この記事では「予防接種(vaccination)」について解説していきます。
予防接種を行えば、感染症にかかる確率を下げることができ、死亡・重篤化するのを回避できるかもしれません。
予防接種は向こうからやってくるわけではなく、必要に応じて自身が医療機関に行く必要があります。
子どもを授かったら、予防接種に関する情報を集めることは必須かもしれません。
この記事では「予防接種の内容」「推奨と任意」「予防接種のスケジュール」「予防接種の不適当者・要注意者」を知ることができます。
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予防接種とは
予防接種とは、病気に対する免疫をつけるために抗原物質(ワクチン)を人体に投与(接種)することです。
接種により病原体の感染による発病、障害、死亡を防いだり和らげたりすることができます。
予防接種には、国民が「受けなければならない」勧奨接種と、医療行為として希望者に対して行われる任意接種の2種類があります。
予防接種とワクチン
予防接種とは、弱毒化もしくは無毒化した病原体あるいは抗原成分(ワクチン)を生体に接種し、免疫反応によって病原体に対する特異的免疫を獲得することを目的とするものです。
ワクチンとは人や動物などの生体に接種して人工的に免疫を獲得させることを目的とした抗原物質のことであり、多くは病原体を原料として作成されます。
ワクチンには大きく分けて、「弱毒化ワクチン(生ワクチン)」と「広義の不活化ワクチン(トキソイドを含む)」があります。
不活化ワクチン(広義) | |||||
弱毒化ワクチン | 不活化ワクチン | コンポーネントワクチン | 遺伝子組換えワクチン | トキソイド | |
概 要 |
感染性を弱めた病原体(弱毒病原体)を接種 | 感染性をなくした病原体(死活病原体)を接種 | 病原体のうち、抗原性のある部分のみを接種 | 病原体のDNAの一部を大腸菌や酵母に組み込み抗原性のある部分を産生させたものを接種 | 病原体の産生する毒素を精製し、無毒化(トキソイド化)したものを接種 |
特 徴 |
自然免疫に近く強力な免疫を獲得できる 保存が困難 |
免疫が弱いため追加接種が必要 保存が容易 |
免疫が弱いため追加接種が必要 保存が容易 |
免疫が弱いため追加接種が必要 保存が容易 安価で生産が容易 |
免疫が弱いため追加接種が必要 |
主 な 疾 患 |
麻しん 風しん 結核 水痘 ロタウイルス 黄熱 流行性耳下腺炎 |
急性灰白隨炎 日本脳炎 コレラ 狂犬病 A型肝炎 インフルエンザ |
百日咳 Hib感染症 |
B型肝炎 ヒトパピローマウイルス感染症 |
ジフテリア 破傷風 |
予防接種における勧奨接種と任意接種
予防接種は、『予防接種法』が規定する勧奨接種(定期接種・臨時接種)と、法律によらない任意接種とに分けられます。
BCGを除く勧奨接種は、自治体に委託された医療機関で実地されます。
根拠 | 実施責任 | 費用 | ||
勧奨接種 | 定期接種 | 予防接種法 | 市町村長 | 無料または一部自己負担 |
臨時接種 | 都道府県知事 または市町村長 |
|||
任意接種 | なし | 自己負担 |
勧奨接種の種類
『予防接種法』における勧奨接種は下表のとおりです。
疾病 | ワクチンの名称 | 対象年齢 | |
A 類 |
ジフテリア | 四種混合ワクチン | 生後3月から90月に至るまで 11歳以上13歳未満 |
百日咳 | |||
破傷風 | |||
急性灰白隨炎 | |||
麻しん | MRワクチン | 生後12月から24月に至るまで 小学校就学前1年以内 |
|
風しん | |||
結核 | BCGワクチン | 1歳に至るまで | |
B型肝炎 | B型肝炎ワクチン | 1歳に至るまで | |
日本脳炎 | 日本脳炎ワクチン | 生後6月~90月に至るまで 9歳以上13歳未満 |
|
Hib 感染症 | Hib ワクチン | 生後2月から60月に至るまで | |
肺炎球菌感染症(小児) | 小児用肺炎球菌ワクチン | 生後2月から60月に至るまで | |
水痘 | 水痘ワクチン | 生後12月から36月に至るまで | |
ヒトパピローマ ウイルス感染 |
子宮頸がん予防ワクチン | 小6~高1年の女子 | |
痘 | 痘そうワクチン | 現在実施されていない | |
B 類 |
インフルエンザ | インフルエンザワクチン | 65歳以上 60歳~65歳未満であり、省令で定める人 |
肺炎球菌感染症(高齢者) | 成人用肺炎球菌ワクチン | 65歳以上 60歳~65歳未満であり、省令で定める人 |
|
臨時接種 | 上記疾病の流行時などに実施されます |
任意接種の種類
任意接種の主な種類と特徴は下表のとおりです。
接種対象年齢 | 主な接種対象者 | |
B型肝炎 | 出生直後~ | HBs抗原陽性の母親から生まれた乳児 |
ロタウイルス | 生後6週間~ | 1価ワクチンは2回、5価ワクチンは3回接種 |
おたふくかぜ | 1歳~ | 思春期以降にかかると精巣炎・ 卵巣炎を発症する可能性がある |
インフルエンザ | 6ヵ月~ | 園児、学童などの集団感染のハイリスク者 抗体の持続が短い(約5ヶ月) 卵アレルギーのある者は注意 |
A型肝炎 | 随時 | 海外渡航者(特に東南アジア、アフリカ) |
コレラ | 随時 | |
狂犬病 | 随時 | |
黄熱 | 9ヵ月~ |
予防接種のスケジュール
予防接種はその種類ごとに、最も効果を上げるために推奨されている接種時期や、回数、間隔があり、計画的に行うことが重要となります。
国立感染症研究所感染症疫学センターが推奨接種と一部の任意接種についてスケジュールを公開しています。
別の種類の予防接種を行うまでに、弱毒化ワクチン(生ワクチン)は27日間、不活化ワクチンは6日間以上の間隔をあけることとされています。
出典:KNOW VPD
予防接種の不適当者・要注意者
予防接種を行ってはならない者を不適当者といいます。
予防接種を行うにあたって注意が必要な者を要注意者といいます。
予防接種の不適当者とは
予防接種の不適当者は下記のとおりです。
- 発熱をしていることが明らかな者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- 当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことが明らかな者
- 急性灰白隨炎、麻しん、風しんに係る予防接種の対象に合っては、妊娠していることが明らかな者
- BCG接種の対象にあっては、結核その他の疾病の予防接種、外傷などによるケロイドが認められる者
- その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
予防接種の要注意者とは
予防接種の要注意者は下記のとおりです。
- 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
- 予防接種後2日以内に発熱の見られた者、全身性発疹などのアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
- 接種しようとする接種液の成分に対して、アレルギーを起こすおそれのある者
- 過去にけいれんの既往のある者
- 過去に免疫不全の診断がなされている者、近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
- BCGについては、過去に結核患者との長期の接触がある者