この記事では、「高齢者が先進医療等を受けた場合の保険適用になる部分」について解説していきます。
先進医療等を受けた時にも保険適用になる部分を保険外併用療養費といいます。
一般的に、先進医療等や特別なサービス等を受けたときは保険が適用されないといわれています。
しかし、一般の保険診療と共通する基礎的な部分については保険が適用されることになります。
この記事を読めば、保険外併用療養費の「対象となる療養」「給付割合」「給付期間」などを知ることができます。
この記事では70歳以上の場合について解説していきます。69歳以下の場合の制度の内容は下記のリンクを参照してください。
保険外併用療養費とは
先進医療など、保険が適用されない医療を受けた場合、保険が適用される部分も含めて医療費は全額自己負担となります。
しかし、保険が適用されない療養でも、厚生労働大臣の定める、
- 評価療養
- 患者申出療養
- 選定療養
を受けた場合は、保険が適用されない部分は全額自己負担となりますが、それ以外の一般の保険診療と共通する基礎的な部分については保険が適用され、保険外併用療養費(75歳未満の場合は家族療養費)として現物給付されます。
保険外併用療養費の対象となる療養
- 評価療養
医学的な価値が定まっていない新しい治療法や新薬など、将来的に保険適用とするか評価される療養(①先進医療(高度医療を含む)、②医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療、③薬価基準収載前の承認医薬品の投与、④保険適用前の未承認医療機器、承認再生医療等製品の使用、⑤薬価基準に収載されている医薬品の適応外使用、⑥保険適用されている医療機器、再生医療等製品の適応外使用) - 患者申出療養
患者から申出を起点として、国内未承認の医薬品等の使用や先進的な医療を、その安全性・有効性を確認しつつ迅速に保険外併用療養として受けられるしくみです(患者申出療養を希望する場合は、まずは、かかりつけ医など身近な医療機関に相談してください)。 - 選定医療
患者自ら希望して選ぶ療養(①特別の療養環境の提供(差額ベッドの入院)、②予約診療、③時間外の診療、④前歯部の材料差額、⑤金属床総義歯、⑥200床以上の病因のの未紹介患者の初診、⑦200床以上の病院の再診、⑧制限回数を超える医療行為、⑨180日以上の入院)。
なお、将来的に保険給付の対象とするかどうかといった評価はおこなわれません。
差額負担
上記療養部分を、保険が適用されない部分として自己負担することになります(実費)。
給付割合
75歳未満は、70歳の誕生日翌月から8割、自己負担2割(誕生日が昭和19年4月1日までの人は9割、自己負担1割)、75歳以上は9割、自己負担は1割。ただし、現役並み所得者は7、自己負担3割です。
給付期間
給付期間はその病気やケガが治るまで継続されます。
ただし、健康保険の日雇特例被保険者はその病気やケガについて1年間(結核性疾病は5年間)になります。
問合わせ先
問合わせ先は、”75歳未満”と”75歳以上”で異なります。
【75歳未満】
健康保険〈一般保険者〉
➝ 事業所を管轄している全国健康保険協会都道府県支部または加入する健保組合。
健康保険〈日雇特例被保険者〉
➝ 住所地または居住地の全国健康保険協会都道府県支部。
船員保険
➝ 全国健康保険協会船員保険部。
共済組合等
➝ 加入する共済組合等
国民健康保険
➝ 居住の市区町村役場または加入する国保組合
【75歳以上】
居住の市区町村役場。
受給方法
75歳未満は、健康保険等の被保険者証を高齢受給者証(健康保険の日雇特例被保険者の場合は、受給要件を満たしていることの確認印のある受給資格者票)を医療機関に提示することで受給できます。
75歳以上は、後期高齢者医療制度の被保険者証を医療機関に提示することで受給できます。
先進医療とは
先進医療とは、未だ保険診療として認められていない医療技術について、一定の安全性、有効性等を個別に確認したものは、保険診療と保険外診療との併用を認め将来的な保険導入に向けた評価のための臨床試験を行うこととしています。
先進医療は先進医療Aと先進医療Bに分類されており、対象となる技術の概要は下記のとおりです。
先進医療A
- 未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術
- 未承認、適応外の体外診断薬の使用を伴う医療技術等であって当該検査薬等の使用による人体への影響が極めて小さいもの
先進医療B
- 未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴う医療技術
- 未承認、適応外の医薬品、医療機器の使用を伴わない医療技術であって、当該医療技術の安全性、有効性等に鑑み、その実施に係り、実施環境、技術の効果等について特に重点的な観察・評価を要するものと判断されるもの
医療機関から申請された個別の医療技術が先進医療として認められるためには、先進医療会議で安全性、有効性等の審査を受ける必要があり、実施する医療機関は厚生労働大臣への届出又は承認が必要となります。
医療機関からの申請から先進医療として承認されるまでの期間は概ね6ヶ月が必要ですが、評価の迅速化・効率化を図る目的で「最先端医療迅速評価制度」や「国家戦略特区における保険外併用療養の特例」が創設されました。
これらの制度を使用することで、申請後から先進医療の実施まで概ね3ヶ月で可能となる場合があります。
先進医療部分を除く一般の診療と共通する部分については保険が適用されますが、先進医療部分は全額自己負担となります(研究費や企業からの薬剤提供等で一部充当される場合もあります)。ただし、負担額に関しても先進医療会議等で適正か否かについて審議されます。
出典:厚生労働省HP