労災保険制度では、労働者が業務中または通勤途中に災害にあい 、その業務災害によって負傷、または病気にかかった場合には、 労働者の請求に基づき、治療費の給付などを行います。
業務災害と認められれば、治療などにかかった費用の全額が労災保険から支払われるため、労働者にとって重要事項です。
問題は勤務時間内であっても労働災害と認められないケースがあるということです。
この記事を読めば、どのようなケースなら労災保険の適用になる「業務災害」(業務上)に含まれるかを知ることができます。
業務災害(業務上)に含まれるケースは3つ
ケガや病気、障害または死亡の原因となった災害が業務上であるかどうかは、労働者については所轄の労働基準監督署、公務員については公務員災害補償審査会などで決定します。
業務上に含まれるケースは、大きく分けて下記の3つになります。
それぞれわかりやすく解説していきます。
ケガの場合
〈会社施設内にいて勤務中の場合〉
原則として業務上と認められます。炎天下の屋外作業中に日射病になった、トイレ・水飲に行く途中に事故にあったなどの例はいずれも業務上と認められます。
〈会社施設内にいて勤務していない場合〉
休憩中や終業後の私的な行為による事故のときは、施設に不備があった場合のみ、業務上と認められます。
たとえば、給食による食中毒は業務上、昼休みのキャッチボールでのケガは業務外とされます。
〈会社施設の外での勤務中の場合〉
勤務者や運転手、出張中の事故などのときで、勤務に関係のない私的な行動以外は、業務上と認められます。
たとえば、出張先の工場でケガをしたのは業務上、出張先で私的に祭りを見物中にケガをしたのは業務外とされます。
病気(災害性疾病)の場合
業務上の病気と認められるには、個人の体質、それ以前の病気などの関連もあって難しいのですが、業務との関連が明確になっていることが必要です。
たとえば、業務上の外傷の治療薬による皮膚炎は業務上、業務上の胸部打撲部に発した既往症のある肺浸潤は業務外とされます。
職業病(職業性疾病)の場合
じん肺症、毒物中毒、過重負荷による脳、心臓疾患、心理的負担による精神障害など、労働環境の悪い職場で長期間働いたために起こる病気は、労働基準法施行規則で列挙されて決められています。
業務上と判断するために基準となる3つのこと
業務上と認められるためには「業務起因性」が認められなければならず、その前提条件として「業務遂行性」が認められなければなりません。
- 業務起因性:仕事がケガ・病気の原因になったかどうか
- 業務遂行性:仕事中に発生したケガ・病気であるかどうか
この業務遂行性は下記の3つに分けることができます。
それぞれわかりやすく解説していきます。
事業主の支配・管理下で業務に従事している
- 担当業務、事業主からの特命業務や突発事故に対する緊急業務に従事している
- 担当業務を行ううえで必要な行為、作業中の用便、飲水等の生理的行為や作業中の反射的行為
- その他労働関係の本旨に照らし合理的と認められる行為を行っている
など
事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない
- 休憩時間に事業場構内で休んでいる場合、事業附属寄宿舎を利用している場合や事業主が通勤専用に提供した交通機関を利用した
など
休日に構内で遊んでいるよう場合は、事業主の支配・管理下にあると言えません。
事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している
- 出張や社用での外出、運送、配達、営業などのため事業場の外で仕事をする場合
- 事業場外の就業場所への往復、食事、用便など事業場外での業務に付随する行為を行う場合
など
出張の場合は、私用で寄り道したような場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全行程に亘って業務遂行性が認められます。