金の対象になると、減額された分は増額の対象から外れてしまいます。
年金をもらっていなくても、制度上は繰り下げではなく削減された形になるのです。
長い老後に備えて蓄えを増やしたくても、働き過ぎると年金が減る仕組みです。
欧米などでは収入による給付の減額制度はありません。
平均寿命は男性で80歳、女性は90歳近くまで延びています。
いわゆる「健康寿命」は70代半ばとされています。
減額する制度を廃止すると将来の給付水準が下がる
制度を廃止すれば給付が増える分、将来の給付水準が下がるとの試算もあります。
厚労省は2020年の制度改正時に減額基準を上げる案を示しましたが、与党内で高所得者の優遇だと批判が高まり、据え置きを決めました。
内閣府が3月1日に公表した年金と生活設計に関する調査によると、44%の人が年金額が減らないよう調整して働くと答えました。
65~69歳の就業率は5割を超え、今や年金受給年齢になっても働く人が多数派になっています。
働く高齢者は所得税を納め、社会保障制度の財源を負担しています。
働く意欲をそぐ年金減額は、社会保障の担い手を減らしている可能性があります。