日本は1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率が2020年に1・34と深刻な少子化が進んでいます。
国は聞き取り調査をもとに、若い世代の結婚や出産への希望がかなった場合に実現する「希望出生率」を1・8とはじきます。
この希望出生率の実現にはどうすればいいのか。様々な社会要因のなかでも男性の育児や家事など家庭進出の度合いが出生率に影響があることは大きなヒントとなります。
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男女の育児負担が偏る国では少子化が進みやすい
女性に家事や育児の負担が偏るのは、程度の差こそあれ多くの国や地域で根強くあります。
見逃せないのは、その差が男女で大きくなればなるほど少子化が進みやすいことです。
経済協力開発機構(OECD)のデータ(19年)で日本と韓国の男女差が際立ちます。
日本の女性が家事や育児に割く時間は男性の4・76倍、韓国は4・43倍にのぼります。ともに男性の参加時間は女性の2割ほどの計算です。
両国とも急速な人口減少につながる出生率1・5を下回り、韓国は20年の出生率が0・84まで低下しています。
男女差が2倍以内の国ではおおむね出生率1・5以上を維持しているのです。
夫の育児参加と出生率は密接に関係している
米ノースウェスタン大のマティアス・ドゥプケ教授らは欧州19カ国のデータを分析し、育児の大半を担うことで女性が出産に消極的になり、出生率が低下することを経済学的に裏付けました。
ドゥプケ教授は「欧州以上に日本や韓国の男女の分担が不平等なことは、両国の低出生率と密接に関係している」と指摘しています。
男性の育児休業はあるが利用されていない
男性の家庭進出の突破口として期待されるのが子育て期の初めに育児休業を取れるかどうかです。
日本は夫も妻も十分に取得可能な数少ない国で、国連児童基金(ユニセフ)によると、男性が収入保障付きで休める長さはOECD加盟国など41カ国中、1位でした。
しかし、活用できているとは言いがたいです。
日本の男性の育休取得率は20年度に12・65%で、女性(81・60%)と開きが大きいです。
22年度からは男性が子の生後8週間以内に最大4週間の育休を取れるなど柔軟性を高めた改正育児・介護休業法が施行され、企業も意識を問われることになります。
東京大の山口慎太郎教授(労働経済学)は実効性について「育休を取った男性が職場で不利な扱いをされなかった事例を示していくことが必要だ」と話します。
日本は子育て支援に注ぐ予算が少ない
岸田文雄氏が勝利した自民党の総裁選。討論会では4人の候補全員が「子育て関連の予算を倍増する」と訴えました。
日本の場合、子育て支援に注ぐ予算が十分とはいえないことも問題視されてきました。
OECDのデータ(17年)では、児童手当や育休給付、保育サービスといった日本の家族関係の公的支出は国内総生産(GDP)比1・79%。比率ではフランスやスウェーデンの約半分の水準にとどまります。
支出が多い国は出生率も比較的高いのです。問題はその使い道です。
ドゥプケ教授の研究では、保育所整備などを通じて母親の負担を減らすほうが父親への給付金支給より出生率の押し上げ効果が高いうえ、政策に要するコストは約3分の1に抑えられると言っています。
男性が家事育児に参加しやすい環境づくり、そして子育て関連予算の充実と効率的な配分が今の日本に求められています。
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