この記事では「1歳6ヶ月児健康診査」について解説していきま。
我が子は順調に成長しているのだろうか…親ならば誰しもが心配になると思います。
日本の社会保障では1歳6ヶ月~2歳までの全ての幼児を診査し、必要に応じて医療機関への受診をすすめています。
この記事を読めば、「1歳6ヶ月児健康診査をする目的」「受診率」「診察項目」「診察所見」などを知ることができます。
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1歳6ヶ月児健康診査とは
1歳6か月児健康診査は、母子保健法第 12 条に定められていて、「満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児」を対象として、市町村が実施者として行われます。
1歳6か月は大脳支配が優位になり、運動面・知的面・行動面において人間としての基本的な能力を獲得し、外界に対して探索を広げるようになる時期です。
身体的には呼吸機能・循環器機能・消化管機能・免疫機能が向上し、脆弱な乳児から幼児へと身体的安定が進む時期です。
1歳6か月児健康診査では、身体的発育、運動発達・精神発達、身体所見の異常の有無をチェックします。
先天異常の多くはすでに発見され医療機関で相談を受けていることが多い時期ではありますが、効率よく全身を診察して身体的健康状態を評価することが求められます。
時期が来ると市区町村から診査の通知が届きます。診査にかかる費用は無料です。
健康診査の結果、異常が疑われた場合は、必要の応じて精密健康診査が行われます。
1歳6ヶ月児健康診査をする目的
幼児初期の身体発育、精神発達の面で歩行や言語等発達の標識が容易に得られる1歳6ヶ月児の全てに対して健康診査を実施することにより、運動機能、視聴覚等の障害、精神発達の遅滞等障害を持った児童を早期に発見し、適切な指導を行い、心身障害の進行を未然に防止するとともに、生活習慣の自立、虫歯の予防、幼児の栄養および育児に関する指導を行い、幼児の健康の保持および増進を図る目的とします。
1歳6か月児健康診査の診察項目
- 身体発育状況
- 栄養状態
- 脊柱及び胸郭の疾病及び異常の有無
- 皮膚の疾病の有無
- 眼の疾病及び異常の有無
- 耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無
- 四肢運動障害の有無
- 精神発達の状況
- 言語障害の有無
- 予防接種の実施状況
- その他の疾病及び異常の有無
- 育児上問題となる事項(生活習慣の自立、社会性の発達、しつけ、食事、事故等)先天異常
- その他の疾病及び異常の有無
1歳6か月児健康診査の診察所見
- 身体的発育異常
- 精神的発達障害・・精神発達遅滞、言語発達遅滞
- 熱性けいれん
- 運動機能異常
- 神経系・感覚器の異常・・視覚、聴覚、てんかん性疾患、その他
- 血液疾患・・貧血、その他
- 皮膚疾患・・アトピー性皮膚炎、その他
- 循環器系疾患・・心雑音、その他
- 呼吸器系疾患・・ぜんそく性疾患、その他
- 消化器系疾患・・腹部膨満・腹部腫瘤、そけいヘルニア、臍ヘルニア、便秘、その他
- 泌尿生殖器系疾患・・停留睾丸、外性器異常、その他
- 先天異常
- 生活習慣上の問題・・小食、偏食、その他
- 情緒行動上の問題・・指しゃぶり、多動、不安・恐れ、その他
- その他の異常
1歳6か月児健康診査の診察内容
身体的発育異常
所見の取り方
身長、体重、頭囲の3つについて、成長曲線に過去の計測値と今回の計測値をプロットし、計測値の位置(パーセンタイル)と経時的変化(曲線の形)を確認する。身長と体重のバランスは肥満度曲線を用いて判定します。
判定と対応
正常の判定は、身長・体重・頭囲が3~97 パーセンタイル内のものとする。また、身長、体重、頭囲が成長曲線に沿って増加し、急激な変動が見られないことや肥満度が-15%から 15%以内であることも正常と判定する要件です。
対応としては、身体発育異常が見られる場合、養育環境の確認や原因疾患の精査が必要であり、医療機関への紹介を考慮する。低身長の原因には①家族性、②SGA 性低身長、③栄養不足、④慢性疾患に伴う成長障害(心疾患、腎疾患、消化器疾患など)、⑤内分泌疾患(成長ホルモン分泌不全、甲状腺機能低下症など)、⑥遺伝的疾患(染色体異常など)、⑦骨系統疾患などがある。①や②は通常成長率の低下をきたさない。成長率の低下を伴う低身長を認める場合は、③栄養不足や④~⑦の基礎疾患の可能性を考慮する必要があります。
体重増加不良は低体重かつ体重増加の停滞が見られるもので、この時期に見られる身体発育異常の1つである。原因として①栄養摂取量不足(種々の要因が含まれる)、②栄養吸収障害(下痢、腸疾患、消化管アレルギー)、③エネルギー消費亢進や利用障害(慢性疾患、代謝疾患)などがあります。
精神的発達障害
1歳6か月児は周囲の認知が進み、保護者から離れて遊ぶことができるようになる一方で、周囲への警戒心が強くなる時期でもありあます。
健康診査(特に集団健康診査)という不慣れな場面では保護者から離れられず、医師の診察時に緊張してやりとりに応じられなかったり、泣いてしまったりすることが良くあります。
身体診察の前に、よりリラックスできる環境で発達面の評価を行うなど工夫をすることが望ましい。子どもが評価に応じることが難しい場合は保護者からの問診を参考に評価する。
所見の取り方
精神的発達は、(1)知的発達と(2)社会性・行動の発達の2つの視点をもって、おもに(1)知的発達は言語理解と発語の程度で、(2)社会性・行動の発達は相手を意識した視線・指差しの有無で評価します。
(1)知的発達
【① 言語理解】
- 絵の指差し(応答の指差し)
絵カード(または絵本)を見せて「わんわんはどれ?」などと質問すると、質問に対して絵を指差して応える(応答の指差しが見られる)かどうか評価する。絵カードがないときは「おめめはどこ?」「おくちはどこ?」など体の部位を質問します。 - 言語指示に従う
積み木などを持たせて、言葉だけで「お母さんにあげてください」や、「ないないしてください」(コップに積み木をいれるように)など指示し、簡単な指示に従うことができるか評価する。言葉の指示だけでは指示に従えない場合、ジェスチャーを加えて「どうぞ」「ちょうだい」とやりとりができることを確認します。
【② 言語表出】
診察時に発語があればそれを所見とする。または、絵カード(または絵本)をみせて、「これなあに」と聞いて、物の名前を言わせてみる(犬、ねこ、ボール、車など見慣れているものが好ましい)。発語がない場合には保護者からの問診により、有意語の数を確認する。有意語を3語以上話せば正常です。
(2)社会性・行動の発達
【① 社会性の発達】
社会性の発達としては、コミュニケーション能力を診るとよいです。下記はその一例です。
- こちらからの問いに対する反応(アイコンタクト、動作模倣)
まず、保護者の膝の上に児を座らせる。座ったら児と目を合わせて、「○○ちゃん、こんにちは」と言って頭を下げる。視線があうかどうか、まねて頭を下げるかどうか観察します。 - 共同注意の確認
少し慣れてきたら、「はい、どうぞ」と物(積み木やボール)を子どもに手渡す。物を受け取るかどうか、またそのときに子どもの視線が物だけでなく相手にも向けられるかどうか、物をはさんで子どもと興味を共有できるか(共同注意が成立するか)を観察します。 - やりとりの成立
子どもが物をうけとったら、今度は「先生にちょうだい」と言い、物のやりとりができるかどうかを確認する。ジェスチャーを交えてよい。やりとりするときにも視線が合うかどうか、「えらいね!」「すごいね!」とほめたときに嬉しそうにするか観察します。
【② 行動の発達】
診察の場でいろいろな行動が観察できるとは限らないし、時間もない。そこで養育者への問診で、日常生活の中で見られる遊びの発達や生活行動を確認する。収集する情報としては、「大人のまねをするか」「オモチャや人に興味を示すか」「簡単なやりとりができるか」「少し強い言葉で制すると、少し待てるか」などが挙げられます。
運動機能異常
運動の遅れ、所見の取り方
運動機能は、身体の粗大運動と、手指の巧緻運動にわけて判定します。
歩行が未開始の場合、積み木をつまむことができない場合で、神経学的異常所見を伴う場合は医療機関の受診が必要になります。
(1)粗大運動
- 上手に歩くことができるかどうかで判定します。
- おむつのみで歩かせて診察室に入らせる。保護者から離れることができない場合は無理に分離させず、上手に歩くことができるか、歩き方に心配がないかどうか保護者に確認します。身体診察後に診察台から保護者のところまで歩くことができるかどうかを確認します。手が肩よりも上に上がっている状態(ハイガード)、手が腰の辺りまで下がってきている状態(ミドルガード)、手が下に下りている状態(ローガード)の順に歩容としては成熟したものとなります。
(2)巧緻運動
- おもちゃや道具を用途にあわせて操作することができることを確認します。
- 色のついた立方体の積み木(1辺3cm)を積むことができるかどうかで判定する。指に使い方、両手の協調、手と目の協調に注目します。
聴覚の異常
聞こえの反応
- 見えないところからの呼びかけ、テレビから流れてくるコマーシャルの音楽や番組のテーマ音楽などに振り向きますか。
- 耳の聞こえが悪いと思ったことがありますか。
- “ささやき声”で名前を呼んだときに振り向きますか。
ことばの発達
- 簡単なことばによる言いつけができますか。
- 意味のあることばを3つ以上言えますか。
その他の難聴に関連する項目
- 家族(父母、祖父母、兄弟姉妹など)に、小さい時から聞こえの悪い方がいますか。
- 妊娠中に風疹にかかりましたか。
- 1500g 未満で生まれましたか。あるいは、5日以上 NICU に入院しましたか。
- 仮死で生まれましたか。
- 黄疸が強く、交換輸血を受けましたか。
- 耳や口に形態異常がありますか。あるいは、頭髪の一部が白くなっていませんか。
- 髄膜炎にかかりましたか。
- 頭部を骨折して入院しましたか。
判定と対応
プロトコールにしたがって、パスとリファーを判定します。
リファーとした場合には地域の幼児聴力検査が可能な耳鼻咽喉科での精密聴覚検査が必要となります。
1歳6ヶ月児健康診査の受診率
厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」(平成25年度)によると、受診人数は 1,001,397人であり、受診率は94.9%でした。
ちなみに、同年3歳児健診の受診者数と受診率は、1,009,368人(92.9%)でした。
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